神経免疫学的視点による難治性視神経炎の診断基準作成

文献情報

文献番号
201610066A
報告書区分
総括
研究課題名
神経免疫学的視点による難治性視神経炎の診断基準作成
課題番号
H27-難治等(難)-一般-023
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
石川 均(北里大学 医療衛生学部リハビリテーション学科視覚機能療法学専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 三村 治(兵庫医科大学 神経眼科治療学)
  • 吉冨 健志(秋田大学 眼科)
  • 敷島 敬悟(東京慈恵会医科大学 眼科)
  • 平岡美紀(札幌医科大学 眼科)
  • 中馬 秀樹(宮崎大学 眼科)
  • 毛塚 剛司(東京医科大学 眼科)
  • 中村 誠(神戸大学 眼科)
  • 後関 利明(北里大学 眼科)
  • 田中 惠子(新潟大学脳研究所 細胞神経生物学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
2,984,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
視神経炎は自然軽快するものから、両眼失明に至る難治性視神経炎まで種々なる原因を有する。しかも背後に生命の危機を及ぼす原因が隠れていることがある。難治性視神経炎の診断にはMRIや特異抗体検索のための血液検査、治療にはステロイドの大量投与、血漿交換療法、免疫抑制剤の投与等が要求され、眼科単独の診療所では診断、治療が困難である。そのため本研究の目的は視神経炎の中で特に難治性視神経炎をいかに早期に発見し、診断・治療可能な施設への紹介、早期治療を開始するための診断・紹介基準、紹介先を作成し、医師のみならず広く国民に周知できるようにする。
研究方法
全国の施設より採集した視神経症例の血液検体を神経免疫学的見地から分類し、さらに調査表から予後不良な因子を取りあげ検査結果と照合し、統計学的に分析する。
初年度;全国の主要な大学病院、専門施設にて、分担研究を依頼し、倫理委員会の承認後、検体、調査表に基づく分析を開始。
2年目;251検体が全国より採集された。また調査表の予後増悪因子も明らかとなってきた。
3年目;検体の分析を行いつつ、2次調査表の依頼、結果分析を終了させ、これらの結果をもとに診断・紹介基準を作成
結果と考察
収集した検体から抗MOG抗体陽性視神経炎が約10%、抗AQP4抗体陽性視神経炎は15%に認められた。一方、現時点で多発性硬化症は5%となり、わが国の視神経炎の原因が一部解明されてきた。受診時の年齢は40~50歳代に多く、女性優位で、約半数以上に繰り返す眼球運動時痛を認める。受診時平均視力は0.1程度であり、約2割は両眼性である。視野は中心暗点、水平半盲、耳側、鼻側半盲と多彩であり、ほとんどの症例でMRIにて視神経に病変が確認される。治療は9割以上の症例でステロイドパルスを用いており、その他、抗AQP4抗体陽性視神経炎群では25%で血漿交換を用いていた。その結果、最終視力は抗AQP4抗体陽性視神経炎群で0.5、抗MOG抗体陽性視神経炎群で0.9、両抗体陰性群で0.5となっている。しかし特に抗AQP4抗体陽性視神経炎群では約半数で最終視力が0.3を下回り、約10%で光覚レベルとなっている。
結論
今回の結果より抗MOG抗体陽性視神経炎が約10%、抗AQP4抗体陽性視神経炎は15%に認められた。一方、現時点でConventionalなMSは5%となり、わが国の視神経炎の原因が一部解明されてきた。受診時の年齢は40~50歳代に多く、女性優位で、約半数以上に繰り返す眼球運動時痛を認める。受診時平均視力は0.1程度であり、約2割は両眼性である。乳頭腫脹を呈していた症例は抗MOG抗体陽性視神経炎群で約70%、抗AQP4抗体陽性視神経炎群で約30%、全体で約半数が乳頭腫脹を呈していた。視野は中心暗点、水平半盲、耳側、鼻側半盲と多彩であり、ほとんどの症例でMRIにて視神経に病変が確認される。治療は9割以上の症例でステロイドパルスを用いており、その他、抗AQP4抗体陽性視神経炎群では25%で血漿交換を用いていた。その結果、最終視力は抗AQP4抗体陽性視神経炎群で0.5、抗MOG抗体陽性視神経炎群で0.9、両抗体陰性群で0.5となっている。しかし特に抗AQP4抗体陽性視神経炎群では約半数で最終視力が0.3を下回り、約10%で光覚レベルとなっている。
今年度までの分析では抗AQP4抗体陽性視神経炎に対する血漿交換療法が当初考慮していたときより少数であった点、さらに同疾患の最終視力は平均ではあるものの比較的回復していることがあげられる。今後、検体数増加とともに、視神経炎の最終視力向上不良因子、再発因子を分析する必要がある。また再発防止に向けた維持療法も確立すべきである。

公開日・更新日

公開日
2017-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201610066Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,878,000円
(2)補助金確定額
3,878,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,479,048円
人件費・謝金 560,284円
旅費 501,668円
その他 443,000円
間接経費 894,000円
合計 3,878,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-03-07
更新日
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