マイクロアレイ染色体検査でみつかる染色体微細構造異常症候群の診療ガイドラインの確立

文献情報

文献番号
201610067A
報告書区分
総括
研究課題名
マイクロアレイ染色体検査でみつかる染色体微細構造異常症候群の診療ガイドラインの確立
課題番号
H27-難治等(難)-一般-024
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
倉橋 浩樹(藤田保健衛生大学 総合医科学研究所・分子遺伝学研究部門)
研究分担者(所属機関)
  • 大橋博文(埼玉県立小児医療センター遺伝)
  • 黒澤健司(地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター)
  • 山本俊至(東京女子医科大学統合医科学研究所)
  • 涌井敬子(信州大学医学部・遺伝医学予防医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
5,577,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
染色体の欠失や重複のような微細構造異常によるコピー数の変化(CNV)は、器官発生に関わる転写因子や、ヒストン修飾因子、クロマチン因子などの転写調節因子が遺伝子の量的効果の影響を受けやすいため、先天性疾患の原因となることが多い。マイクロアレイ染色体検査の普及により、CNVの検出感度は飛躍的に向上し、多発奇形・発達遅滞の原因の精査としては従来の染色体検査にかわる第1選択の診断ツールとされている。しかし、網羅的検査に特有の意義不明のCNVの解釈、偶発的所見や二次的所見への対応などの問題点が未解決であり、検査提供体制が整っているとはいえない。マイクロアレイ染色体検査が診断に必須な疾患が小児慢性特定疾患に追加されるなど、臨床的有用性は高いものの、高コストの問題があり、自費診療の中で一部の患者がその恩恵を被るにとどまる。また、近年は、多発奇形・発達遅滞の患者の原因の精査としては、次世代シーケンサーによるエクソーム解析の台頭もあり、十分な検査適応の指針が必要である。本研究では、マイクロアレイ染色体検査でみつかる染色体微細構造異常症候群の診療ガイドラインの確立を目指す。
研究方法
日本全国の主な診療施設の小児科もしくは遺伝診療科に連絡をとり、染色体微細構造異常が疑われるような多発奇形・発達遅滞の患者のサーベイランス、患者登録を行う。とくに、代表的な32疾患に関しては診断未確定患者の発掘のために、診断につながる臨床情報を公開する。集まった患者情報に基づいて、詳細な臨床情報と末梢血サンプルの収集を行う。末梢血サンプルに対しては、研究代表者を含む各研究分担者が個々の施設でマイクロアレイ染色体検査、必要に応じてFISH解析を行う。各施設の合計として年間500例ほどの解析を目標とする。マイクロアレイ染色体検査で疾患責任CNVが確定しない場合にはエクソーム解析へと進めた。一方で、症例によってはエクソーム解析を先行させ、その定量により疾患責任CNVの候補を推定し、二次検査としてマイクロアレイ染色体検査、MLPA法、qPCR法により確認した。エクソームのデータはターゲットエクソーム解析、全エクソーム解析ともに、Log2変換法や隠れマルコフモデル(XHMM)によるアルゴリズムなどを用いて観察研究として比較検討を行った。
結果と考察
定量的エクソーム解析と、マイクロアレイ染色体検査の比較検討を行った。その結果、全エクソーム解析、ターゲットエクソーム解析ともにエクソームのリード数の定量データは、Log2変換法やXHMMによるアルゴリズムなどを用いることにより、対象疾患が限定されていて候補遺伝子がある場合には十分なCNV検出感度を示し有効である。実際、エクソン数個の微細欠失重複も高感度に検出できる。ただ、他の方法での確認のステップが必要であり、マイクロアレイ染色体検査とMLPA法は確定検査として有用であった。一方で、エクソームデータの定量は、第一段階のスクリーニング検査としては、十分な検出感度は得られず、見つからなかった症例にはマイクロアレイ染色体検査の併用が必要であると思われた。
 一方、25疾患に関して、順次臨床診断基準の作成をおこなうことに関しては、十分な事前検討を行った。その結果、疾患によっては難病指定を目指すべき疾患と小児慢性特定疾患を目指すべき疾患があり、それらはすでに「先天異常症候群」や「常染色体異常症」という形で認定されている枠組みに紐付けすることを目指すが、個々の疾患の特性は、疾患によって大きく異なるので、診断基準策定は個別に対応する必要があることが確認された。今後、残りの25疾患に関して、まず各班員が1疾患ずつを選定し、診断基準策定に向けて準備を開始することとした。倉橋浩樹(cat eye症候群)、大橋博文(2q37欠失症候群)、黒澤健司(21qサブテロメア欠失)、山本俊至(16p11.2欠失/重複)、涌井敬子(Smith-Magenis症候群)が担当となり、それぞれの疾患の診断基準策定に向けて情報を収集する。
結論
本研究では、マイクロアレイ染色体検査により診断される、多発奇形・発達遅滞を主症状とする染色体微細構造異常症候群の診療ガイドラインの確立を目的として、国内の多施設共同研究により、代表的な32疾患に関して、全国調査による国内患者の把握や、臨床診断基準、重症度判定基準の策定を開始し、7つの疾患に関しては診断基準、重症度判定基準の作成を行うことができた。また、エクソーム解析の定量とマイクロアレイ染色体検査との比較検討を行い、エクソーム解析の定量の有用性が明らかとなったが、対象疾患が明らかでない患者のスクリーニング検査や、エクソーム解析の定量の二次検査としてマイクロアレイ染色体検査の重要性が再確認された。

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201610067Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,250,000円
(2)補助金確定額
7,250,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,924,060円
人件費・謝金 0円
旅費 3,424円
その他 1,649,516円
間接経費 1,673,000円
合計 7,250,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-02-19
更新日
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