出生前診断における遺伝カウンセリングの実施体制及び支援体制のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201606003A
報告書区分
総括
研究課題名
出生前診断における遺伝カウンセリングの実施体制及び支援体制のあり方に関する研究
課題番号
H26-健やか-一般-003
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
小西 郁生(京都大学 医学研究科器官外科学婦人科学産科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 重人(京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻)
  • 三宅 秀彦(京都大学医学部附属病院 遺伝子診療部)
  • 伊尾 紳吾(京都大学大学院医学研究科 器官外科学講座)
  • 久具 宏司(東京都立墨東病院)
  • 平原 史樹(独立行政法人国立病院機構横浜市南西部地域中核病院 横浜医療センター)
  • 増崎 英明(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 左合 治彦(国立成育医療研究センター)
  • 高田 史男(北里大学大学院医療系研究科臨床遺伝医学講座)
  • 鈴森 伸宏(名古屋市立大学大学院医学研究科産科婦人科)
  • 吉橋 博史(東京都立小児総合医療センター臨床遺伝科)
  • 佐々木 愛子(国立成育医療研究センター)
  • 福嶋 義光(信州大学医学部遺伝医学・予防医学講座)
  • 関沢 明彦(昭和大学医学部産婦人科学講座)
  • 中込 さと子(山梨大学大学院総合研究部)
  • 澤井 英明(兵庫医科大学)
  • 山内 泰子(川崎医療福祉大学・医療福祉学部)
  • 山田 崇弘(北海道大学大学院医学研究科 総合女性医療システム学講座)
  • 鮫島 希代子(独立行政法人国立病院機構 南九州病院)
  • 早田 桂(岡山大学病院)
  • 斎藤加代子(東京女子医科大学附属遺伝子医療センター)
  • 松原 洋一(国立成育医療研究センター)
  • 福島 明宗(岩手医科大学医学部臨床遺伝学科)
  • 金井 誠(信州大学医学部保健学科)
  • 小笹 由香(東京医科歯科大学医学部附属病院)
  • 池田 真理子(谷口 真理子)(神戸大学医学部)
  • 浦野 真理(東京女子医科大学附属遺伝子医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
出生前診断における遺伝カウンセリングの実施体制及び支援体制のあり方を研究することである。
研究方法
この目的の達成のために,3分科会を組織して研究を行った.分科会ごとに研究を実施しつつ,年2,3回の全体会議を開催し,全体の意思統一を図った.3年計画の最終年度には,平成28年10月5日にシンポジウム「ダウン症候群から考える日本の教育・就労・福祉」を,同年12月17日に教育シンポジウム「出生前診断と診療支援体制の現状と将来展望」を開催した.
結果と考察
 【第1分科会】出生前診断の実態を把握するための基盤構築:本邦における出生前診断の全体像を把握するための体制構築が必要と考えられるため,登録システムの開発を目指した.具体的な登録システムソフトウェアを作成し,出生前検査を実施する国内のボランティア医療機関で試験運用とその使用感調査を行い,さらに改良を加えた.この登録システムを利用し, 今後の出生前診断体制構築に関する提言を作成した.
 【第2分科会】一般産科診療から専門レベルに至る出生前診断に関する診療レベルの向上:全国の産科診療における遺伝診療の標準化のため,出生前診断に関する遺伝カウンセリングに必要な点を診療レベルごとに明確化し,手引きおよび診療補助ツールの作成を目指した.久具班の解析結果の一部から,産科一次施設における出生前検査での説明内容が不足している可能性が示唆されたため,産科一次施設で利用可能な情報提供ツール(リーフレット)作成を初年度より開始し,平成27年度にはプロトタイプのリーフレットを作成し,使用感等の調査を行った.平成28年度はこの結果を踏まえ,日本語版・英語版リーフレットを完成させ,広く活用していただくためにその使用上の注意とともにホームページに掲載して公開した.さらに本リーフレットは遺伝カウンセリングへの導入という位置付けとなるため,その受け皿としての地域における二次,三次遺伝カウンセリング実施施設データベースを作成した.産科一次施設からスムーズに遺伝カウンセリングへアプローチできるようにホームページにおける公開を行った.
 【第3分科会】相談者および当事者の支援体制に関わる制度設計:ダウン症候群を持つ人から本人の自己認識や生活の実感を,また,その家族からは,教育・就労・福祉の実情を調査した.アンケートに回答したダウン症候群を持つ人の多くは高校卒業後に就労しているが,収入の問題が存在していた.そして,ダウン症候群を持つ人の8割以上で,幸福感と肯定的な自己認識を持ち,周囲との人間関係にも満足している状況が認められた.この調査をもとに,教育,就労,福祉,医療の関係者を交えた公開シンポジウムを開催した.現行の教育体制はバリエーションに富んだ選択肢があるものの細部の改善が必要であること,安心して就労可能な支援や受け入れ体制が必要であること,障害をもつ人が生涯に亘り地域の一員として生活できる福祉体制の確立が必要であることが,結論づけられた.
結論
 第1分科会では出生前診断の実態を把握するための基盤となる登録システムソフトウェアの原案を作成することができた.一方で,出生前検査は急速に普及しており,本研究班による提言をもとにした,遺伝カウンセリングの普及を伴うわが国での出生前診断の在り方その適切な体制の構築が急がれる.第2分科会では一般妊婦に対する,出生前診断に関する情報提供と遺伝カウンセリングへのアプローチを目的としたリーフレットを作成した.出生前診断に関する価値観は多様であり,リーフレットの利用に関しても,医療従事者が責任をもって慎重に行うことが望まれるため,配布の方法にも心を配り,妊婦とその家族の不安に寄り添い,ファーストタッチの重要性を十分認識し,必要に応じて二次,三次の遺伝カウンセリングへ繋げ,その後も一次施設と高次施設が連携することが重要であると考えられた.第3分科会ではダウン症候群を持つ人およびその家族に対する調査の結果から,ダウン症候群を持つ人の多くは高校卒業後に就労しているが,収入の問題が存在していること,ダウン症候群を持つ人の8割以上で,幸福感と肯定的な自己認識を持ち,周囲との人間関係にも満足していることを明らかにした.この成果に基づいたシンポジウムを開催し,現行のバリエーションに富んだ教育体制の更なる改善,安心して就労可能な支援体制や,障害をもつ人が生涯に亘り地域の一員として生活できる福祉体制の確立が必要であると結論づけられた.これらの成果について,「ダウン症候群を含めた小児慢性疾患などの出生前診断の対象となる疾患をもつ人々の,教育・就労・福祉についての提言」としてまとめることができた.
 以上のような本研究班の成果により,出生前診断に関わる遺伝医療のみならず,我が国の医療統計や社会福祉にも寄与することになると期待される.

公開日・更新日

公開日
2017-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-27
更新日
2017-07-04

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201606003B
報告書区分
総合
研究課題名
出生前診断における遺伝カウンセリングの実施体制及び支援体制のあり方に関する研究
課題番号
H26-健やか-一般-003
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
小西 郁生(京都大学 医学研究科器官外科学婦人科学産科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 重人(京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻)
  • 三宅 秀彦(京都大学医学部附属病院 遺伝子診療部)
  • 伊尾 紳吾(京都大学大学院医学研究科 器官外科学講座)
  • 久具 宏司(東京都立墨東病院)
  • 平原 史樹(独立行政法人国立病院機構横浜市南西部地域中核病院 横浜医療センター)
  • 増崎 英明(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 左合 治彦(国立成育医療研究センター)
  • 高田 史男(北里大学大学院医療系研究科臨床遺伝医学講座)
  • 鈴森 伸宏(名古屋市立大学大学院医学研究科産科婦人科)
  • 吉橋 博史(東京都立小児総合医療センター臨床遺伝科)
  • 佐々木 愛子(国立成育医療研究センター)
  • 福嶋 義光(信州大学医学部遺伝医学・予防医学講座)
  • 関沢 明彦(昭和大学医学部産婦人科学講座)
  • 中込さと子(山梨大学大学院総合研究部)
  • 澤井 英明(兵庫医科大学)
  • 山内 泰子(川崎医療福祉大学・医療福祉学部)
  • 山田 崇弘(北海道大学大学院医学研究科 総合女性医療システム学講座)
  • 鮫島 希代子(独立行政法人国立病院機構 南九州病院)
  • 早田 桂(岡山大学病院 産科婦人科学教室)
  • 斎藤 加代子(東京女子医科大学附属遺伝子医療センター)
  • 松原 洋一(国立成育医療研究センター)
  • 福島 明宗(岩手医科大学医学部臨床遺伝学科)
  • 金井 誠(信州大学医学部保健学科)
  • 小笹 由香(東京医科歯科大学医学部附属病院)
  • 池田 真理子(谷口 真理子)(神戸大学医学部 小児科 こども急性疾患学)
  • 浦野 真理(東京女子医科大学附属遺伝子医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
出生前診断における遺伝カウンセリングの実施体制及び支援体制のあり方を研究することである.
研究方法
この目的の達成のために,3分科会を組織して研究を行った.分科会ごとに研究を実施しつつ,年2,3回の全体会議を開催し,全体の意思統一を図った.3年計画の最終年度には,平成28年10月5日にシンポジウム「ダウン症候群から考える日本の教育・就労・福祉」を,同年12月17日に教育シンポジウム「出生前診断と診療支援体制の現状と将来展望」を開催した.
結果と考察
 【第1分科会】出生前診断の実態を把握するための基盤構築:本邦における出生前診断の全体像を把握するための体制構築が必要と考えられるため,登録システムの開発を目指した.具体的な登録システムソフトウェアを作成し,出生前検査を実施する国内のボランティア医療機関で試験運用とその使用感調査を行い,さらに改良を加えた.この登録システムを利用し, 今後の出生前診断体制構築に関する提言を作成した.
 【第2分科会】一般産科診療から専門レベルに至る出生前診断に関する診療レベルの向上:全国の産科診療における遺伝診療の標準化のため,出生前診断に関する遺伝カウンセリングに必要な点を診療レベルごとに明確化し,手引きおよび診療補助ツールの作成を目指した.久具班の解析結果の一部から,産科一次施設における出生前検査での説明内容が不足している可能性が示唆されたため,産科一次施設で利用可能な情報提供ツール(リーフレット)作成を初年度より開始し,平成27年度にはプロトタイプのリーフレットを作成し,使用感等の調査を行った.平成28年度はこの結果を踏まえ,日本語版・英語版リーフレットを完成させ,広く活用していただくためにその使用上の注意とともにホームページに掲載して公開した.さらに本リーフレットは遺伝カウンセリングへの導入という位置付けとなるため,その受け皿としての地域における二次,三次遺伝カウンセリング実施施設データベースを作成した.産科一次施設からスムーズに遺伝カウンセリングへアプローチできるようにホームページにおける公開を行った.
 【第3分科会】相談者および当事者の支援体制に関わる制度設計:ダウン症候群を持つ人から本人の自己認識や生活の実感を,また,その家族からは,教育・就労・福祉の実情を調査した.アンケートに回答したダウン症候群を持つ人の多くは高校卒業後に就労しているが,収入の問題が存在していた.そして,ダウン症候群を持つ人の8割以上で,幸福感と肯定的な自己認識を持ち,周囲との人間関係にも満足している状況が認められた.この調査をもとに,教育,就労,福祉,医療の関係者を交えた公開シンポジウムを開催した.現行の教育体制はバリエーションに富んだ選択肢があるものの細部の改善が必要であること,安心して就労可能な支援や受け入れ体制が必要であること,障害をもつ人が生涯に亘り地域の一員として生活できる福祉体制の確立が必要であることが,結論づけられた.
結論
 第1分科会では出生前診断の実態を把握するための基盤となる登録システムソフトウェアの原案を作成することができた.一方で,出生前検査は急速に普及しており,本研究班による提言をもとにした,遺伝カウンセリングの普及を伴うわが国での出生前診断の在り方その適切な体制の構築が急がれる.第2分科会では一般妊婦に対する,出生前診断に関する情報提供と遺伝カウンセリングへのアプローチを目的としたリーフレットを作成した.出生前診断に関する価値観は多様であり,リーフレットの利用に関しても,医療従事者が責任をもって慎重に行うことが望まれるため,配布の方法にも心を配り,妊婦とその家族の不安に寄り添い,ファーストタッチの重要性を十分認識し,必要に応じて二次,三次の遺伝カウンセリングへ繋げ,その後も一次施設と高次施設が連携することが重要であると考えられた.第3分科会ではダウン症候群を持つ人およびその家族に対する調査の結果から,ダウン症候群を持つ人の多くは高校卒業後に就労しているが,収入の問題が存在していること,ダウン症候群を持つ人の8割以上で,幸福感と肯定的な自己認識を持ち,周囲との人間関係にも満足していることを明らかにした.この成果に基づいたシンポジウムを開催し,現行のバリエーションに富んだ教育体制の更なる改善,安心して就労可能な支援体制や,障害をもつ人が生涯に亘り地域の一員として生活できる福祉体制の確立が必要であると結論づけられた.これらの成果について,「ダウン症候群を含めた小児慢性疾患などの出生前診断の対象となる疾患をもつ人々の,教育・就労・福祉についての提言」としてまとめることができた.
 以上のような本研究班の成果により,出生前診断に関わる遺伝医療のみならず,我が国の医療統計や社会福祉にも寄与することになると期待される.

公開日・更新日

公開日
2017-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201606003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
出生前診断の症例登録ソフトウェア開発,一次施設から専門的な遺伝カウンセリングへ導入するためのリーフレットの作成,そしてダウン症候群を持つ方および家族を対象とした当事者の持つ自己認識・他者認識、および教育・就労・福祉に関する総合的な調査について複数の国内・国際学会で発表した.特に当事者を対象とした調査においては教育の多様な選択肢や就労環境は自己認識に影響するということを明らかにし、自己認識に関わる調査は、国際出生前診断学会で優秀ポスターに選出された。
臨床的観点からの成果
臨床の現場で一次施設から専門的な遺伝カウンセリングへ導入するためのリーフレットの作成、出生前診断の診療連携体制の基盤となる二次三次施設のリストを構築した。これにより、一次施設から遺伝カウンセリングに対応できる施設への連携体制を構築するための基盤データが得られた。このデータを利用し、実際に利用できる施設リストの作成が行われた。また、出生前診断の実施状況を把握するために、症例登録ソフトウェアを開発した。
ガイドライン等の開発
平成30年4月17日に開催された日本産科婦人科学会倫理委員会において、研究成果を報告した。概要説明の後、意見交換が行われ、委員長より、当研究班及び後継となる「出生前診断における遺伝カウンセリング体制の構築に関する研究」(研究代表者:小西郁生、通称「第2期小西班」)の研究結果を注視しているとの発言があった。また、出生前遺伝学的検査について検討する学会内の部会に当研究班の班員が選出されており、研究成果が日本の出生前遺伝学的検査および遺伝カウンセリングの実施体制に大きく影響することが想定される。
その他行政的観点からの成果
ダウン症候群を持った方の調査で、教育、就労、福祉において未だ改善が必要な点が明らかになった。このことから、小児慢性疾患などの出生前診断の対象となる疾患をもつ人々の支援体制について提言を作成した。
その他のインパクト
2017年11月11日(土)12日(日)に開催された第1回日本ダウン症会議の市民公開講座において、本研究班の研究成果について招待講演を行った。第3分科会のダウン症をもつ当事者の幸福感アンケートの結果は、各報道にて引用され、2017年4月19日付読売新聞、2017年5月13日付毎日新聞において報道がなされた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
シンポジウム2件開催

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2021-06-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201606003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,000,000円
(2)補助金確定額
13,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 8,208円
人件費・謝金 2,156,456円
旅費 3,801,128円
その他 4,034,208円
間接経費 3,000,000円
合計 13,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-06-01
更新日
-