機能亢進型GNAS変異関連疾患の表現型スペクトラムに関する研究

文献情報

文献番号
201610049A
報告書区分
総括
研究課題名
機能亢進型GNAS変異関連疾患の表現型スペクトラムに関する研究
課題番号
H27-難治等(難)-一般-006
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 奉延(慶應義塾大学 医学部 小児科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 鳴海 覚志(国立成育医療研究センター研究所 小児内分泌学)
  • 高橋 裕(神戸大学 糖尿病内分泌学)
  • 安達 昌功(神奈川県立こども医療センター 小児内分泌学)
  • 石井 智弘(慶應義塾大学 医学部 小児科学教室)
  • 坂本 好昭(慶應義塾大学 医学部 形成外科・形成外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
775,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
様々な器官のcAMPパスウェイを介在するGs蛋白質をコードする遺伝子GNASに体細胞モザイク性機能亢進変異が生じる機能亢進型GNAS変異関連疾患は、最重症型であるMcCune-Albright症候群(MAS)、単骨性線維性骨異形成、機能性下垂体腺腫、自律性卵巣嚢腫、その他を含む。本研究の目的は以下のごとくである。1.機能亢進型GNAS変異関連疾患の有病率を算出する。2.MAS、単骨性線維性骨異形成、機能性下垂体腺腫、自律性卵巣嚢腫の試料を収集する。3.自律性卵巣嚢腫における機能亢進型GNAS変異を検出する。4.散発性機能性下垂体腺腫(先端巨大症)における機能亢進型GNAS変異を検出する。5.平成28年8月にマッキューン・オルブライト症候群の患者会が設立され、活動を開始するにあたり、患者会と連携する。
研究方法
1.昨年度、機能亢進型GNAS変異関連疾患の実態調査(一次調査)として日本小児内分泌学会と連携し、日本小児内分泌学会評議員に対し、機能亢進型GNAS変異関連疾患のスペクトラムに含まれる可能性がある疾患の症例数の調査を依頼した。この一次調査の結果をもとに、機能亢進型GNAS変異関連疾患の有病率を算出する。2.疾患対象者の試料(血液、あるいは病変手術試料)を全国の小児科医、内分泌内科医、形成外科医、その他から収集した。3.自律性卵巣嚢腫7例を対象とし、我々が独自に開発した次世代型遺伝子解析装置を用いた方法で機能亢進型GNAS変異(R201H, R201C, Q227L)を解析した。4.散発性機能性下垂体腺腫(先端巨大症)59例を対象とし、我々が独自に開発した次世代型遺伝子解析装置を用いた方法で機能亢進型GNAS変異(R201H, R201C, Q227L)を解析した。5.患者会とメールのやり取りにより情報交換をおこなった。
結果と考察
結果
1.機能亢進型GNAS変異関連疾患として、2016年1月1日現在経過観察中の症例は計162例であった。2.平成28年12月までに全国からMAS12例、線維性骨異形成1例、機能性下垂体腺腫33例、自律性機能性卵巣嚢腫7例を収集した。3.自律性卵巣嚢腫7例中5例(71.4%)において機能亢進型GNAS変異を同定した。4.散発性機能性下垂体腺腫(先端巨大症)59例中4例において末梢血からGNASの体細胞モザイク変異を同定した。5.患者会の設立を援助し、また患者会から活動状況の提供を受けた。

考察
1.20歳未満人口比で、機能亢進型GNAS変異関連疾患の有病率を10,000万人に11.7人(McCune-Albright症候群5.0人、単骨性線維性骨異形成1.2人、自律性卵巣嚢腫5.5人)と算出した。2.機能亢進型GNAS変異関連疾患の試料が全国から収集された。3.自律性卵巣嚢腫の7例中5例において末梢血にモザイクとして機能亢進型GNAS変異を認めたことは、自律性卵巣嚢腫が機能亢進型GNAS変異関連疾患であることと矛盾しない。4.散発性機能性下垂体腺腫(先端巨大症)59例中4例において末梢血からGNASの体細胞モザイク変異を同定したことは機能亢進型GNAS変異関連疾患であることと矛盾しない。5.マッキューン・オルブライト症候群の患者会と連携した。今後もこの連携を継続する。
結論
1.今回の研究により、本邦における機能亢進型GNAS変異関連疾患の有病率を20歳未満人口比で10,000万人に11.7人であると初めて明らかにした。2.機能亢進型GNAS変異関連疾患として、MAS12例、線維性骨異形成1例、機能性下垂体腺腫33例、自律性機能性卵巣嚢腫7例の試料を収集した。3.自律性機能性卵巣嚢腫7例中5例において機能亢進型GNAS変異を同定した。4.散発性機能性下垂体腺腫(先端巨大症)の一部は機能亢進型GNAS変異関連疾患である。5.マッキューン・オルブライト症候群の患者会と連携し、メールのやりとりによる情報交換を行った。

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201610049B
報告書区分
総合
研究課題名
機能亢進型GNAS変異関連疾患の表現型スペクトラムに関する研究
課題番号
H27-難治等(難)-一般-006
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 奉延(慶應義塾大学 医学部 小児科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 鳴海 覚志(国立成育医療研究センター研究所 小児内分泌学)
  • 高橋 裕(神戸大学 糖尿病内分泌学)
  • 石井 智弘(慶應義塾大学 医学部 小児科学教室)
  • 坂本 好昭(慶應義塾大学 医学部 形成外科・形成外科学)
  • 室谷 浩二(神奈川県立こども医療センター 内分泌代謝科学)
  • 安達 昌功(神奈川県立こども医療センター 小児内分泌学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
様々な器官のcyclic AMPパスウェイを介在するGs蛋白質をコードする遺伝子GNASに体細胞モザイク性機能亢進変異が生じる機能亢進型GNAS変異関連疾患は、最重症型であるMcCune-Albright症候群(MAS)、単骨性線維性骨異形成、機能性下垂体腺腫、自律性卵巣嚢腫、その他を含む。本研究の目的は以下の5点である。1.機能亢進型GNAS変異関連疾患の実態調査を行うことにより、有病率を算出し、診療実績を明らかとする。さらにMASに関する全国規模のデータベースを構築する。2.機能亢進型GNAS変異関連疾患の診断基準および重症度分類を策定し、学会の承認を得る。3.機能亢進型GNAS変異関連疾患の対象者を設定し、試料を収集する。4.機能亢進型GNAS変異関連疾患のひとつである単骨性線維性骨異形成、機能性下垂体腺腫(先端巨大症)、自律性卵巣嚢腫において機能亢進型GNAS変異を検出する。5.マッキューン・オルブライト(MAS)患者会と連携する。
研究方法
1.日本小児内分泌学会評議員180名を対象に一次調査・二次調査を行った。またMASのデータベースを構築した。2. MASの診断基準および重症度分類を策定し、日本小児内分泌学会の承認を得た。3.疾患対象者の試料(血液、あるいは病変手術試料)を全国から収集した。4.機能亢進型GNAS変異(R201H, R201C, Q227L)の検出には次世代型遺伝子解析装置を用いた。5.マッキューン・オルブライト症候群の患者会とメールによる情報交換を行った。
本研究は慶應義塾大学医学部倫理委員会、神戸大学院医学研究科遺伝子解析研究倫理委員会・医学倫理委員会、および日本小児内分泌学会の承認のもとに行った。またヘルシンキ宣言、ヒトを対象とする医学系研究に関する倫理指針、臨床研究指針・疫学研究指針に準拠した。
結果と考察
1.一次調査の結果、 2016年1月1日現在経過観察中の機能亢進型GNAS変異関連疾患は計162例であった。20歳未満人口比で、機能亢進型GNAS変異関連疾患の有病率を10万人に11.7人(MAS5.0人、単骨性線維性骨異形成1.2人、自律性卵巣嚢腫5.5人)と算出した。二次調査の成績により、機能亢進型GNAS変異関連疾患の診療実績が明らかになると期待される。MAS患者情報のデータベースを構築した。この運用を継続し、MAS疫学データの質の向上に努める。2.MASの診断基準および重症度分類を策定し、日本小児内分泌学会での承認を得た。MASの診断、重症度、および治療に関する情報が一元化されたことにより、MAS診療の質の向上に寄与すると考える。3. 2年間にMAS49例、単骨性線維性異形成(MFD)13例、機能性下垂体腺腫92例、自律性卵巣嚢腫18例の試料を収集した。4.以下のように機能亢進型GNAS変異をモザイクに同定した。(1) MFD8例全例における骨病変と末梢血のいずれかまたは両者、(2) -1.機能性下垂体腺腫(先端巨大症)59例中30例の腫瘍病変、(2)-2.上述30例中4例の末梢血、 (3) 自律性卵巣嚢腫7例中5例の末梢血。この成績は、MFD、機能性下垂体腺腫(先端巨大症)、および自律性卵巣嚢腫の少なくとも一部は機能亢進型GNAS変異関連疾患であることと矛盾しない。5.患者会の設立および活動を援助した。患者会との連携を継続し、患者の生の声を行政に届ける。
結論
1.2016年1月1日現在、日本小児内分泌学会評議員勤務施設で診療されている機能亢進型GNAS変異関連疾患の総数は162例であった。今回の研究により、本邦における機能亢進型GNAS変異関連疾患の有病率を20歳未満人口比で10万人に11.7人であると初めて明らかにした。MASに関する全国規模のデータベースを初めて構築した。2.GNAS変異関連疾患の最重症型であるMASの診断基準および重症度分類を策定し、学会での承認を得た。3.2年間に機能亢進型GNAS変異関連疾患として、全国からMAS49例、線維性骨異形成13例、機能性下垂体腺腫92例、自律性機能性卵巣嚢腫18例の試料を収集した。4.(1)単骨性線維性骨異形成8例全例の骨病変と末梢血のいずれかまたは両者、(2) -1.機能性下垂体腺腫(先端巨大症)59例中30例の腫瘍病変、(2)-2. 上述30 例中の4例の末梢血、(3) 自律性機能性卵巣嚢腫7例中5例の末梢血、においてモザイクとして機能亢進型GNAS変異を同定した。5.MASの患者会と連携し、メールのやりとりによる情報交換を行った。

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201610049C

成果

専門的・学術的観点からの成果
以下の疾患の試料においてモザイクとして機能亢進型GNAS変異を同定した。(1)単骨性線維性骨異形成8例全例の骨病変と末梢血のいずれかまたは両者、(2)散発性機能性下垂体腺腫(先端巨大症)59例中30例の腫瘍病変、さらにその30例中4例の末梢血、(3)自律性卵巣嚢腫7例中5例の末梢血。以上より単骨性線維性骨異形成、散発性機能性下垂体腺腫(先端巨大症)、自律性卵巣嚢腫3疾患の少なくとも一部の症例は機能亢進型GNAS変異関連疾患である。
臨床的観点からの成果
実態調査(一次調査)により2016年1月1日現在経過観察中の機能亢進型GNAS変異関連疾患の症例数は計162例であった。機能亢進型GNAS変異関連疾患の有病率を20歳未満人口比で10万人に11.7人と算出した。現在二次調査(平成29年3月31日現在、機能亢進型GNAS変異関連疾患のスペクトラムに含まれる可能性がある疾患の診療実績)の結果を解析中である。またMcCune-Albright症候群の患者情報をデータベース化した。
ガイドライン等の開発
McCune-Albright症候群の診断基準および重症度分類を策定した。策定に際しては日本小児科学会、日本小児内分泌学会、日本内分泌学会、厚生労働科学研究費補助金「性分化・性成熟疾患群における診療ガイドラインの作成と普及研究班」と連携した。診断基準および重症度分類は日本小児内分泌学会での承認を得た。この診断基準および重症度分類を用い、日本小児科学会を通じ、McCune-Albright症候群を第3次指定難病の対象疾患として厚生労働省に要望した。
その他行政的観点からの成果
平成28年8月に立ち上がったマッキューン・オルブライト症候群の患者会と連携した。すなわち、会の立ち上げを支援し、されにその後もメールのやりとりによる情報交換を継続している。今後もマッキューン・オルブライト症候群の患者会との連携、情報交換により患者の生の声を行政に届ける。
その他のインパクト
マスコミに取り上げられたこと
2016年10月2日の産経新聞に、本研究会と連携して活動しているマッキューン・オルブライト症候群患者会の活動についての記事が掲載された。<産経新聞ネットニュース>http://www.sankei.com/smp/west/news/161002/wst1610020018-s1.html

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
8件
機能亢進型GNAS変異関連疾患の1つである散発性機能性下垂体腺腫(先端巨大症)における臨床像、合併症、QOLなどを報告した。
その他論文(和文)
4件
機能亢進型GNAS変異関連疾患の1つである散発性機能性下垂体腺腫(先端巨大症)における合併症、生命予後、QOLなどを報告した。
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
11件
次世代シークエンサーを用いた機能亢進型GNAS変異解析方法、および機能亢進型GNAS変異関連疾患の1つであるMcCune-Albright症候群の臨床像、合併症等について報告した。
学会発表(国際学会等)
6件
単骨性線維性骨異形成あるいは自律性卵巣嚢腫におけるモザイクとしての機能亢進型GNAS変異同定等について報告した。
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
機能亢進型GNAS変異関連疾患の1つである散発性機能性下垂体腺腫(先端巨大症)に関し、指定難病の立場から啓発講演を行った。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
なし
なし
なし

公開日・更新日

公開日
2021-06-08
更新日
-

収支報告書

文献番号
201610049Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,006,000円
(2)補助金確定額
1,006,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 597,600円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 180,228円
間接経費 231,000円
合計 1,008,828円

備考

備考
自己資金 2,828円

公開日・更新日

公開日
2018-03-07
更新日
-