文献情報
文献番号
201610017A
報告書区分
総括
研究課題名
IgG4関連疾患の診断基準並びに治療指針の確立を目指した研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-050
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
千葉 勉(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 岡崎 和一(関西医科大学 内科学第三講座)
- 下瀬川 徹(東北大学 医学系研究科)
- 神澤 輝実(都立駒込病院 消化器内科)
- 川 茂幸(信州大学総合健康安全センター 消化器病学・肝臓病学)
- 中村 誠司(九州大学 歯学部・歯科口腔外科学)
- 半田 知宏(京都大学 医学研究科 呼吸器内科学)
- 井戸 章雄(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
- 能登原 憲司(倉敷中央病院 病理診断科)
- 滝川 一(帝京大学 医学部内科・消化器内科学)
- 岩崎 栄典(慶應義塾大学 医学部内科学(消化器))
- 児玉 裕三(京都大学 医学研究科 消化器内科学)
- 三森 経世(京都大学 医学研究科 臨床免疫学)
- 住田 孝之(筑波大学 医学医療系内科・膠原病・リウマチ・アレルギー)
- 佐藤 康晴(岡山大学 大学院保健学研究科・病態情報学)
- 赤水 尚史(和歌山県立医科大学 内科学第一講座)
- 川野 充弘(金沢大学医学部附属病院 リウマチ・膠原病学)
- 田中 良哉(産業医科大学 医学部第一内科学)
- 高橋 裕樹(札幌医科大学 医学部消化器内科・免疫・リウマチ内科学講座)
- 後藤 浩(東京医科大学 臨床医学系眼科学分野)
- 松井 祥子(富山大学 保健管理センター 呼吸器科)
- 正木 康史(金沢医科大学 血液免疫内科学)
- 石坂 信和(大阪医科大学 内科学講座)
- 妹尾 浩(京都大学 医学研究科 消化器内科学)
- 佐藤 俊哉(京都大学 医学研究科 医療統計学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
20,358,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
難病法改定に伴いIgG4関連疾患も指定難病に指定された。そのため難病指定のための診断基準、重症度分類の策定が必要となったため、本研究では、本疾患患者の難病指定のための診断基準、重症度分類を策定・改訂することを目的とした。
研究方法
1)IgG4関連疾患の各臓器別診断基準の策定
臓器部会を組織し、臓器別診断基準、重症度分類の策定・改訂を試みた。
2)IgG4関連心・動脈・後腹膜病変の診断基準の策定
「IgG4関連心・大動脈・後腹膜病変」分科会を設置して診断基準策定作業を本格化させた。
3)IgG4関連疾患の患者認定のための診断基準、重症度分類の策定
難病指定のための診断基準、重症度分類の精度を上る作業を継続した。
4)病因病態解明のための遺伝子、蛋白解析
病因病態解明のため、遺伝子、蛋白解析を一昨年から継続した。
5)IgG4関連疾患の新しい診断法の確立
IgG4関連疾患の診断法を確立するために、自己抗体の同定を行った。
6)ステロイド抵抗例、再発例に対する新しい治療法開発の試み
アメリカと共同で抗CD20抗体による臨床試験を立案し、治療効果評価のための国際基準(IgG4 Responder Index)の制定を行うこと とした。
臓器部会を組織し、臓器別診断基準、重症度分類の策定・改訂を試みた。
2)IgG4関連心・動脈・後腹膜病変の診断基準の策定
「IgG4関連心・大動脈・後腹膜病変」分科会を設置して診断基準策定作業を本格化させた。
3)IgG4関連疾患の患者認定のための診断基準、重症度分類の策定
難病指定のための診断基準、重症度分類の精度を上る作業を継続した。
4)病因病態解明のための遺伝子、蛋白解析
病因病態解明のため、遺伝子、蛋白解析を一昨年から継続した。
5)IgG4関連疾患の新しい診断法の確立
IgG4関連疾患の診断法を確立するために、自己抗体の同定を行った。
6)ステロイド抵抗例、再発例に対する新しい治療法開発の試み
アメリカと共同で抗CD20抗体による臨床試験を立案し、治療効果評価のための国際基準(IgG4 Responder Index)の制定を行うこと とした。
結果と考察
【結果】
1)IgG4関連疾患の各臓器別診断基準の策定
胆道疾患、膵疾患、涙腺唾液腺炎、眼疾患、腎疾患、呼吸器疾患の診断基準の再検討を行った。甲状腺疾患の診断基準の策定を継続した。
2)IgG4関連心・動脈・後腹膜病変の臨床調査、病態の分析及び診断基準の策定
IgG4関連疾患(大)動脈病変の診断・治療を検討する分科会をたちあげ臓器(組織)特異的な診断基準の最終的な策定作業を行った。
3)IgG4関連疾患の患者認定のための診断基準、重症度分類の策定
策定した重症度分類について運用上各臓器の間で若干の不整合があることが判明したため、改定作業を行った。
4)病因病態解明のための、遺伝子、蛋白解析
IgG4関連疾患患者880例のDNA検体を51施設から収集した。網羅的SNP解析、全エクソン解析、ダイレクトシーケンシングを行い、H LA領域(HLA-DRB1,HLA-A) とFcγRIIbに強い相関を認めた。
5)IgG4関連疾患の新しい診断法の確立
本疾患が自己免疫性疾患の特徴をもつことから自己抗体の検索を行った。その結果、患者血清中に病原性をもった自己抗体の存在を見出 しECMに対する自己抗体を発見した。本抗体の陽性率は自己免疫性膵炎患者の50%をしめており(対照群では1/120例)、極めて特異 性の高いものであった。
6)ステロイド抵抗例、再発例に対する新しい治療法開発のこころみ
アメリカと共同でリツキサンによる臨床試験を計画である。本臨床試験の効果判定のための国際的な「治療効果判定インデックス(IgG4 Responder Index)」について両国で検討しH29年2月に行われた第3回国際IgG4RDシンポで大筋を決定した。
【考察】
今回すでに診断基準が策定されている臓器別疾患に加えて、「内分泌疾患(甲状腺疾患、下垂体炎)」「IgG4関連心・動脈疾患」について診断基準策定を試みた。
IgG4関連疾患の病因病態は不明のままである。そこで、IgG4関連疾患850例について遺伝子解析を行い、HLA領域(DRB1, A領域)、及びFcγ受容体IIbに強い相関を認めた。HLAが関連遺伝子として見出されたことは自己免疫性疾患の可能性を示唆している。一方IgG4は抑制性の免疫グロブリンで、FcγR-IIbに親和性が強く、形質細胞は本Fc受容体のみを発現している。従って本多型がIgG4の結合やその作用にどのような影響があるのか興味が持たれる。
今回の研究で、IgG4関連疾患の約50%に、ECMに対する特異的な抗体が存在することが明らかとなった。本抗体は今後診断のGold Standardになると期待される。
今回アメリカとのリツキサン治療の共同臨床試験を三森班と共同で計画した。本試験では、確診例のみをリクルートする必要があるため今回、診断の特異度を高めるための新しい診断基準(IgG4 Responder Index)の策定をアメリカと共同でおこなった。
1)IgG4関連疾患の各臓器別診断基準の策定
胆道疾患、膵疾患、涙腺唾液腺炎、眼疾患、腎疾患、呼吸器疾患の診断基準の再検討を行った。甲状腺疾患の診断基準の策定を継続した。
2)IgG4関連心・動脈・後腹膜病変の臨床調査、病態の分析及び診断基準の策定
IgG4関連疾患(大)動脈病変の診断・治療を検討する分科会をたちあげ臓器(組織)特異的な診断基準の最終的な策定作業を行った。
3)IgG4関連疾患の患者認定のための診断基準、重症度分類の策定
策定した重症度分類について運用上各臓器の間で若干の不整合があることが判明したため、改定作業を行った。
4)病因病態解明のための、遺伝子、蛋白解析
IgG4関連疾患患者880例のDNA検体を51施設から収集した。網羅的SNP解析、全エクソン解析、ダイレクトシーケンシングを行い、H LA領域(HLA-DRB1,HLA-A) とFcγRIIbに強い相関を認めた。
5)IgG4関連疾患の新しい診断法の確立
本疾患が自己免疫性疾患の特徴をもつことから自己抗体の検索を行った。その結果、患者血清中に病原性をもった自己抗体の存在を見出 しECMに対する自己抗体を発見した。本抗体の陽性率は自己免疫性膵炎患者の50%をしめており(対照群では1/120例)、極めて特異 性の高いものであった。
6)ステロイド抵抗例、再発例に対する新しい治療法開発のこころみ
アメリカと共同でリツキサンによる臨床試験を計画である。本臨床試験の効果判定のための国際的な「治療効果判定インデックス(IgG4 Responder Index)」について両国で検討しH29年2月に行われた第3回国際IgG4RDシンポで大筋を決定した。
【考察】
今回すでに診断基準が策定されている臓器別疾患に加えて、「内分泌疾患(甲状腺疾患、下垂体炎)」「IgG4関連心・動脈疾患」について診断基準策定を試みた。
IgG4関連疾患の病因病態は不明のままである。そこで、IgG4関連疾患850例について遺伝子解析を行い、HLA領域(DRB1, A領域)、及びFcγ受容体IIbに強い相関を認めた。HLAが関連遺伝子として見出されたことは自己免疫性疾患の可能性を示唆している。一方IgG4は抑制性の免疫グロブリンで、FcγR-IIbに親和性が強く、形質細胞は本Fc受容体のみを発現している。従って本多型がIgG4の結合やその作用にどのような影響があるのか興味が持たれる。
今回の研究で、IgG4関連疾患の約50%に、ECMに対する特異的な抗体が存在することが明らかとなった。本抗体は今後診断のGold Standardになると期待される。
今回アメリカとのリツキサン治療の共同臨床試験を三森班と共同で計画した。本試験では、確診例のみをリクルートする必要があるため今回、診断の特異度を高めるための新しい診断基準(IgG4 Responder Index)の策定をアメリカと共同でおこなった。
結論
1) 各臓器別診断基準を策定した。
2) 甲状腺疾患、下垂体炎の暫定的診断基準、重症度分類を策定した。「心臓・大動脈・後腹膜病変」の診断基準、重症度分類の策定作業を行った。
3) 本疾患全体の重症度分類、臓器別重症度分類の整合性を点検した。
4) IgG4関連疾患特有の遺伝子を同定した。
5) 本疾患の約50%に特異抗体が存在した。
6) リツキサンによる国際共同臨床試験のための特異度の高い診断基準の策定を行った。
2) 甲状腺疾患、下垂体炎の暫定的診断基準、重症度分類を策定した。「心臓・大動脈・後腹膜病変」の診断基準、重症度分類の策定作業を行った。
3) 本疾患全体の重症度分類、臓器別重症度分類の整合性を点検した。
4) IgG4関連疾患特有の遺伝子を同定した。
5) 本疾患の約50%に特異抗体が存在した。
6) リツキサンによる国際共同臨床試験のための特異度の高い診断基準の策定を行った。
公開日・更新日
公開日
2017-04-21
更新日
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