潰瘍性大腸炎の発症関連及び予防要因解明を目的とした症例対照研究

文献情報

文献番号
201610074A
報告書区分
総括
研究課題名
潰瘍性大腸炎の発症関連及び予防要因解明を目的とした症例対照研究
課題番号
H27-難治等(難)-一般-033
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
三宅 吉博(愛媛大学 大学院医学系研究科 疫学・予防医学)
研究分担者(所属機関)
  • 日浅 陽一(愛媛大学 大学院医学系研究科 消化器・内分泌・代謝内科学)
  • 古川 慎哉(愛媛大学 大学院医学系研究科 疫学・予防医学)
  • 田中 景子(愛媛大学 大学院医学系研究科 疫学・予防医学)
  • 永田 知里(岐阜大学 大学院医学研究科 疫学・予防医学分野)
  • 横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 安藤 朗(滋賀医科大学 消化器・血液内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
1,575,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 国外の研究では一定数の症例対照研究が実施され、潰瘍性大腸炎と関連するいくつかの環境要因と遺伝要因が報告されているが、未だ確立したエビデンスは得られていない。国内ではこれまで2つの症例対照研究が実施されたが、遺伝情報が収集されていないだけでなく、症例群の総数がそれぞれ131名と126名であった。また、それぞれの症例対照研究で原著論文が1編ずつ報告されている。
 本研究では、潰瘍性大腸炎の発症と関連する環境要因及び遺伝要因解明のため、症例群400名と対照群800名を目標とする症例対照研究を実施運営している。
全身性エリテマトーデスのリスク要因に関するエビデンスは国際的にも乏しい。環境要因、遺伝要因ともに質の高い日本人のエビデンスがとても少なく、エビデンスを蓄積する必要がある。今後、全身性エリテマトーデスの症例対照研究を実施するに当たり、質問調査票を開発する準備として、全身性エリテマトーデスのリスクと関連する環境要因について、文献を調べた。
研究方法
1.潰瘍性大腸炎の症例対照研究
 研究協力医療機関においては、症例群のみリクルートしている。臨床の先生方の負担を軽減するため、本研究の概要を症例群候補者の患者に話し、詳細説明については、愛媛大学より後日、電話で行う旨、説明して頂く。その際、個人情報提供に関する同意書に署名を頂く。担当医は患者シートに当該患者の投薬及び重症度に関する情報を記入し、署名済み個人情報提供同意書とともに愛媛大学研究事務局に郵送する。その情報に従い、愛媛大学研究事務局より電話で詳細な説明を行い、最終的な同意を得る。研究事務局より質問調査票と遺伝子検体(口腔粘膜細胞)採取の綿棒を対象者の自宅に送付する。対象者は回答済み質問調査票と検体を事務局に送付する。記入漏れ等は対象者と事務局間で確認を行う。
 また、症例群の対象者数を確保する目的で、研究協力医療機関の拡大に努めた。
 対照群については、性別と年齢をマッチさせて愛媛大学医学部附属病院や関連の医療機関でリクルートを行っている。
2.全身性エリテマトーデスのリスク要因レビュー
 全身性エリテマトーデスと関連する環境要因について、メタ・アナリシスが存在する場合、その結果をまとめた。メタ・アナリシスがない場合、代表的な結果をまとめた。


結果と考察
1.潰瘍性大腸炎の症例対照研究
 平成28年4月1日時点で、43機関が研究協力に同意し、その内、25医療機関で倫理審査の承認を得た。また症例群62名、対照群42名が研究参加に同意した。
 以後、研究協力医療機関が増加し、研究参加に同意した人数も大幅に増加した。
 平成29年3月25日時点で、75機関が研究に協力している。症例群324名、対照群474名が研究参加に同意した。
 一般的な多施設共同研究では、各医療機関でインフォームド・コンセントの取得、質問調査票や生体試料のデータ取得を実施する必要があり、臨床の先生方の負担が多い。本研究では、症例群の基準を満たす症例群の候補者に、簡単な研究の説明の後、愛媛大学研究事務局に個人情報を提供する同意を取得し、患者シートに投薬状況と重症度を記載して研究事務局に送付するという負担の少ないリクルートの運営方法を採用している。
 対照群のリクルートについては、本来、各研究協力医療機関において症例群1名につき、1~4名の対照群を選定すべきである。しかしながら、各研究協力医療機関で対照群をリクルートすることは困難であったため、基本的に愛媛大学医学部附属病院及び関連の医療機関で対照群をリクルートすることにした。これは重大な方法論的欠点であるが、この欠点を十分に認識して論文を執筆する必要がある。

2.全身性エリテマトーデスのリスク要因レビュー
 喫煙、ホルモン補充療法と経口避妊薬、アルコール摂取でメタ・アナリシスが実施されていた。喫煙、ホルモン補充療法と経口避妊薬で有意にリスクが高まり、適度な飲酒では有意に予防的であった。個別の研究では、出生時過体重、早産、ストレスや手術歴がリスクを高め、3人以上の子どもがいることが予防的であった。
 栄養摂取については、過去にビタミンD摂取との関連を報告した論文があるが、有意な関連は認めなかった。今後は、栄養についても半定量食事摂取頻度調査票を用いて詳細な情報を得るのが望ましい。

結論
 潰瘍性大腸炎症例対照研究については、年度後半から対象者数の拡大が顕著となった。次年度前半までリクルートを継続し、目標人数の達成を目指す。
 喫煙やアルコールなど、環境要因が全身性エリテマトーデスの発症に影響している可能性が高い。故に、症例対照研究により、日本人のエビデンスを蓄積することは合理的である。

公開日・更新日

公開日
2017-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201610074Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,047,000円
(2)補助金確定額
2,047,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 112,136円
人件費・謝金 1,375,544円
旅費 36,320円
その他 51,000円
間接経費 472,000円
合計 2,047,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-02-19
更新日
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