文献情報
文献番号
201610016A
報告書区分
総括
研究課題名
神経皮膚症候群に関する診療科横断的検討による科学的根拠に基づいた診療指針の確立
課題番号
H26-難治等(難)-一般-049
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
錦織 千佳子(神戸大学 大学院医学研究科 内科系講座皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
- 佐谷 秀行(慶應義塾大学医学部先端医科学研究所遺伝子制御研究部門)
- 倉持 朗(埼玉医科大学医学部皮膚科)
- 太田 有史(東京慈恵会医科大学皮膚科)
- 筑田 博隆(群馬大学大学院医学系研究科整形外科)
- 古村 南夫(福岡歯科大学総合医学講座皮膚科)
- 吉田 雄一(鳥取大学医学部皮膚病態学分野)
- 松尾 宗明(佐賀大学医学部小児科)
- 舟崎 裕記(東京慈恵会医科大学整形外科)
- 今福 信一(福岡大学医学部皮膚科)
- 齋藤 清(福島県立医科大学医学部脳神経外科)
- 水口 雅(東京大学大学院医学系研究科発達医科学)
- 金田 眞理(大阪大学大学院医学系研究科皮膚科学)
- 須賀 万智(東京慈恵会医科大学疫学、予防医学、公衆衛生学)
- 森脇 真一(大阪医科大学医学部皮膚科学)
- 林 雅晴(東京都医学総合研究所脳発達・神経再生研究分野)
- 上田 健博(神戸大学医学部附属病院神経内科)
- 中野 英司(神戸大学大学院医学研究科内科系講座皮膚科学分野)
- 中野 創(弘前大学大学院医学研究科皮膚科学講座)
- 竹谷 茂(関西医科大学微生物学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
21,045,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者追加
研究分担者 中野創(平成28年11月2日以降)
研究分担者 竹谷茂(平成28年11月2日以降)
所属機関異動
研究分担者 筑田博隆
東京大学医学部附属病院(平成28年4月1日~平成29年1月31日)→群馬大学大学院医学系研究科(平成29年2月1日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
神経皮膚症候群は神経と皮膚に病変を生ずる難病で、神経線維腫症1型(NF1)、神経線維腫症2型(NF2)、 結節性硬化症(TSC)、色素性乾皮症(XP)が含まれるが、何れの疾患も多臓器病変であり、整容上の問題、機能障害、生命の危機などの多様性がある。NF1・NF2・TSCについては近年の病態解明の結果、シグナル伝達病という新しい概念で捉えられつつあり、その経路を制御する薬物治療の出現や、遺伝子診断技術の進歩など新知見が増え、その実体に応じた早期の診療ガイドラインの改定が望まれていた。XPについては昨年策定した診療ガイドラインの普及と啓発活動の充実、症例ならびに情報の集積が望まれる。さらに本年11月から神経皮膚症候群に加えられた遺伝性ポルフィリン症は、遺伝子診断が確定診断に必須となっているため新規症例ならびに診断未確定例を収集し、遺伝子変異の性状と臨床症状との関連を検討することが必要不可欠である。本疾患群は現時点で根治療法はなく、患者・家族の新治療法の開発に対する要望や社会的要請は強いので、本研究により患者の治療、ケア、QOLの改善に寄与する全国的な診療体制を築くことをめざした。
研究方法
本年度はNF1・NF2については研究分担者間での情報共有と相互の協力関係のもと、日常診療の現場での一助になるようなクリニカルクエスチョンを含む診療ガイドラインの改訂版を作成した。今まで疫学的な調査があまりなされてこなかった整形外科領域の病変についても、DPCを用いたビッグデータにより、より客観的な時代の推移、治療効果の推移なども評価を行い、それを改訂版に反映させた。小児NF1の精神発達障害の評価など、実質的な重症度分類に沿った診断に必要な情報を診療科横断的に討議しガイドラインの改訂版に盛り込んだ。NF2についても、807例の患者調査の結果と重症度分類と組み合わせることにより、今後の治療方法の評価と連動できるようにした。NF2については、齋藤班員が提案している治療アルゴリズム「治療の時期を逸しないように治療計画を立てる」方針とし、それを全国の主要大学と協力して進めるべく、平成28年10月に難病センターの診断・治療指針(医療従事者向け)を改訂し、今後の手術成績を、患者のoverallの生存率、予後、QOLについて前方視的に解析して今回のデータと比較検討した。
TSCについては、近年明らかとなったシグナル伝達病としての本疾患に対する治療法の変遷、重症度と薬剤使用についての基準も加味した診療ガイドラインの改訂を本疾患担当の研究分担者の共同作業で行ない、現在の医療現場の状況と世界の方向性に沿った診療ガイドラインの改訂と重症度分類を策定した。
XPについては、昨年策定した診療指針を学会を通じて紹介し周知と啓発に努めた。重症度スケールを用いた臨床評価を進めた。我が国におけるXPの現況を知るために患者が集積する神戸大学内での患者登録システムへの入力を進めた。重症度スコア2014を用いて神戸大学の症例で引き続き、経時的な変化を見た。
TSCについては、近年明らかとなったシグナル伝達病としての本疾患に対する治療法の変遷、重症度と薬剤使用についての基準も加味した診療ガイドラインの改訂を本疾患担当の研究分担者の共同作業で行ない、現在の医療現場の状況と世界の方向性に沿った診療ガイドラインの改訂と重症度分類を策定した。
XPについては、昨年策定した診療指針を学会を通じて紹介し周知と啓発に努めた。重症度スケールを用いた臨床評価を進めた。我が国におけるXPの現況を知るために患者が集積する神戸大学内での患者登録システムへの入力を進めた。重症度スコア2014を用いて神戸大学の症例で引き続き、経時的な変化を見た。
結果と考察
診療科横断的な研究班としての強みを生かして専門外からの疑問をクリニカルクエスチョンに対する回答として文献的に考察する形で作成し、現場の医師が使いやすいNF1診療ガイドライン改訂版となった。
XPの診療ガイドラインを策定により、XP の診断における地域格差が解消され、XP診療における標準化が進んだ。XPの重症度スケールを用いて過去に評価したものを統合して解析したところ、合計スコアはいずれの症例でも幼少期から年齢とともに増悪した。Section 1(日常生活動作)の大半の項目は幼少期から障害が存在したが、喉頭機能、寝返り動作、排泄機能については10歳前後まで障害なく経過した。Section 2(運動機能)においては、年齢とともに増悪を示した。Section 3(高次機能)においては、知的障害は幼少期から存在したが、意欲の減退は10歳代前半までは認めなかった。以上よりXP-A患者においていくつかの機能は、小児期には保たれる傾向がある。XP患者を施設内で登録し、データベース化する事を目的としてsecurity に配慮した患者登録システムを開発した。
遺伝性プロトポルフィリン症については、遺伝子診断と血中のポルフィリン値の測定、その関連性について検討した。
XPの診療ガイドラインを策定により、XP の診断における地域格差が解消され、XP診療における標準化が進んだ。XPの重症度スケールを用いて過去に評価したものを統合して解析したところ、合計スコアはいずれの症例でも幼少期から年齢とともに増悪した。Section 1(日常生活動作)の大半の項目は幼少期から障害が存在したが、喉頭機能、寝返り動作、排泄機能については10歳前後まで障害なく経過した。Section 2(運動機能)においては、年齢とともに増悪を示した。Section 3(高次機能)においては、知的障害は幼少期から存在したが、意欲の減退は10歳代前半までは認めなかった。以上よりXP-A患者においていくつかの機能は、小児期には保たれる傾向がある。XP患者を施設内で登録し、データベース化する事を目的としてsecurity に配慮した患者登録システムを開発した。
遺伝性プロトポルフィリン症については、遺伝子診断と血中のポルフィリン値の測定、その関連性について検討した。
結論
NF1、NF2,TSCの診療ガイドラインの改訂とXPの重症度分類の改訂を行なった。診療科横断的に統合的観点から各疾患の診療ガイドラインの改訂が新しい疾患概念、新しい治療薬などを含めた、現在の医療実体に合ったものとなった。XP患者の早期確定診断の地域格差が狭まる事により、適切な遮光始動の早期開始、ひいては皮膚癌発症の予防が可能となり、医療費抑制にも繋がる。
公開日・更新日
公開日
2017-06-02
更新日
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