文献情報
文献番号
201610024A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性大腿骨頭壊死症の疫学調査・診断基準・重症度分類の改訂と診療ガイドライン策定を目指した大規模多施設研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-059
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
菅野 伸彦(大阪大学 大学院医学系研究科運動器医工学治療学)
研究分担者(所属機関)
- 渥美 敬(佐々総合病院 整形外科学)
- 久保 俊一(京都府立医科大学 大学院医学研究科運動器機能再生外科学)
- 馬渡 正明(佐賀大学 医学部整形外科学)
- 須藤 啓広(三重大学 大学院医学系研究科運動器外科学)
- 田中 栄(東京大学 大学院医学系研究科外科学専攻感覚運動機能医学講座整形外科学)
- 尾崎 誠(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻展開医療科学講座構造病態整形外科学)
- 伊藤 浩(旭川医科大学 医学部整形外科学)
- 高木 理彰(山形大学 医学部整形外科学)
- 松田 秀一(京都大学 大学院医学研究科感覚運動系外科学講座整形外科学)
- 秋山 治彦(岐阜大学 医学部整形外科学)
- 名越 智(札幌医科大学 生体工学運動器治療開発講座)
- 安永 裕司(広島県立障害者リハビリテーションセンター 整形外科学)
- 大園 健二(関西労災病院 整形外科学)
- 長谷川 幸治(関西福祉科学大学 保健医療学部リハビリテーション学科整形外科学)
- 小林 千益(諏訪赤十字病院 整形外科学)
- 福島 若葉(大阪市立大学 大学院医学研究科疫学公衆衛生学)
- 山本 卓明(福岡大学 医学部整形外科学)
- 稲葉 裕(横浜市立大学 大学院医学研究科運動器病態学)
- 加畑 多文(金沢大学 大学院医薬保健学総合研究科医薬保健学域医学類機能再建学)
- 上杉 裕子(神戸大学 大学院保健学研究科国際保健学)
- 大川 孝浩(久留米大学医療センター 整形外科・関節外科センタ・整形外科学)
- 神野 哲也(東京医科歯科大学医学部附属病院 リハビリテーション部)
- 三木 秀宣(独立行政法人大阪医療センター 整形外科学)
- 兼氏 歩(金沢医科大学 医学部整形外科学)
- 関 泰輔(名古屋大学 大学院医学系研究科整形外科学)
- 仲宗根 哲(琉球大学 大学院医学研究科医科学専攻整形外科学)
- 坂井 孝司(大阪大学 大学院医学系研究科器官制御外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
5,430,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
特発性大腿骨頭壊死症(ONFH)は、青・壮年期に好発し、股関節機能障害をきたし歩行困難となる重篤な疾患である。本研究班発足にあたり、以下の4点を目的とした。
・全国の疫学調査継続による、世界最大の正確かつ最新の疫学データ収集とその解析
・的確かつ精度の高い診断基準の確立と、大腿骨頭壊死症患者の診断の標準化
・重症度分類とQOL評価の実施
・総合的な特発性大腿骨頭壊死症診療ガイドラインの策定
・全国の疫学調査継続による、世界最大の正確かつ最新の疫学データ収集とその解析
・的確かつ精度の高い診断基準の確立と、大腿骨頭壊死症患者の診断の標準化
・重症度分類とQOL評価の実施
・総合的な特発性大腿骨頭壊死症診療ガイドラインの策定
研究方法
1.疫学調査
全国の研究分担者からなる疫学データの大量・確実な取得の体制を整え、定点モニタリングにより記述疫学特性の経年変化を解析し、多角的に患者像比較を行った。また全国疫学調査(一次調査・二次調査)での255科2289名の集積データを整理し解析を行った。
2.診断基準の確立及び診断の標準化
附則を設けたMRI1項目での確定診断の可能性、MRI1項目で診断したstage1例の自然経過について調査した。
3.重症度分類の確立・QOL評価
多発性骨壊死例についても情報収集を行い、重症度分類とQOLの関連、及び経時的なQOL評価を行った。
4.特発性大腿骨頭壊死症診療ガイドラインの策定
疫学・病態・診断・保存治療・骨切り術・人工股関節置換術・再生治療の7つの各分野における26のclinical questionについて、文献選択、サイエンティフィックステートメントの作成、及び要約または推奨度を決定し、ガイドラインの策定に向けて進めた。
全国の研究分担者からなる疫学データの大量・確実な取得の体制を整え、定点モニタリングにより記述疫学特性の経年変化を解析し、多角的に患者像比較を行った。また全国疫学調査(一次調査・二次調査)での255科2289名の集積データを整理し解析を行った。
2.診断基準の確立及び診断の標準化
附則を設けたMRI1項目での確定診断の可能性、MRI1項目で診断したstage1例の自然経過について調査した。
3.重症度分類の確立・QOL評価
多発性骨壊死例についても情報収集を行い、重症度分類とQOLの関連、及び経時的なQOL評価を行った。
4.特発性大腿骨頭壊死症診療ガイドラインの策定
疫学・病態・診断・保存治療・骨切り術・人工股関節置換術・再生治療の7つの各分野における26のclinical questionについて、文献選択、サイエンティフィックステートメントの作成、及び要約または推奨度を決定し、ガイドラインの策定に向けて進めた。
結果と考察
1.疫学調査
全国疫学調査で、2014年1年間の全国におけるONFH受療患者数は約23,100人、年間有病率は人口10万人あたり18.2人(0.0182%)と推計された。また、年間新患数は全国で約2,100人と推計された。年間受療者数は2014年には20年前の3倍を超え、増加し続けていることが明らかとなった。確定診断時の年齢分布は、40~60歳代の割合が高く、男性では40歳代、女性で60歳代の占める割合が最も高かった。ステロイド全身投与歴、習慣飲酒歴、喫煙歴を有する者の割合は、それぞれ55%、44%、32%であった。
定点モニタリングによる疫学調査では、新患症例における男性は56%であり、30歳代から40歳代に確定診断時年齢の集積が認められ、ステロイド全身投与歴を有するものは49%、習慣飲酒歴を有するものは63%、喫煙歴を有するものは31%であった。一方、女性では、30歳代から60歳代に確定診断時年齢が幅広く分布し、ステロイド全身投与歴を有するもの77%、習慣飲酒歴を有するもの20%、喫煙歴を有するもの13%であり、男女間で分布が異なった。女性の60歳代の割合が増加していた。
2.診断基準の確立と診断の標準化
ONFH診断基準を用いても、他の疾患が混入される問題で、画像診断項目のみでは、他疾患と鑑別不能で、骨生検による組織学的診断の必要性が再認識された。一方で、再生治療を成功させるにはStage 1における診断を正確に行うため、MRI単独の診断がどこまで可能か検討した。多くの症例ではMRIで壊死範囲も評価でき、その範囲は経時的に不変で、予後予測が可能であることが示された。一方、MRI異常所見が短期間で縮小する報告もあり、現時点でMRI単独での診断については引き続き調査が必要と考えられた。
3.重症度分類の確立・QOL評価
17大学の初診患者110名、手術前患者108名、合計218名から結果が得られた。QOLは病期の進行に伴い悪化していたが、特に3A、3Bで大きく悪化していた。患者の年齢が若い方ほど股関節への不満が高く、また、手術後は6か月後に痛みと身体機能が改善し、術後1年でさらに身体機能が改善していた。
4.特発性大腿骨頭壊死症診療ガイドラインの策定
以上の疫学研究、診断基準、QOL評価の結果を踏まえ、Pubmed及び医中誌から各CQにおいて文献を選択し、エビデンスをもとに解説を作成し、要約・推奨を提案して、ガイドライン試案を作成した。
全国疫学調査で、2014年1年間の全国におけるONFH受療患者数は約23,100人、年間有病率は人口10万人あたり18.2人(0.0182%)と推計された。また、年間新患数は全国で約2,100人と推計された。年間受療者数は2014年には20年前の3倍を超え、増加し続けていることが明らかとなった。確定診断時の年齢分布は、40~60歳代の割合が高く、男性では40歳代、女性で60歳代の占める割合が最も高かった。ステロイド全身投与歴、習慣飲酒歴、喫煙歴を有する者の割合は、それぞれ55%、44%、32%であった。
定点モニタリングによる疫学調査では、新患症例における男性は56%であり、30歳代から40歳代に確定診断時年齢の集積が認められ、ステロイド全身投与歴を有するものは49%、習慣飲酒歴を有するものは63%、喫煙歴を有するものは31%であった。一方、女性では、30歳代から60歳代に確定診断時年齢が幅広く分布し、ステロイド全身投与歴を有するもの77%、習慣飲酒歴を有するもの20%、喫煙歴を有するもの13%であり、男女間で分布が異なった。女性の60歳代の割合が増加していた。
2.診断基準の確立と診断の標準化
ONFH診断基準を用いても、他の疾患が混入される問題で、画像診断項目のみでは、他疾患と鑑別不能で、骨生検による組織学的診断の必要性が再認識された。一方で、再生治療を成功させるにはStage 1における診断を正確に行うため、MRI単独の診断がどこまで可能か検討した。多くの症例ではMRIで壊死範囲も評価でき、その範囲は経時的に不変で、予後予測が可能であることが示された。一方、MRI異常所見が短期間で縮小する報告もあり、現時点でMRI単独での診断については引き続き調査が必要と考えられた。
3.重症度分類の確立・QOL評価
17大学の初診患者110名、手術前患者108名、合計218名から結果が得られた。QOLは病期の進行に伴い悪化していたが、特に3A、3Bで大きく悪化していた。患者の年齢が若い方ほど股関節への不満が高く、また、手術後は6か月後に痛みと身体機能が改善し、術後1年でさらに身体機能が改善していた。
4.特発性大腿骨頭壊死症診療ガイドラインの策定
以上の疫学研究、診断基準、QOL評価の結果を踏まえ、Pubmed及び医中誌から各CQにおいて文献を選択し、エビデンスをもとに解説を作成し、要約・推奨を提案して、ガイドライン試案を作成した。
結論
全国疫学調査により、2014年1年間の全国におけるONFH受療患者数、年間有病率、年間新患数が明らかとなった。定点モニタリングでは、新患男女の年齢分布と関連因子は異なっていた。QOL評価では病期の進行に伴い悪化し、患者の年齢が若いほど股関節への不満が高かった。これらを踏まえ特発性大腿骨頭壊死症診療ガイドラインの試案を作成した。
公開日・更新日
公開日
2017-06-06
更新日
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