腹腔外発生デスモイド型線維腫症患者の診断基準、重症度分類および診療ガイドライン確立に向けた研究

文献情報

文献番号
201610088A
報告書区分
総括
研究課題名
腹腔外発生デスモイド型線維腫症患者の診断基準、重症度分類および診療ガイドライン確立に向けた研究
課題番号
H28-難治等(難)-一般-006
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
西田 佳弘(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 川井 章(国立がん研究センター中央病院 希少がんセンター)
  • 戸口田 淳也(京都大学 ウイルス・再生医科学研究所)
  • 生越 章(新潟大学 医歯学総合病院魚沼地域医療教育センタ-)
  • 國定 俊之(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 松本 嘉寛(九州大学 大学院医学研究院)
  • 阿江 啓介(公益財団法人がん研究会有明病院 整形外科)
  • 平川 晃弘(名古屋大学 医学部附属病院 先端医療・臨床研究支援センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
1,201,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
腹腔外発生デスモイド型線維腫症は、広範切除による手術が治療の第一選択と考えられてきたが、術後のきわめて高い再発率(20-70%)から、保存治療を選択する施設が増えている。しかし本邦での診療ガイドラインは策定されていないため、治療方針は施設によって異なる。本研究では、腹腔外発生デスモイド型線維腫症に対するクリニカルクエスチョン形式の診療ガイドラインを策定することを最終目的として、(1)腹腔外発生デスモイド型線維腫症に対する診療アルゴリズムの確立と医師・患者に向けての発信、(2)腹腔外発生デスモイド型線維腫症の病理診断において従来から実施されているβカテニン免疫染色法の有用性、およびCTNNB1変異解析の意義の解析、(3)病理診断および保存治療であるCOX-2阻害剤治療の効果判定予測における非リン酸化βカテニン免疫染色の有用性に関する解析、(4)デスモイド型線維腫症におけるCTNNB1変異型と臨床成績の関連解析、(5)術後再発を来した腹腔外発生デスモイド型線維腫症に対する治療成績調査、(6)腹腔外発生デスモイド型線維腫症診療ガイドライン作成にむけたクリニカルクエスチョン作成、を実施することを目的とした。
研究方法
(1)研究代表者西田がデスモイド型線維腫症に対する診療アルゴリズム案を作成、研究分担者で検討・改正し、本研究班全体案を作成した。次に、日本整形外科学会骨・軟部腫瘍委員会に診療アルゴリズム案の検討を依頼した。
(2)参加施設より、デスモイド型線維腫症と病理診断のついた症例を集積し、βカテニンに対する抗体を用いた免疫染色、CTNNB1変異解析を実施した。
(3)COX-2阻害剤治療を実施した40例を対象とし、非リン酸化βカテニン免疫染色およびCTNNB1変異解析を実施した。
(4)研究代表、分担施設から集積した症例のCTNNB1変異解析を実施し、変異保有率を明らかにし、手術成績との関連を解析した。
(5)術後再発をきたした9例について、その後の治療経過を調査した。
(6)腹腔外発生デスモイド腫瘍に関する重要臨床課題を抽出し、クリニカルクエスチョン候補を選定した。
結果と考察
診療アルゴリズムに関しては、デスモイド型線維腫症診療の専門家である本研究班班員、日本整形外科学会骨・軟部腫瘍委員会委員で十分に検討した上で承認され、日本整形外科学会のホームページに掲載され、患者からもアクセスできる情報となった意義は大きい。次のステップとして重要臨床課題解決に向けてのクリニカルクエスチョンを作成した。クリニカルクエスチョンで重要な診断におけるβカテニン免疫染色の意義、CTNNB1変異解析の意義を解析し、研究結果より、従来の免疫染色だけでは不十分であり、将来的にCTNNB1変異解析の導入が必要であることが示唆された。また腫瘍の性格や治療成績の効果予測において非リン酸化βカテニンの免疫染色の有用性を初めて明らかにできた。CTNNB1変異型と手術治療成績との関連を解析したが有意ではなかった。症例数がまだ足りないが、発生部位(下肢)のほうがCTNNB1変異型よりも治療成績の予後予測因子として有用であることが示唆された。術後再発をきたした症例に対する治療の選択法はクリニカルクエスチョンとして重要である。本研究において、術後再発を来した腫瘍の活動度は高いがMTX+VBLを中心とした保存的治療が有効であることが明らかとなった。この情報は再発患者にとって福音となる。これらの研究結果および重要臨床課題を考慮して11のクリニカルクエスチョンを設定した。今後希少疾患である腹腔外発生デスモイド型線維腫症に対する推奨グレードを含んだ推奨文を作成するためにこれらのクリニカルクエスチョンに答えるための文献検索、システマティックレビューを推進する予定である。
結論
腹腔外発生デスモイド型線維腫症に対する診療アルゴリズムを策定し、日本整形外科学会骨・軟部腫瘍委員会、日本整形外科学会理事会で承認を受け、日本整形外科学会ホームページ・日本整形外科学会広報室ニュースに掲載された。診断におけるβカテニン染色の意義、非リン酸化βカテニン染色の予後予測性、CTNNB1変異型の保有率と臨床成績における意義、再発腫瘍に対する治療戦略について解析した。研究結果は診療ガイドライン策定に向けた基盤データとなる。策定したアルゴリズム中にある重要臨床課題解決に向けてのクリニカルクエスチョンを設定した。

公開日・更新日

公開日
2017-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201610088Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,560,000円
(2)補助金確定額
1,560,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 780,498円
人件費・謝金 80,100円
旅費 207,860円
その他 132,550円
間接経費 359,000円
合計 1,560,008円

備考

備考
自己資金:8円

公開日・更新日

公開日
2018-03-01
更新日
-