肥厚性皮膚骨膜症の診療内容の均てん化に基づく重症度判定の策定に関する研究

文献情報

文献番号
201610071A
報告書区分
総括
研究課題名
肥厚性皮膚骨膜症の診療内容の均てん化に基づく重症度判定の策定に関する研究
課題番号
H27-難治等(難)-一般-030
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
新関 寛徳(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 感覚器・形態外科部 皮膚科)
研究分担者(所属機関)
  • 横関 博雄(東京医科歯科大学大学院医学総合研究科)
  • 石河 晃(東邦大学医学部)
  • 戸倉 新樹(浜松医科大学医学部)
  • 椛島 健治(京都大学大学院医学研究科)
  • 種瀬 啓士(慶應義塾大学医学部臨床研究推進センター)
  • 関 敦仁(国立成育医療研究センター整形外科)
  • 小崎 慶介(心身障害児総合医療療育センター整肢療護園)
  • 桑原 理充(奈良県立医科大学付属病院形成外科)
  • 宮坂 実木子(国立成育医療研究センター放射線診療部)
  • 三森 経世(京都大学大学院医学研究科内科学講座臨床免疫学)
  • 久松 理一(杏林大学医学部第三内科学消化器内科)
  • 亀井 宏一(国立成育医療研究センター腎臓リウマチ膠原病科)
  • 新井 勝大(国立成育医療研究センター消化器科)
  • 堀川 玲子(国立成育医療研究センター内分泌代謝科)
  • 工藤 純(慶應義塾大学医学部遺伝子医学研究室)
  • 大田 えりか(伊東 えりか)(聖路加国際大学大学院看護学研究科)
  • 井上 永介(国立成育医療研究センター臨床研究開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,070,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肥厚性皮膚骨膜症は、2つの責任遺伝子の発見により、Prostaglandin E2(PGE2)の過剰が病態に関与することが明らかになってきた。遺伝子診断が可能になり、家族歴のない症例においても2次性肥大性骨関節症との鑑別が明確になり、次第に重篤な合併症も一義的な原因で説明できるようになった。遺伝子診断により早期発見が可能になり、早期発見が進行阻止につながる可能性も期待される。
 しかし、その一方で患者間で、合併症に違いがある機序も不明である。発症年齢(個々の合併症に好発年齢があるため)個々の合併症が十分に記載されていないことも早期発見を阻む一因である。
各患者において、進行に伴う正確な合併症の記載をすることにより、合併症ごとに好発年齢を明らかにできる可能性がある。診療ガイドラインを作製することにより、診断の技術が向上、均てん化し、観察しうる患者数がふえ、臨床治験のとりくみへの機会が増すことになる。重症度判定の策定は、定期観察の診療技術を向上し、臨床治験での主要および副次評価項目の設定に役立つ。
研究方法
1)全国(1次)調査
本調査は、「難病の患者数と臨床疫学像把握のための全国疫学調査マニュアル」に準拠して実施された。公益社団法人日本整形外科学会HP(https://www.joa.or.jp/search_doctor.html)より日本整形外科学会認定リウマチ医名簿より6名おきに選択し501名に調査依頼状と返信用はがきを郵送した。

2)原因遺伝子の機能から推測される新たな活動性指標として、プロスタグランジンE2濃度(血中、尿中)、尿中プロスタグランジン代謝物PGE-M)を測定、検討した。PGE-MはELISA法とRadioimmunoassayの2つの方法を用いた。
3)系統的レビューの実施方法は2つとも同じである。Cochrane Library、CINAHL、EMBASE、MEDLINE、PubMedの5つのデータベースを用いて検索を行った(2016年2月27日)。収集した文献に関して、2名が独立してスクリーニングを行い、下記のレビューを行った。

①原発性肥大性骨関節症患者への非ステロイド性抗炎症薬の効果に関するレビュー

②肥厚性皮膚骨膜症と眼瞼下垂を併存する患者に対する外科的介入の効果に関するレビュー

特定された研究に関して、研究結果のデータ抽出を行い、ナラティブ統合の方法を用いて結果をまとめた。
結果と考察
1)全国調査(1次):今回で4回目になる。今回は整形外科リウマチ認定医勤務病院への調査を行った。501施設に送付し214施設より回答があったが患者申告は0名であった。予定していた2次調査はそのため対象を変更し、「非特異性多発性小腸潰瘍症」研究班との共同で、遺伝子診断等で患者通院が確認されている施設を対象とする予定である。
2)診断および重症度判定技術向上の検討:
皮膚肥厚組織の検討において真皮の浮腫、ムチン沈着、部分的な弾力線維の変性は比較的早期から見られ、皮膚肥厚が重症になるにつれ線維化と脂腺増殖が強くなる傾向が明らかになった。また、肥満細胞はコントロール群と比べ3〜8倍に増加していた。診断特異性が向上しただけでなく、病態との関連や皮膚外症状(合併症)の病態解明を介して治療法への発展が期待される。
PGE2とその代謝物測定について治療前後に測定した。
完全型の確定診断に不可欠な頭部脳回転状皮膚の診断ではMR画像が有用なことも示され、定量化も可能なので活動性の指標や治療効果判定への応用が期待される。
皮膚の肥厚は,前額部,頭頂部,後頭部いずれにおいても,PDP6例(皮膚厚7-11mm厚)は,コントロール群(5-7mm厚)より肥厚していた。
非特異性多発性小腸潰瘍症については、SLCO2A1遺伝子診断が行われた上で、当該疾患の合併の有無を検討した。アトラスの作成により診療の均てん化が期待される。
掌蹠多汗症は当該疾患患者の3割以上に出現する合併症である。発汗量の測定はスキノスSMN-1000を用いた他覚的検査法(換気カプセル法)により測定可能になり、原発性多汗症の治療効果が確認され、当該疾患の治療効果判定にも応用が期待された。
3)系統レビュー:今年度は、「非ステロイド性抗炎症薬の効果」「眼瞼下垂に対する外科的治療」についてまとめた。次年度にかけて骨関節症に対するbisphosphonateの効果、steroid薬全身投与の有効性を検討中である。
結論
1)第4回全国調査(1次)を施行した。
2)血中尿中PGE2と代謝物の測定、皮膚肥厚の病理組織、頭部MRIによる頭部脳回転状皮膚(頭部の皮膚肥厚)の定量化、発汗量の定量化を検討し、重症度、治療効果への応用の可能性を示した。
3)2項目の系統レビューを行った。

公開日・更新日

公開日
2017-06-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201610071Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,290,000円
(2)補助金確定額
5,290,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,311,819円
人件費・謝金 1,169,276円
旅費 71,140円
その他 1,517,765円
間接経費 1,220,000円
合計 5,290,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-02-15
更新日
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