妊産婦及び乳幼児の栄養管理の支援のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201606009A
報告書区分
総括
研究課題名
妊産婦及び乳幼児の栄養管理の支援のあり方に関する研究
課題番号
H28-健やか-一般-003
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
楠田 聡(東京女子医科大学 母子総合医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 伊東宏晃(浜松医科大学 産婦人科)
  • 鈴木俊治(葛飾赤十字産院 産科)
  • 清水俊明(順天堂大学大学院医学研究科 小児思春期発達学)
  • 塙 佳生(日本小児科医会理事)
  • 堤 ちはる(相模女子大学 健康栄養学科)
  • 福井トシ子(日本看護協会 常任理事)
  • 田村文誉(日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック 口腔リハビリテーション科)
  • 米本直裕(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 精神薬理研究部 )
  • 野村恭子(帝京大学医学部 衛生学公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
7,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「妊産婦のための食生活指針」、「授乳・離乳の支援ガイド」が作成後約10年が経過したことから、最新の科学的知見を収集して検証し、現行の指針およびガイドの改正案の提言を行う。
研究方法
1)「妊産婦のための食生活指針」については、妊婦の体格別の妊娠中の推奨体重増加量の妥当性および改定の必要性について検討。
 方法は、文献の系統的検索のためにクリニカルクエッション(CQ)を設定し、CQ に合致するPICOを作成し、PICOを基にキーワードを用いて国内外の文献を過去10年検索した。検索された論文は構造化抄録を作成し、その妥当性を検証した。一方、論文検索とは別にわが国で実施されたコホート研究の結果を分析し、新生児の予後からみた妊婦の推奨体重増加量を計算した。
CQ1.1母子の予後からみた妊娠中の推奨体重増加量は?
CQ1.2新生児の予後からみた妊婦の体格別の妊娠中の推奨体重増加量は?
CQ1.3 母体の至適栄養は?
2)「授乳・離乳の支援ガイド」についても同様に検討した。
CQ2.1正期産児に母乳栄養を行うと児のアレルギー疾患を予防できるか?
CQ2.2正期産児に母乳栄養を行うと児のメタボリック症候群を予防できるか?
CQ2.3母乳育児は母親の育児不安を低減できるか?
CQ2.4母乳栄養は消化管機能を改善させるか?
CQ3.1正期産児に完全母乳栄養を行うと児の神経発達が促進されるか?
CQ3.2完全母乳栄養はビタミンK欠乏症の頻度を上昇させるか?
CQ4.1妊娠中の食事制限はアレルギーを予防するか?
CQ4.2離乳食の開始時期を早める/遅らせることでアレルギー疾患を予防できるか?
CQ 4.3食物アレルギーは児の発育・発達に影響するか?
CQ 4.4食物アレルギーとスキンケア(保湿)の関係は?
CQ4.5プロバイオティクスが湿疹の発症リスクを下げるか?
CQ5.1母乳栄養中の摂取禁忌食品あるいは薬物は?
CQ5.2早産児または低出生体重児での母乳栄養は正期産児と同等の効果があるか?
CQ5.3母子同室が母乳育児推進に繋がるか?
CQ5.4混合栄養は育児不安に繋がるか?
CQ6.1早産児の離乳食開始はいつごろが良いか?
CQ6.2発達障害児への離乳食の進め方は?
CQ6.3摂食機能と離乳食の遅れの関係は?
3. 検索文献の質の評価については、PRISM声明、AMSTAR法を用いた。
結果と考察
1.妊娠前のBMIによって妊婦の体格をやせ、普通、肥満と三区分して評価してきたが、今回の最新の文献検索および国内コホート研究の検証では、明確に変更すべき課題は抽出されなかった。したがって、当面は現状の3区分を継続するのが望ましい。妊娠中の推奨体重増加量については、妊娠高血圧症候群の発症を予防するための基準が存在することが現状の混乱を招く要因となっている。一方、「健やか親子21」進検討会で提唱された妊娠中の推奨体重増加量が現状の基準として適切であるかどうかについても検討する必要がある。しかし、報告論文および国内コホート研究報告を用いて検討したが、研究対象がハイリスク妊婦である、研究地域により妊婦の背景因子が異なる等の課題があり、新たに推奨体重増加量を提唱できるだけの根拠が揃わなかった。以上のことから、妊婦の体格区分および推奨体重増加量については現行のガイドを踏襲するのが妥当と思われた。
2.母乳栄養推進の方針の下、以下の点について正確に言及する必要性がある。
○母乳栄養のアレルギー疾患予防効果は限定的
○母乳栄養には将来の肥満発症を抑える
○母親のうつ徴候と母乳栄養期間短縮の関連について認識する
○母乳栄養児と混合栄養児における神経発達においては、有意な差を認めない
○授乳中の薬剤摂取に関する情報は既存のシステムを利用
○従来通り早期から母子接触が母子の愛着形成、母乳育児の促進に寄与する
○混合栄養状態で母親の不安が一番強い
○アレルギー疾患予防のために母親に抗原の回避を指導する必要はない
○離乳食の開始時期は現行の生後5~6か月
○早期の離乳食開始が肥満発症リスクとなる
○食物アレルギー発症予防には、離乳開始や特定の食物を与える時期を遅らせない
○早産児の離乳食の開始は修正月齢6か月頃
○離乳食の開始時期と咀嚼機能の獲得には直接の関係はない
結論
1.体格別の妊娠中の推奨体重増加量については、現行案を変更すべき最新の科学的根拠は見いだせなかった。
2.母乳栄養の推奨とともに、栄養法に関わらず育児支援が重要であること、母乳栄養の効果には限界があること、栄養とアレルギー疾患の関係を最新の科学的根拠を示して説明すること、離乳食の開始時期は変更する必要はないが進め方に関してより詳細に説明すること、等が改定内容として必要。

公開日・更新日

公開日
2017-06-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201606009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,000,000円
(2)補助金確定額
9,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,845,534円
人件費・謝金 2,765,017円
旅費 878,947円
その他 911,834円
間接経費 1,600,000円
合計 9,001,332円

備考

備考
報告書の印刷費が少しオーバーしてしまったため

公開日・更新日

公開日
2018-06-01
更新日
-