新しい先天代謝異常症スクリーニング時代に適応した治療ガイドラインの作成および生涯にわたる診療体制の確立に向けた調査研究

文献情報

文献番号
201610014A
報告書区分
総括
研究課題名
新しい先天代謝異常症スクリーニング時代に適応した治療ガイドラインの作成および生涯にわたる診療体制の確立に向けた調査研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-047
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
中村 公俊(熊本大学 医学部附属病院 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 窪田 満(国立成育医療研究センター 総合診療部)
  • 新宅 治夫(大阪市立大学 大学院医学研究科 発達小児医学分野)
  • 呉 繁夫(東北大学 大学院医学系研究科 小児病態学分野)
  • 小国 弘量(東京女子医科大学 小児科学)
  • 大浦 敏博(東北大学 大学院医学系研究科 小児病態学分野)
  • 高柳 正樹(帝京平成大学 地域看護部 看護学科)
  • 大竹 明(埼玉医科大学 小児科)
  • 山口 清次(島根大学 医学部 小児科)
  • 杉江 秀夫(常葉大学 保健医療学部 )
  • 深尾 敏幸(岐阜大学 大学院医学系研究科 小児病態学)
  • 奥山 虎之(国立成育医療研究センター 臨床検査部)
  • 羽田 明(千葉大学 大学院医学研究院 公衆衛生学)
  • 西野 一三(国立精神・神経医療研究センター神経研究所 疾病研究第一部)
  • 青天目 信(大阪大学 大学院医学系研究科 小児科学)
  • 児玉 浩子(帝京平成大学 健康メディカル学部 健康栄養学科)
  • 高橋 勉(秋田大学 大学院医学系研究科 小児科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
13,877,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は希少疾患である先天代謝異常症の診療(診断および治療)をガイドラインとして標準化することを目的としている。ガイドラインを作成するとともに、標準化された診療ガイドラインを臨床研究、新薬治験研究に役立てることを目指している。同時に我が国から学会誌・冊子・ホームページ等での情報発信をおこなうことを目標に掲げている。
本研究班においては3年間の研究の目標として、
①追加の診療ガイドラインの策定
②診療ガイドラインをもちいた疾患の診断と治療の現状についての調査研究を進める
③成人期の診療体制の整備に向けた調査と方針の立案
を挙げた。
これらの研究を遂行するにあたり、これまでの平成24-25年度の研究(H24-難治等(難)-一般-071)で策定してきた診断基準をあわせて総合的な診療基準作りを達成してきた。対象とした31疾患(結果と考察)について既に診療ガイドラインを作成し、新たに、リジン尿性蛋白不耐症、先天性葉酸吸収不全メンケス病、オクシピタル・ホーン症候群についてのガイドラインを策定した。
研究方法
平成28年度の研究では
①未達成の疾患のガイドラインの策定および学会での承認
②策定したガイドラインを用いた診断と治療の現状についての実態調査
③成人期の診療体制の整備
④先天代謝異常症患者登録システムの継続と利用
について研究を行った。
ガイドラインの策定では班会議と日本先天代謝異常学会ガイドライン策定委員会が共同して作業を行った。

結果と考察
(1)ガイドラインの策定について
対象とした疾患の中で、フェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症、シトリン欠損症、尿素サイクル異常症、メチルマロン酸血症、プロピオン酸血症、イソ吉草酸血症、HMG-CoAリアーゼ欠損症、メチルクロトニルグリシン尿症、複合カルボキシラーゼ欠損症、β-ケトチオラーゼ欠損症、グルタル酸血症1型、グルタル酸尿症2型、極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症、三頭酵素欠損症、中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症、全身性カルニチン欠乏症(OCTN2異常症)、カルニチン回路異常症、糖原病、瀬川病、セピアプテリン還元酵素(SR)欠損症、芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)欠損症、メチルグルタコン酸尿症、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ (PEPCK) 欠損症、スクシニル-CoA:3-ケト酸CoAトランスフェラーゼ(SCOT)欠損症、ミトコンドリアHMG-CoA合成酵素欠損症、シスチン尿症、高メチオニン血症(メチオニンアデノシルトランスフェラーゼ欠損症)、非ケトーシス型高グリシン血症については既に診療ガイドラインを策定した。さらに、リジン尿性蛋白不耐症、先天性葉酸吸収不全メンケス病、オクシピタル・ホーン症候群についてのガイドラインを策定した。
(2)診療ガイドラインをもちいた疾患の診断と治療の現状についての調査研究
ビオプテリン代謝異常症、シトリン欠損症、高乳酸血症・ミトコンドリア異常症、脂質代謝異常症、尿素サイクル異常症について、診断と治療の現状について調査を行った。
(3)移行期医療について
成人期に至った患者状況の調査結果を踏まえて、成人患者への診療体制提供の在り方、および生涯にわたる生活支援の在り方についての調査研究を開始した。
(4)先天代謝異常症の患者登録システムであるJaSMInの発展への取り組みを継続し、116名の新たな患者登録がなされた。 
ガイドライン策定上の問題点はいくつかある。まず、先天代謝異常症はどの疾患をとっても、極めて稀である一方で、疾患数が極めて多い。したがって、エビデンスレベルの高い情報はほとんどない。また、これらの疾患の診療に従事する専門医師の数は少ない。したがって、コンセンサスを共有すべき専門家数が少ない。海外における先天代謝異常症のガイドライン作成も、つい最近になって進展を見せている状況である。希少な疾患の診療においてはその特殊な背景を考え、いかに医学的に妥当性のあるガイドラインを作成するかという基本的な問題を考えながらガイドライン作成を進める必要がある。
結論
先天代謝異常症の疾患数は多いが、これらの多数の疾患の中から、既に作成されたガイドラインに加えて、リジン尿性蛋白不耐症、先天性葉酸吸収不全メンケス病、オクシピタル・ホーン症候群についてのガイドラインを策定した。日本先天代謝異常学会ガイドライン作成委員会承認の後、理事会において承認予定である。

公開日・更新日

公開日
2017-06-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201610014B
報告書区分
総合
研究課題名
新しい先天代謝異常症スクリーニング時代に適応した治療ガイドラインの作成および生涯にわたる診療体制の確立に向けた調査研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-047
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
中村 公俊(熊本大学 医学部附属病院 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 窪田 満(国立成育医療研究センター 総合診療部)
  • 新宅 治夫(大阪市立大学 大学院医学研究科 発達小児医学分野)
  • 呉 繁夫(東北大学 大学院医学系研究科 小児病態学分野)
  • 小国 弘量(東京女子医科大学 小児科学)
  • 大浦 敏博(東北大学 大学院医学系研究科 小児病態学分野)
  • 高柳 正樹(帝京平成大学 地域看護部 看護学科)
  • 大竹 明(埼玉医科大学 小児科)
  • 山口 清次(島根大学 医学部 小児科)
  • 杉江 秀夫(常葉大学 保健医療学部)
  • 深尾 敏幸(岐阜大学 大学院医学系研究科 小児病態学)
  • 奥山 虎之(国立成育医療研究センター 臨床検査部)
  • 羽田 明(千葉大学 大学院医学研究院 公衆衛生学)
  • 西野 一三(国立精神・神経医療研究センター神経研究所 疾病研究第一部)
  • 青天目 信(大阪大学 大学院医学系研究科 小児科学)
  • 児玉 浩子(帝京平成大学 健康メディカル学部 健康栄養学科)
  • 高橋 勉(秋田大学 大学院医学系研究科 小児科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は希少疾患である先天代謝異常症の診療(診断および治療)をガイドラインとして標準化することを目的としている。ガイドラインを作成するとともに、標準化された診療ガイドラインを臨床研究、新薬治験研究に役立てることを目指している。同時に我が国から学会誌・冊子・ホームページ等での情報発信をおこなうことを目標に掲げている。
本研究班においては3年間の研究の目標として、
①新生児マススクリーニング対象疾患等の先天代謝異常症の診療ガイドラインの策定
②診療ガイドラインをもちいた疾患の診断と治療の現状についての調査研究
③成人期の診療体制の整備に向けた調査と方針の立案
を挙げた。
これらの研究を遂行するにあたり、総合的な診療ガイドライン作りを達成した。ここで対象とした35疾患(結果と考察)についてのガイドラインを策定した。さらに、診療ガイドラインをもちいた疾患の診断と治療の現状についての調査研究、移行期医療についての検討、先天代謝異常症の患者登録システムであるJaSMInの発展などに取り組んだ。
研究方法
3年間の研究においては、
①対象となる疾患のガイドラインの策定および学会での承認
②策定したガイドラインを用いた診断と治療の現状についての実態調査
③成人期の診療体制の整備
④先天代謝異常症患者登録システムの継続と利用
について研究を行った。ガイドラインの策定では本研究班と日本先天代謝異常学会ガイドライン策定委員会が共同して作業を行った。

結果と考察
(1)ガイドラインの策定について
対象とした疾患の中で、フェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症、ガラクトース血症、シトリン欠損症、尿素サイクル異常症、メチルマロン酸血症、プロピオン酸血症、イソ吉草酸血症、HMG-CoAリアーゼ欠損症、メチルクロトニルグリシン尿症、複合カルボキシラーゼ欠損症、β-ケトチオラーゼ欠損症、グルタル酸血症1型、グルタル酸尿症2型、極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症、三頭酵素欠損症、中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症、全身性カルニチン欠乏症(OCTN2異常症)、カルニチン回路異常症、糖原病、瀬川病、セピアプテリン還元酵素(SR)欠損症、芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)欠損症、メチルグルタコン酸尿症、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ (PEPCK) 欠損症、スクシニル-CoA:3-ケト酸CoAトランスフェラーゼ(SCOT)欠損症、ミトコンドリアHMG-CoA合成酵素欠損症、シスチン尿症、高メチオニン血症(メチオニンアデノシルトランスフェラーゼ欠損症)、非ケトーシス型高グリシン血症、リジン尿性蛋白不耐症、先天性葉酸吸収不全メンケス病、オクシピタル・ホーン症候群の35疾患についての診療ガイドラインを作成した。
(2)診療ガイドラインをもちいた疾患の診断と治療の現状についての調査研究
ビオプテリン代謝異常症、シトリン欠損症、高乳酸血症・ミトコンドリア異常症、脂質代謝異常症、尿素サイクル異常症について、診断と治療の現状について調査を行ない、それぞれの疾患の診断と治療の問題点や成人期にわたる診療の課題が明らかになった。
(3)移行期医療について
成人期に至った患者状況の調査結果を踏まえて、成人患者への診療体制提供の在り方、および生涯にわたる生活支援の在り方についての調査研究を行った。
(4)先天代謝異常症の患者登録システムであるJaSMInの発展への取り組みを継続し、2014年10月以降に538名の新たな患者登録がなされ、2016年1月末までの登録総数は1,251名、疾患数は約50疾患となった。また、第3回及び第4回の先天代謝異常症患者会フォーラムを開催するなど、患者会活動支援を行った。
海外における先天代謝異常症のガイドライン作成も、最近になって進展を見せている。たとえば、欧州では2012年に尿素サイクル異常症の診断治療基準が、初めて関連する学会の手によって作成された。しかし高いレベルのエビデンスに基づいた治療基準は達成されていない。
結論
既に作成されたガイドラインに加えて、リジン尿性蛋白不耐症、先天性葉酸吸収不全メンケス病、オクシピタル・ホーン症候群についてのガイドラインを策定した。日本先天代謝異常学会ガイドライン作成委員会の承認の後、学会承認されている。さらに、診療ガイドラインをもちいた疾患の診断と治療の現状についての調査研究、移行期医療についての検討、先天代謝異常症の患者登録システムであるJaSMInの発展などに取り組んだ。

公開日・更新日

公開日
2017-06-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201610014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
これまでに策定したガイドラインを用いた診断と治療の現状についての実態調査では、ビオプテリン代謝異常症、シトリン欠損症、高乳酸血症・ミトコンドリア異常症、脂質代謝異常症、尿素サイクル異常症について、診断と治療の現状について調査を行った。尿素サイクル異常症の診断・治療の実態や、シトルリンを用いた新規治療など、その多くを学術論文として発表した。
臨床的観点からの成果
成人期の診療体制の在り方に関する具体的な診療体制の供給に関する検討を進めた。小児期から成人までの幅広い年齢の患者を対象とした診断と治療に関する診療体制と、わが国で利用可能な診断項目などをガイドラインに記載した。そして、全国の先天代謝異常症診療の均質化を目指した。成人期への移行問題では実態調査、患者登録制度支援を行った。さらに先天代謝異常症の患者登録システムを継続し、2014年10月以降に538名の新たな患者登録がなされ、登録総数は1,251名、疾患数は約50疾患となった。
ガイドライン等の開発
先天代謝異常症のなかでも新生児マススクリーニング対象疾患とその関連疾患を中心として、アミノ酸代謝異常症、有機酸代謝異常症、脂肪酸代謝異常症、尿素サイクル異常症、ケトン体代謝異常症、糖原病、金属代謝異常症などに含まれる、35疾患の診療ガイドラインを作成した。その31疾患は日本先天代謝異常学会の承認を得たガイドラインであり、残りの4疾患についても承認手続き中である。それらの中の29疾患は指定難病の対象となっている先天代謝異常症である。
その他行政的観点からの成果
H28年12月には、特殊ミルクの安定供給に向けたヒアリングと、特殊ミルク供給状況の整理に対応し、H29年3月には指定難病へのICDコード付与について21疾病の問い合わせに対応した。
その他のインパクト
第3回先天代謝異常症患者会フォーラム:2014年11月9日(日) TKPガーデンシティ品川、第4回先天代謝異常症患者会フォーラム2015年11月29日(日) 東京慈恵会医科大学、を開催した。それぞれ、約50の患者・家族、約15団体の患者・家族会が参加した。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
51件
その他論文(和文)
49件
その他論文(英文等)
32件
学会発表(国内学会)
101件
学会発表(国際学会等)
35件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-06-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201610014Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
18,039,000円
(2)補助金確定額
17,980,000円
差引額 [(1)-(2)]
59,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,478,891円
人件費・謝金 531,350円
旅費 4,857,549円
その他 1,951,024円
間接経費 4,162,000円
合計 17,980,814円

備考

備考
59,000円 返還

公開日・更新日

公開日
2018-02-19
更新日
-