文献情報
文献番号
201605028A
報告書区分
総括
研究課題名
医療費適正化に向けた生活保護受給者の生活習慣病罹患および医薬品処方の実態調査:医療扶助レセプト分析
課題番号
H28-特別-指定-031
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 由光(国立大学法人京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 石崎 達郎(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 研究所)
- 加藤 源太( 国立大学法人京都大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
2,250,000円
研究者交替、所属機関変更
該当なし
研究報告書(概要版)
研究目的
生活保護受給者の生活習慣病罹患および医薬品処方の実態を把握することをめざし、(1)生活保護受給者の健康支援の観点から、介入を必要とする対象者を明らかにするため、代表的な生活習慣病である糖尿病 、高血圧症、脂質異常症について検討を行う。レセプトに記載されている傷病名だけでなく、医薬品処方のデータも活用することでより正しい罹患状況を推測し、生活保護受給者の生活習慣病罹患の実態を明らかにする。(2)医療費の適正化の観点から、生活習慣病患者の医薬品の情報の集計を行い、医療費算出のための基礎情報を収集する。(3)同一疾患の重複受診と頻回受診、複数の医療機関から同一の処方が短期間で処方されている重複処方の実態を明らかにする。
研究方法
平成27年医療扶助実態調査を用いるため、統計法第33条の目的外利用申請を行って取得し、二次データ分析として、レセプトデータ分析を行った。提供されたデータは、レセプト情報・特定健診等情報データベース(ナショナルデータベース:NDB)はじめ他のレセプト由来のデータとは異なった可変長のデータフォーマットであった。そのため、統計ソフトで解析できるように固定長のデータフォーマットに整形した。(1)罹患については、糖尿病 、高血圧症、脂質異常症に関連する傷病名についてICD-10を用いて、医薬品について「今日の治療薬」を用いて、同定を行った。(2)医薬品の費用については、糖尿病治療薬、高血圧治療薬、脂質異常症治療薬の医薬品の費用について代表値を算出した。(3)重複処方については、「同月に、同分類の医薬品が、2つ以上の医療機関より処方されている状態」と定義した。「同分類の医薬品」について、「今日の治療薬」および「薬効分類」を用いて分類を行った。処方人数を、1医療機関以上より該当医薬品が処方されている患者数、重複処方人数を、2医療機関以上より該当医薬品が処方されている患者数と定義し、重複処方割合を、重複処方人数/処方人数にて算出した。
結果と考察
生活保護の被保護実人員216万名のうち、傷病名および医薬品情報より生活習慣病罹患割合を検討したところ、糖尿病166,372名(7.7%, 分母は2,161,442名)、高血圧症391,702名(18.1%)、脂質異常症232,428名(10.8%)、3疾患いずれか518,082名(24.0%)、3疾患すべて51,010名(2.4%)であった。糖尿病患者の糖尿病治療薬の費用は、中央値6139.0円/月、高血圧症患者の高血圧治療薬は、中央値2836.4円/月、脂質異常症の脂質異常症治療薬は、中央値2043.0円/月であった。重複処方(同月に、同分類の医薬品が、2つ以上の医療機関より処方されている状態)を検討したところ、鎮痛薬(経皮用剤・外用配合剤)3.6%、鎮痛薬(内服薬)3.0%が、重複処方割合の高い医薬品であった。また、これら医薬品の処方件数も多く、ほぼすべての医薬品において、処方件数が多いと重複処方も比例的に増える傾向があった。重複処方については、重複処方割合および処方件数の両面より検討することが必要である。
結論
平成27年医療扶助実態調査よりレセプトデータを用いて、生活習慣病(糖尿病 、高血圧症、脂質異常症)の罹患状況が明らかとなった。また、個別の医薬品の費用の算出方法、重複処方の実態および評価方法について成果が得られた。しかしながら、傷病名の再検討が一部必要であった。また、医療扶助実態調査に含まれないレセプトデータの存在も明らかになった。生活保護には、他法他施策の原則があり、全生活保護受給者の医療の実態を明らかにするには限界があった。今後は、レセプト情報・特定健診等情報データベース(ナショナルデータベース:NDB)を活用した更なる検討が必要である。
公開日・更新日
公開日
2017-05-30
更新日
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