文献情報
文献番号
201605014A
報告書区分
総括
研究課題名
危険ドラッグ等の乱用防止のより効果的な普及啓発に関する特別研究
課題番号
H28-特別-指定-016
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
井村 伸正(公益財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センター)
研究分担者(所属機関)
- 鈴木 勉(星薬科大学 薬物依存研究室)
- 鈴木 順子(北里大学 薬学部)
- 花尻瑠理(木倉瑠理)(国立医薬品食品研究所 生薬部)
- 舩田正彦(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター薬物依存研究部)
- 山本 経之(長崎国際大学薬学部 薬学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
7,898,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成27年7月、危険ドラッグの販売店が全滅し、デリバリー販売やインターネット販売に移行している。新たな危険ドラッグについては、このような入手方法に応じた啓発が必要となっている。また、N2O を成分とするシバガスのような危険ドラッグも出現しており、こういった製品に対する国内対策を講ずる必要がある。
また、大麻については、昨今、誤った情報として、インターネット上で「大麻は嗜好品」、「大麻は医薬品」、「大麻は安全」、「アルコールよりも危険の少ない大麻」等を示唆するような様々な情報が氾濫している。
また、大麻は、本邦では覚醒剤についで乱用されている薬物であり、特に検挙状況をみると青少年の割合が高いことが分かる。さらに、平成28年3月までの半年間の事件を見ると、小学生、中学生、高校生が大麻に手を出すような事例が発生しており、危機的な状況となっている。
また、大麻については、昨今、誤った情報として、インターネット上で「大麻は嗜好品」、「大麻は医薬品」、「大麻は安全」、「アルコールよりも危険の少ない大麻」等を示唆するような様々な情報が氾濫している。
また、大麻は、本邦では覚醒剤についで乱用されている薬物であり、特に検挙状況をみると青少年の割合が高いことが分かる。さらに、平成28年3月までの半年間の事件を見ると、小学生、中学生、高校生が大麻に手を出すような事例が発生しており、危機的な状況となっている。
研究方法
そこで、本研究では下記のの3つの段階を踏んで実施する。
①乱用薬物の有害性等の最新知見の収集
ア)国内外の最新の薬理学的、臨床的観点からの知見の収集、イ)国内外の乱用状況、ウ)最新の海外規制状況を調査する。
②情報の分析、国として啓発すべき最新の有害性の知見の一般化、海外の規制情報、G10各国などの海外の有害性情報の傾向性の分析、国内の流通情報の分析(地域性、年齢、性別、入手先、入手先の情報、違法薬物を乱用する理由等)を行う。
③啓発の方法の検討①、②を踏まえた啓発資材のより効果的なな活用方法を研究する。
①乱用薬物の有害性等の最新知見の収集
ア)国内外の最新の薬理学的、臨床的観点からの知見の収集、イ)国内外の乱用状況、ウ)最新の海外規制状況を調査する。
②情報の分析、国として啓発すべき最新の有害性の知見の一般化、海外の規制情報、G10各国などの海外の有害性情報の傾向性の分析、国内の流通情報の分析(地域性、年齢、性別、入手先、入手先の情報、違法薬物を乱用する理由等)を行う。
③啓発の方法の検討①、②を踏まえた啓発資材のより効果的なな活用方法を研究する。
結果と考察
大麻の生理活性(生体作用):2016年のWHO薬物依存専門委員会の大麻に関する会議において公開された薬物依存についてのJason White のレビューでは、カンナビノイドは薬物依存を生じないというこれまでの報告を覆し、大麻が身体依存を形成することを示す複数の論文が紹介されている。一方、大麻の主な薬理作用として、(1)脱抑制、リラクゼーション、社交性の向上、饒舌(2)高揚感、食欲増進(3)抑うつ、興奮、パラノイア、錯乱、眠気、パニック発作(4)音刺激、触覚に対する知覚の変容(5)吐き気、頻脈、顔面潮紅、口渇、振戦(6)時間感覚の歪み、短期記憶の障害 (7)自動車の運転への影響、運動失調と判断力の障害(8)摂取量の増加に伴って増強する錯覚、妄想、幻覚(9)多量使用による情緒不安定等が挙げられる。大麻の喫煙は速やかな精神作用を示す。大麻の精神活性物質として知られるΔ9-THC(tetrahydrocannabinol)は喫煙で摂取した方が経口摂取に比べて2.6~3倍強力であるとされている。大麻喫煙の急性作用として学習能力やブレーキ操作反応の遅延等自動車運転能力の阻害効果が認められた。慢性的な大麻使用による行動障害については使用の期間、頻度、量などと様々な行動と認知の尺度による解析で記憶、注意力、精神運動速度が対照群に比して有意に劣ることなどが示された。大麻の医療への応用についての可能性として、神経因性疼痛の緩和、HIV患者等の食欲増進、多発性硬化症の痙縮発症に対する効果などが評価例として挙げられるが効果が認められる場合も研究対象のサイズが小さいことや研究のデザインなどによる信頼性の低さなどが問題とされる例が多く、医療への応用については有害作用を考慮した慎重な検証が必要と判断された。
脳の機能的・解剖学的側面から見た大麻の有害性:大麻の大量使用により精神疾患および認知障害の発現リスクが高くなる。特に、青少年期の常用的な大麻の大量摂取は、成人期のそれと比べて、重度かつ持続的な悪影響を及ぼすことが動物試験と臨床試験から共に指摘されている。大麻の常用的使用は、内側側頭皮質、側頭極、海馬傍回、島、眼窩前頭皮質での灰白質の体積減少等脳の形態学的変化と関連する。また、大麻の有害性に関して大麻の使用開始時期が重要な意味を持つことが示された。
脳の機能的・解剖学的側面から見た大麻の有害性:大麻の大量使用により精神疾患および認知障害の発現リスクが高くなる。特に、青少年期の常用的な大麻の大量摂取は、成人期のそれと比べて、重度かつ持続的な悪影響を及ぼすことが動物試験と臨床試験から共に指摘されている。大麻の常用的使用は、内側側頭皮質、側頭極、海馬傍回、島、眼窩前頭皮質での灰白質の体積減少等脳の形態学的変化と関連する。また、大麻の有害性に関して大麻の使用開始時期が重要な意味を持つことが示された。
結論
薬物乱用防止の効果的な手段:乱用防止教育と啓発活動が中心となろうが、東京オリンピックを控えて、医療制度・環境が大きく異なる諸外国での規制緩和政策がわが国にとって何らかの影響を与える可能性がある。正しい科学的根拠に基づいた規制策を確立し、説得力のある説明が可能となるよう努力を傾注する必要がある。
公開日・更新日
公開日
2017-10-23
更新日
-