ミトコンドリア病の調査研究

文献情報

文献番号
201610020A
報告書区分
総括
研究課題名
ミトコンドリア病の調査研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-053
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
後藤 雄一(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター メディカル・ゲノムセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 小坂 仁 (自治医科大学小児科 )
  • 大竹 明 (埼玉医科大学小児科)
  • 北風 政史 (国立循環器病研究センター )
  • 古賀 靖敏(久留米大学医学部小児科 )
  • 小牧 宏文 (国立精神・神経医療研究センター )
  • 佐野 輝(鹿児島大学学術研究院医歯学域医学系精神機能病学)
  • 末岡 浩 (慶應義塾大学・産婦人科学 )
  • 田中 雅嗣 (東京都健康長寿医療センター )
  • 三牧 正和(帝京大学医学部附属病院・小児科学 )
  • 山岨 達也 (東京大学医学部・耳鼻咽喉科 )
  • 米田 誠 (福井県立大学・看護福祉学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
5,838,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ミトコンドリア病の多様な遺伝形式、多様な臨床症状、多様な臨床経過などから、その全体象を捕らえられていない。わが国における患者数、病型分類や合併症、現行の治療法などの実態調査を行うことが不可欠である。その上で「診療ガイドライン」を作成し、患者レジストリーを構築し、具体的な臨床研究・治験を進める基盤を作ることが必要である
研究方法
1)診断フローチャートの作成と検査標準化
 ミトコンドリア病の診断に必要な3種類の検査方法(病理検査、生化学検査、遺伝子検査)の標準化と集約的な診断体制の構築を継続する。特に遺伝子検査の重要性が一段と増しており、臨床検査としての遺伝子検査実施体制の構築が行われる中に、ミトコンドリア病の遺伝子検査を位置づける。
2)認定基準の改定、重症度スケール、グローバルな診断基準作成に参加
 平成26年10月に診断基準と重症度分類を策定した。その改訂版の検討、及び、個別病型の診断基準策定を行う。
3)診療ガイドラインの作成
 実用化研究事業の村山班と協力して、診療ガイドラインを作成する。
4)ミトコンドリア病に詳しい医師のネットワークと情報提供体制の整備
 患者・家族や本疾患を診ている医療従事者に対して、本疾患の医療情報をホームページ等で提供する。「ミトコンドリア病に詳しい医師のネットワーク」を構築する。
5)実態調査を兼ねた患者レジストリーの構築
 実用化研究事業の村山班と協力して、連携しながら、日本におけるミトコンドリア病患者レジストリーを構築する。すでに、webを用いたプロトタイプを構築し、登録作業を開始する。
6)生殖補助医療の情報収集と見解のまとめ
受精卵診断では得られない発症リスクの低い受精卵を得るために「核移植治療」が検討されており、2015年2月に英議会は、その臨床応用を認める判断を行った。この技術の有用性や倫理的問題について、本研究班で検討した
結果と考察
1)診断フローチャートの作成と検査標準化
 ミトコンドリア病の確定診断には、病理検査、生化学検査、遺伝子検査を行い、総合的な評価が必要である。特に遺伝子検査が重要であり、NCNPでは次世代シークエンサーを用いたミトコンドリアDNA検査を試みており、実用に耐える方法を確立した。
2)診断基準、重症度スケールの作成
 2015年1月に始まった指定難病の認定に際して、新たな認定基準を試作した。一方で、小児慢性特定疾患の診断基準との整合性や臨床試験のための個別病型の診断基準作成も開始した。
3)診療ガイドラインの作成
 実用化研究班(村山班)と協力して、診療ガイドライン作成を行う予定であった。ミトコンドリア病は診断基準が確定されていないこともあって、エビデンスとして採用できる研究成果が少ない。したがって、Minds方式のガイドライン作成は極めて困難な状況であり、「診療マニュアル」として平成28年12月に刊行した。
4)ミトコンドリア病の情報提供体制の整備
 平市民向けのセミナーとしては、平成28年11月19日に札幌で「市民公開講座:ミトコンドリア病を知る」を開催した。また、難病情報センターのHPの情報を更新した。患者会主催の勉強会でセミナーを行った(平成28年7月2日:大阪)。
5)実態調査を兼ねた患者レジストリーの構築
国立精神・神経医療研究センターにおけるミトコンドリア病患者レジストリーは、トランスレーショナル・メディカルセンターが実施している筋ジストロフィーの登録事業(Remudy)を敷衍する形態で作業を進めているが、費用等の面,新たな個人情報保護法施行に伴う倫理ガイドライン変更への対応、欧米での患者レジストリー事業との連携待ちの状況があり、平成28年度は明確な進展を得られず、平成29年以降に持ち越した。
6)生殖補助医療の情報収集と見解のまとめ
日本においては、核移植を行う技術は十分備わっていることから、実際に行うクリニック等が出現しないか懸念がある。したがって、日本においては、臨床研究として情報公開をしながら施行することを認めることが必要ではないか、という意見が班会議において大勢を占めた。
結論
本研究班の活動はAMED難治性疾患実用化研究班(村山班)と連携しながら進め、「診療マニュアル」を刊行した。全国レベルの診断体制の整備、診断基準や重症度スケールの改定作業を進めた。アウトリーチ活動として、市民公開講座や患者会勉強会での講演を行い、生殖補助医療の情報収集と日本での実現可能性について議論した。患者レジストリーは、種々の要因で進んでいないが、グローバルな視点でバイオバンクとの連動を図りながら、着実に進めてゆく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2017-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201610020B
報告書区分
総合
研究課題名
ミトコンドリア病の調査研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-053
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
後藤 雄一(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター メディカル・ゲノムセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 小坂 仁 (自治医科大学小児科 )
  • 大竹 明 (埼玉医科大学小児科 )
  • 北風 政史 (国立循環器病研究センター )
  • 古賀 靖敏(久留米大学医学部小児科 )
  • 小牧 宏文 (国立精神・神経医療研究センター )
  • 佐野 輝(鹿児島大学学術研究院医歯学域医学系精神機能病学)
  • 末岡 浩(慶應義塾大学・産婦人科学)
  • 田中 雅嗣(東京都健康長寿医療センター)
  • 三牧 正和(帝京大学医学部附属病院・小児科学 )
  • 山岨 達也(東京大学医学部・耳鼻咽喉科)
  • 米田 誠(福井県立大学・看護福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ミトコンドリア病の多様な遺伝形式、多様な臨床症状、多様な臨床経過などから、その全体象を捕らえられていない。わが国における患者数、病型分類や合併症、現行の治療法などの実態調査を行うことが不可欠である。その上で「診療ガイドライン」を作成し、患者レジストリーを構築し、具体的な臨床研究・治験を進める基盤を作ることが必要である。
研究方法
1)診断フローチャートの作成と検査標準化
 ミトコンドリア病の診断に必要な3種類の検査方法(病理検査、生化学検査、遺伝子検査)の標準化と集約的な診断体制の構築を継続する。特に遺伝子検査の重要性が一段と増しており、臨床検査としての遺伝子検査実施体制の構築が行われる中に、ミトコンドリア病の遺伝子検査を位置づける。
2)認定基準の改定、重症度スケール、グローバルな診断基準作成に参加
 平成26年10月に診断基準と重症度分類を策定した。その改訂版の検討、及び、個別病型の診断基準策定を行う。
3)診療ガイドラインの作成
 実用化研究事業の村山班と協力して、診療ガイドラインを作成する。
4)ミトコンドリア病に詳しい医師のネットワークと情報提供体制の整備
 患者・家族や本疾患を診ている医療従事者に対して、本疾患の医療情報をホームページ等で提供する。「ミトコンドリア病に詳しい医師のネットワーク」を構築する。
5)実態調査を兼ねた患者レジストリーの構築
 実用化研究事業の村山班と協力して、連携しながら、日本におけるミトコンドリア病患者レジストリーを構築する。すでに、webを用いたプロトタイプを構築し、登録作業を開始する。
6)生殖補助医療の情報収集と見解のまとめ
受精卵診断では得られない発症リスクの低い受精卵を得るために「核移植治療」が検討されており、2015年2月に英議会は、その臨床応用を認める判断を行った。この技術の有用性や倫理的問題について、本研究班で検討した
結果と考察
1)診断フローチャートの作成と検査標準化
 ミトコンドリア病の確定診断には、病理検査、生化学検査、遺伝子検査を行い、総合的な評価が必要である。特に遺伝子検査が重要であり、NCNPでは次世代シークエンサーを用いたミトコンドリアDNA検査を試みており、実用に耐える方法を確立した。
2)診断基準、重症度スケールの作成
 2015年1月に始まった指定難病の認定に際して、新たな認定基準を試作した。一方で、小児慢性特定疾患の診断基準との整合性や臨床試験のための個別病型の診断基準作成も開始した。
3)診療ガイドラインの作成
 実用化研究班(村山班)と協力して、診療ガイドライン作成を行う予定であった。ミトコンドリア病は診断基準が確定されていないこともあって、エビデンスとして採用できる研究成果が少ない。したがって、Minds方式のガイドライン作成は極めて困難な状況であり、「診療マニュアル」として平成28年12月に刊行した。
4)ミトコンドリア病の情報提供体制の整備
 平市民向けのセミナーとしては、平成28年11月19日に札幌で「市民公開講座:ミトコンドリア病を知る」を開催した。また、難病情報センターのHPの情報を更新した。患者会主催の勉強会でセミナーを行った(平成28年7月2日:大阪)。
5)実態調査を兼ねた患者レジストリーの構築
国立精神・神経医療研究センターにおけるミトコンドリア病患者レジストリーは、トランスレーショナル・メディカルセンターが実施している筋ジストロフィーの登録事業(Remudy)を敷衍する形態で作業を進めているが、費用等の面,新たな個人情報保護法施行に伴う倫理ガイドライン変更への対応、欧米での患者レジストリー事業との連携待ちの状況があり、平成28年度は明確な進展を得られず、平成29年以降に持ち越した。
6)生殖補助医療の情報収集と見解のまとめ
日本においては、核移植を行う技術は十分備わっていることから、実際に行うクリニック等が出現しないか懸念がある。したがって、日本においては、臨床研究として情報公開をしながら施行することを認めることが必要ではないか、という意見が班会議において大勢を占めた。
結論
本研究班の活動はAMED難治性疾患実用化研究班(村山班)と連携しながら進め、「診療マニュアル」を刊行した。全国レベルの診断体制の整備、診断基準や重症度スケールの改定作業を進めた。アウトリーチ活動として、市民公開講座や患者会勉強会での講演を行い、生殖補助医療の情報収集と日本での実現可能性について議論した。患者レジストリーは、種々の要因で進んでいないが、グローバルな視点でバイオバンクとの連動を図りながら、着実に進めてゆく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2017-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201610020C

収支報告書

文献番号
201610020Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,589,000円
(2)補助金確定額
7,589,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,258,443円
人件費・謝金 310,201円
旅費 891,761円
その他 378,836円
間接経費 1,751,000円
合計 7,590,241円

備考

備考
自己資金 1,241円

公開日・更新日

公開日
2018-03-01
更新日
-