非肥満者に対する保健指導方法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201608008A
報告書区分
総括
研究課題名
非肥満者に対する保健指導方法の開発に関する研究
課題番号
H27-循環器等-一般-009
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
宮本 恵宏(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 循環器病統合情報センター 予防健診部・予防医学・疫学情報部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡村 智教(慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学)
  • 岡山 明(合同会社生活習慣病予防研究センター )
  • 磯 博康(大阪大学大学院医学系研究科社会環境医学講座公衆衛生学)
  • 三浦 克之(滋賀医科大学医学部社会医学講座公衆衛生学部門)
  • 田中 太一郎(東邦大学・健康推進センター)
  • 小川 佳宏(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 荒木田 美香子(国際医療福祉大学小田原保健医療学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
6,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国では非肥満者を対象に具体的な保健指導方法をまとめたガイドラインはこれまでない、本研究班では実用性の高い非肥満者に対する保健指導ガイドラインを作成することを目的とする。
研究方法
「特定保健指導の対象とならない非肥満の心血管疾患危険因子保有者に対する生活習慣改善指導ガイドライン」の作成にあたり、構成を以下の通りとした。
1)わが国の疫学研究によるエビデンス
①危険因子を有する非肥満者の心血管疾患発症リスク
②非肥満者での、生活習慣への介入による心血管疾患危険因子の改善効果:
2)各心血管疾患危険因子の、改善すべき生活習慣、その優先順位とエビデンス
3)各生活習慣の具体的な改善方法
結果と考察
1)わが国の疫学研究によるエビデンス
①危険因子を有する非肥満者の心血管疾患発症リスク:
 3つのコホート研究のメタ解析において、肥満の有無にかかわらず、非肥満かつ危険因子なし群に比べて、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙習慣があると、心血管疾患の発症リスクは上昇した。特に、血圧では、非肥満群は肥満群に比べ、より軽度の高血圧で心血管疾患の発症リスクが上昇し、人口寄与危険割合(PAF)も大きかった。非肥満者でも危険因子が集積すれば、心血管疾患の発症リスクは上昇し、人口寄与危険割合も高いことが明らかとなった。
②非肥満者での、生活習慣への介入による心血管疾患危険因子の改善効果:
介入研究のサブ解析を行った。非肥満群、肥満群ともに集中指導群で、血圧値の低下がより大きい傾向がみられた。脂質においても、肥満の有無にかかわらず、中性脂肪値、LDLコレステロール値、総コレステロール値が、介入群では対照群に比べて低下していた。BMI25未満の対象者では、介入群ではHbA1cが0.3%以上減少した割合が対照群に比べ有意に高く、空腹時血糖が10mg/dL以上改善した人の割合も高い傾向があった。BMI25未満の男性で、介入群では対照群に比べ禁煙率が高く、喫煙に対するポピュレーションアプローチは肥満群、非肥満群の双方に有効であった。このように、非肥満者で、いずれの危険因子についても生活習慣への介入による改善効果がみられた。
2)各心血管疾患危険因子の、改善すべき生活習慣、その優先順位とエビデンス:
 保健指導の支援者として望ましい姿勢を記載した。血圧、血糖、脂質異常、喫煙の別に、これらを改善するための生活習慣を列挙し、危険因子ごとに改善すべき生活習慣の優先度を表に示した。また血圧、血糖、脂質異常については、生活習慣改善を指導する際の要点を可能な限りエビデンスも交えながら述べ、保健指導上重要な生活習慣改善の概要を把握できるように記載した。記載にあたっては各学会ガイドラインと矛盾のない内容になるよう留意した。
3)各生活習慣の具体的な改善方法:
各生活習慣の具体的な改善法を記載した。

<「特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会」「標準的な健診・保健指導プログラム改訂作業班」との連携>
 第8回特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会において本研究班で検討したわが国の非肥満者に関する疫学研究の結果や、作成中であったガイドライン原案の方向性について報告した。ガイドライン原案完成後の2017年2月16日の「標準的な健診・保健指導プログラム改訂作業班の第3回保健指導班」へは、本研究班が作成したガイドラインの抜粋を、今後改訂される標準的な健診・保健指導プログラムへの掲載を検討するため提出した。

 非肥満者は特定保健指導の対象ではないが、現行の「標準的な健診・保健指導プログラム改訂版」においても、非肥満者での危険因子の改善が重要であることは記載されており、本研究班が作成したガイドラインを掲載するなど、保健指導の現場が非肥満者への保健指導にも積極的に取り組める環境が整備されることが望まれる。
 本研究班ガイドラインの後半では、非肥満者の保健指導において留意すべき点を含め、保健指導の具体的方法を、危険因子からの観点と、生活習慣の観点から示した。各保険者が自らの現状に応じ、実行可能なものを選択して取り組む過程で参考になると考える。また本ガイドラインは、経験の浅い保健指導支援者が、保健指導の支援者となる姿勢や、指導の具体的内容を学ぶ一助になると考えている。

結論
 特定健診の対象ではないが、非肥満者でも心血管疾患危険因子の改善が重要である点は、現行の「標準的な健診・保健指導プログラム改訂版」でも述べられている通りである。国民全体の健康度を考える上で、肥満者に加え、非肥満者にも保健指導を実施する重要性を、改めて認識し実行する必要があり、本研究班のガイドラインが保健指導の現場で活用されることが望まれる。

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201608008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,400,000円
(2)補助金確定額
8,400,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,857,013円
人件費・謝金 2,134,389円
旅費 652,610円
その他 819,902円
間接経費 1,938,000円
合計 8,401,914円

備考

備考
3月人件費(1名)の支出に際しては当初の予算額より、最終精算した折に¥1,914の端数がでたため差異が生じました。(自己資金:\1,912、預金利息:\2)

公開日・更新日

公開日
2017-10-19
更新日
-