文献情報
文献番号
201608005A
報告書区分
総括
研究課題名
生活習慣病やアレルギー疾患の新しい予防法確立に資する健康な日本人の腸管免疫と腸内細菌データベースの構築に関する疫学研究
課題番号
H27-循環器等-一般-004
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
宮地 元彦(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 健康増進研究部)
研究分担者(所属機関)
- 國澤純(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 ワクチンマテリアルプロジェクト)
- 水口賢司(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 バイオインフォマティクスプロジェクト)
- 窪田哲也(理化学研究所 代謝恒常性研究チーム)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
食事・栄養状況や身体活動・運動などの生活習慣と免疫疾患・生活習慣病との関係に関するコホート研究から得られたヒト試料を対象に、生活習慣病やアレルギー疾患の新しい予防法確立に資する健康な日本人の腸管免疫と腸内細菌データベースを構築し、生活習慣、腸内細菌叢、腸管免疫、疾患発症との相互関係を明らかにすることを目的とする。
平成28年度の具体的な研究目的は以下のとおりであった。
① 疫学研究の進捗状況と排便状況と腸内細菌叢との関係(宮地)
② 採便・運搬法の標準化と腸管免疫と腸内細菌叢の分析(國澤)
③ 脂肪酸や胆汁酸のメタボローム解析(窪田)
④ データベースの構築(水口)
平成28年度の具体的な研究目的は以下のとおりであった。
① 疫学研究の進捗状況と排便状況と腸内細菌叢との関係(宮地)
② 採便・運搬法の標準化と腸管免疫と腸内細菌叢の分析(國澤)
③ 脂肪酸や胆汁酸のメタボローム解析(窪田)
④ データベースの構築(水口)
研究方法
大規模介入研究に参加する20~80歳までの男女を研究対象者とした(宮地)。また、腸内細菌叢に関連する生活習慣調査・身体測定を実施した(宮地)。先端解析技術を用いて糞便の腸内細菌叢や免疫指標、血液サンプルの脂肪酸や胆汁酸を網羅的に分析する(國澤、窪田)。それらをデータベース化しバイオインフォマティクス手法を用いて解析する(水口)。
結果と考察
糞便・排便状況調査票、採便法および便輸送方法を確立した。2017年3月末日現在において、408名の研究参加同意が得られ調査・測定を終えた。また、糞便採取・運搬ならびに腸内細菌分析法が確立し、それに基づき385名のシークエンスが終了した。血液の307名の脂肪酸と110名の胆汁酸の分析が終了した(窪田)。これらを格納するデータベースの基本構造と分析ソフトウェアが完成した(水口)。それらに基づき、以下の結果が得られた。
① 腸内細菌の多様性と便の硬さや排便頻度が関係することが明らかとなった。
② 採便や保存条件の標準化のための検討により、①採便部位によって菌叢が異なることがある、②採便量が過剰である場合や保存液が希釈された場合、水分量が少なく硬い便の場合では、保存液による菌の不活化が不十分となる、③保存期間が長いと一部の菌の割合が変化する、④DNA抽出の前に遠心分離などの前処理を行うと菌叢解析の結果が変化する、ことが明らかとなった。
③ 脂肪酸や胆汁酸のメタボローム解析の結果、男性では善玉の脂肪酸であるω3系が低く、ω6/ω3系の比率は男性の方が有意に高かった。年齢を3群に分類すると若い人ほどω6系が高く、ω6/ω3系の比率は年齢の増加とともに有意に低下していることが明らかとなった。測定できた検体に関して、胆汁酸について男女別に検討したところ一次胆汁酸が男性で有意に増加していた。
④ 構築したデータベースにNEXISコホート20名のデータを格納して統合した。データベースを用いて、腸内細菌叢と様々な身体データや生活習慣、腸管免疫に関わる因子との関連を対話的に解析できるソフトウェアを開発した。
① 腸内細菌の多様性と便の硬さや排便頻度が関係することが明らかとなった。
② 採便や保存条件の標準化のための検討により、①採便部位によって菌叢が異なることがある、②採便量が過剰である場合や保存液が希釈された場合、水分量が少なく硬い便の場合では、保存液による菌の不活化が不十分となる、③保存期間が長いと一部の菌の割合が変化する、④DNA抽出の前に遠心分離などの前処理を行うと菌叢解析の結果が変化する、ことが明らかとなった。
③ 脂肪酸や胆汁酸のメタボローム解析の結果、男性では善玉の脂肪酸であるω3系が低く、ω6/ω3系の比率は男性の方が有意に高かった。年齢を3群に分類すると若い人ほどω6系が高く、ω6/ω3系の比率は年齢の増加とともに有意に低下していることが明らかとなった。測定できた検体に関して、胆汁酸について男女別に検討したところ一次胆汁酸が男性で有意に増加していた。
④ 構築したデータベースにNEXISコホート20名のデータを格納して統合した。データベースを用いて、腸内細菌叢と様々な身体データや生活習慣、腸管免疫に関わる因子との関連を対話的に解析できるソフトウェアを開発した。
結論
4つの研究班の成果は、研究申請時に掲げたマイルストーンに概ね到達した。最終年度となる平成29年度は、目標とした参加者600名の確保、全参加者の糞便の腸内細菌叢・腸管免疫指標、血液の脂肪酸・胆汁酸の分析の完了、データベースへの全データの格納と分析、論文の執筆を目標として研究を遂行する。
公開日・更新日
公開日
2017-06-23
更新日
-