文献情報
文献番号
201610018A
報告書区分
総括
研究課題名
希少難治性てんかんのレジストリ構築による総合的研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-051
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
井上 有史(独立行政法人国立病院機構静岡・てんかん神経医療センター 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
- 須貝研司(国立精神・神経医療研究センター)
- 小国弘量(東京女子医科大学医学部)
- 廣瀬伸一(福岡大学医学部)
- 柿田明美(新潟大学脳研究所)
- 白石秀明(北海道大学医学部)
- 中里信和(東北大学大学院医学系研究科)
- 山本 仁(聖マリアンナ医科大学医学部)
- 白水洋史(国立病院機構西新潟中央病院)
- 高橋幸利(国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター)
- 永井利三郎(プール学院大学教育学部)
- 小林勝弘(岡山大学大学院医学系研究科)
- 本田涼子(国立病院機構長崎医療センター)
- 池田昭夫(京都大学大学院医学系研究科)
- 川合謙介(自治医科大学医学部)
- 奥村彰久(愛知医科大学医学部)
- 浜野晋一郎(埼玉県立小児医療センター)
- 加藤光広(昭和大学医学部)
- 菅野秀宣(順天堂大学医学部)
- 松尾 健(NTT東日本関東病院)
- 林 雅晴(東京都医学総合研究所)
- 松石豊次郎(社会医療法人雪の聖母会 聖マリア病院)
- 今井克美(国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター)
- 青天目信(大阪大学大学院医学系研究科)
- 岡本伸彦(大阪府立母子保健総合医療センター)
- 齋藤明子(国立病院機構名古屋医療センター・臨床研究センター)
- 嘉田晃子(国立病院機構名古屋医療センター・臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
12,317,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
希少難治性てんかん症候群およびその原因疾患につきレジストリを構築し、全国規模で症例を集積し、さらに追跡調査を行って、我が国における希少難治性てんかんの病態、発達・併存障害、治療反応、社会生活状態に関する疫学的な根拠を得るのが目的である。3年度は登録を継続し、横断研究のデータを解析し、縦断研究の中間データを得た。さらに、指定難病に指定された22の疾患の疾患概要、重症度分類、臨床調査個人票を作成・改訂し、難病情報センターに掲載する医療従事者向けおよび一般利用者向けの難病解説文書を作成・修正し、さらに新たに指定難病として検討すべき疾患について診断基準・重症度等を考慮するとともに、指定難病を医療従事者および一般向けに啓発・解説するガイド本を作成することを計画した。
研究方法
疾患登録は全体及び疾患分類別の患者数の把握と死亡率の推定を、横断研究は患者の病態の現状把握および罹病期間と病態の関係の検討を、縦断研究は2年間の病態、障害の程度、社会生活状況の推移の把握を目的とした。研究期間は、疾患登録は2017年3月まで、横断研究は2015年11月まで、縦断研究では2015年11月までに登録された新規症例/診断移行症例を登録後2年間追跡する。人を対象とする医学系研究に関する倫理指針を遵守し、倫理審査委員会で承認を得て、倫理に十分に配慮しつつ研究を行った。
結果と考察
疾患登録:1566例の解析では、性別は男52.1%であり、発症年齢の中央値は2歳(0-74歳)、もっとも多いのは1歳未満であった(36.4%)。症候群別の人数は、その他の焦点てんかんが最も多く(43.7%)、次にWest症候群(13.7%)、海馬硬化を伴う内側側頭葉てんかん(9.8%)、Dravet症候群(5.4%)であった。てんかんの原因疾患は、皮質発達異常による奇形(12.8%)、腫瘍に帰するてんかん(7.8%)、分類にあてはまらないものや不明(53.5%)が多かった。登録例のうち11人の死亡があった。
横断研究:1316例での登録時年齢は中央値 18 歳(範囲 0 ~80 歳)、罹病期間は中央値 11 年。登録時の主発作型は複雑部分発作(33.8%)、スパスム(14.7%)、強直(10.5%)、強直間代発作(9%)、発作頻度は日単位 (27.3%)、月単位以上(63%)が多かった。発作消失 は18.9%であった。発作の誘因では熱関連がもっとも多かった。脳波検査では87%で異常があり、神経画像検査では65.6%で異常所見がみられた。薬物治療は 97.4%が行っており、ACTH、ステロイドパルス、食事療法、外科治療は26.8%)も行われていた。併存症では、知的障害が多くみられ、最重度がもっとも多かった(21%)。自閉症スペクトルム障害は17.6%、身体所見/神経学的所見は37%で、精神症状は12.9%でみられた。生活状況では、生活介護が必要な人が109人、特別支援学校・級には300人が在籍し、76人が障害就労していた。72.8%が何らかの医療・福祉制度を利用していた。
縦断研究:解析対象者数は46人であり、West症候群が67.4%、その他の焦点てんかん17.4%であった。原因疾患は、皮質形成異常による奇形が19.6%、分類にあてはまらないものや不明が43.5%であった。1年後の状態が観察されたのは42人であり、主発作は48.6%で消失し、17.1%において頻度が増加した。発作経過の全体評価では、改善が28.6%、不変が26.2%、悪化が7.1%であった。全般改善度は、改善が54.8%、不変が38.1%、悪化が4.8%であった。
指定難病:当研究班は22疾患を担当し、疾患概要、診断基準、重症度分類、臨床調査個人票を作成した。疾患概要・診断基準は、てんかん学会、小児神経学会、神経学会、てんかん外科学会の承認を得て、「稀少てんかんの診療指標」という本にまとめて出版した。さらに難病情報センターに掲載する医療従事者向けおよび一般利用者向けの難病解説文書を作成し提出した。また、てんかんを主症状とする当研究班が扱った22の指定難病およびてんかんのあるその他の指定難病を一般向けに平易に解説した啓発本「てんかんの指定難病ガイド」を制作し、全国の関連機関および患者団体等に配布した。
横断研究:1316例での登録時年齢は中央値 18 歳(範囲 0 ~80 歳)、罹病期間は中央値 11 年。登録時の主発作型は複雑部分発作(33.8%)、スパスム(14.7%)、強直(10.5%)、強直間代発作(9%)、発作頻度は日単位 (27.3%)、月単位以上(63%)が多かった。発作消失 は18.9%であった。発作の誘因では熱関連がもっとも多かった。脳波検査では87%で異常があり、神経画像検査では65.6%で異常所見がみられた。薬物治療は 97.4%が行っており、ACTH、ステロイドパルス、食事療法、外科治療は26.8%)も行われていた。併存症では、知的障害が多くみられ、最重度がもっとも多かった(21%)。自閉症スペクトルム障害は17.6%、身体所見/神経学的所見は37%で、精神症状は12.9%でみられた。生活状況では、生活介護が必要な人が109人、特別支援学校・級には300人が在籍し、76人が障害就労していた。72.8%が何らかの医療・福祉制度を利用していた。
縦断研究:解析対象者数は46人であり、West症候群が67.4%、その他の焦点てんかん17.4%であった。原因疾患は、皮質形成異常による奇形が19.6%、分類にあてはまらないものや不明が43.5%であった。1年後の状態が観察されたのは42人であり、主発作は48.6%で消失し、17.1%において頻度が増加した。発作経過の全体評価では、改善が28.6%、不変が26.2%、悪化が7.1%であった。全般改善度は、改善が54.8%、不変が38.1%、悪化が4.8%であった。
指定難病:当研究班は22疾患を担当し、疾患概要、診断基準、重症度分類、臨床調査個人票を作成した。疾患概要・診断基準は、てんかん学会、小児神経学会、神経学会、てんかん外科学会の承認を得て、「稀少てんかんの診療指標」という本にまとめて出版した。さらに難病情報センターに掲載する医療従事者向けおよび一般利用者向けの難病解説文書を作成し提出した。また、てんかんを主症状とする当研究班が扱った22の指定難病およびてんかんのあるその他の指定難病を一般向けに平易に解説した啓発本「てんかんの指定難病ガイド」を制作し、全国の関連機関および患者団体等に配布した。
結論
希少難治性てんかんのレジストリ/データベースを構築し、EDCシステムのWEB方式で、平成26年11月1日より登録を開始した。疾患登録は順調に行われ、13ヶ月の横断研究のデータ(1316例)を解析した。縦断研究には46例を追跡している。今後、縦断研究の成果を得て、本研究の目標を達成し、指定難病制度に貢献する。
公開日・更新日
公開日
2017-05-29
更新日
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