文献情報
文献番号
201604008A
報告書区分
総括
研究課題名
保健関連ポスト国連ミレニアム開発目標に関する現状と課題に関する研究
課題番号
H27-地球規模-若手-006
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
大田 えりか(聖路加国際大学大学院 看護系研究科 国際看護学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
770,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
地球規模の保健課題(グローバルヘルス)は今、大きな変革期を迎えており、世界的な高齢化への人口転換、慢性疾患の増加による疾病構造の変化が起こっている。国連の持続可能な開発会議(リオ+20)では、MDGsの流れを踏まえた2015年以降の目標として、SDGs(Sustainable Development Goals)を策定することが合意された。MDGsは8ゴール、21ターゲット、60の指標から構成されており、途上国の貧困問題等を解決することが最大の目的であった。しかし、SDGsは、途上国に限定されない、より広範な人類共通課題として17のゴールと169のターゲットを掲げている。全世界に広がる普遍的なものへと変化したこのSDGsは、きわめて広範な開発目標となり、各セクターが複合的に組み合わされている。SDGsは、開発途上国だけでなく先進国も、自国も他国も世界全体で取り組むべき課題であり、多分野連携が必要となるが、SDGsは多領域にまたがり、目標が複数のため、財政を集約しにくくなり、それぞれの分野で、進捗状況に対する説明責任(エビデンスに基づく評価が必要)が増すと考えられる。
平成28年には、日本でG7サミットや母子保健手帳会議重要な国際会議が開催されるなど、今後も日本がリーダーシップを取り、これらの地球規模の課題をリードしていく必要がある。本研究の目的は、新たな保健関連ポスト国連ミレニアム開発目標に向けて、現状と課題を整理し、若手の視点から次世代の我が国の地球規模課題戦略を提言することである。
平成28年には、日本でG7サミットや母子保健手帳会議重要な国際会議が開催されるなど、今後も日本がリーダーシップを取り、これらの地球規模の課題をリードしていく必要がある。本研究の目的は、新たな保健関連ポスト国連ミレニアム開発目標に向けて、現状と課題を整理し、若手の視点から次世代の我が国の地球規模課題戦略を提言することである。
研究方法
平成28年度は、前年度に実施したインタビューに引き続き、日本のグローバルヘルスを率いる国内の学研界・有識者、厚生労働省、国連、世界保健機関など関係者5名に個別の半構造化インタビューを実施した。インタビュー結果をもとに内容分析を行い、我が国の持続可能な地球規模課題戦略の提言についてまとめた。また、日本の貢献が高い分野である感染症の分野にフォーカスし、「疾病の根絶・制圧と日本の貢献セミナー」を本研究班と聖路加国際大学WHOコラボレーションセンターで共催し、WPRO、国立感染症研究所、JICAなど国内外の日本人の専門家8名によるセミナーを開催した。
結果と考察
日本のグローバルヘルスを率いる各分野のステークホルダー5名を対象として個別の半構造化インタビューを実施し、日本のSDGsへの貢献度、MDGsとSDGsの違い、我が国のSDGsの課題についてうかがい、内容分析を行った結果、今後日本が国際的な開発目標に取り組む際の課題に関して、【MDGsからSDGsへの変化】【MDGsの成果】【MDGsで残された課題】【SDGsにおける課題】【日本の課題】【人材育成における課題】という6つのカテゴリーが抽出され、その中で29のコード(課題)がリスト化された。MDGsからSDGsへ移行したことで、途上国を対象とした「援助」から、先進国も含めていかに「連携」していけるかが課題であり、各国がサステイナビリティということの意義を考えていく必要があると指摘されていた。その上で、MDGsの成果や残された課題をふまえて、SDGsで示された幅広いゴールやターゲットに、より多分野で多様なアクターをいかに巻き込んでいけるかが重要であるということであった。またユニバーサル・ヘルス・カバレッジをはじめ、日本が具体的な課題やメッセージを提示していく必要性、そのためにも従来の定義にとらわれない、国際人材の育成が求められているといった課題が示されていた。
結論
地球規模の保健課題(グローバルヘルス)は今、大きな変革期を迎えており、発展途上国のみを対象にしていたMDGsから変化し、自国の資源や環境を持続しながら、経済の発展や人材の育成できる長期的な制度づくりが求められている。それには、コミュニティ、政策、グローバルレベルでの多分野連携が必要である。
グローバルヘルスに関するステークホルダーへのインタビューや、日本の貢献が高い分野である感染症の分野にフォーカスした、「疾病の根絶・制圧と日本の貢献セミナー」を企画・開催した結果を踏まえると、日本が今後世界の中で貢献して行くべき方向性として、日本が得意とする運用の知恵を共有すること、誰もが納得できる問題を言い続けること、異なる分野の政策を結びつける共通の政策概念を明らかにすること、国のトップリーダーがヘルスの課題に関心を持っていることを積極的に情報発信していくこと、といった点が示されていた。また、人材育成では、国際機関の人材のみならず、審議会の座長や専門委員へ選出される国際世論、国際基準の作成ができるレベルの人材育成を行う必要性が明らかとなった。本研究で示されたこれらの課題に関して、今後は様々な機会で課題を提示して多くの人と認識を共有し、実践的に取り組んでいく必要がある。
グローバルヘルスに関するステークホルダーへのインタビューや、日本の貢献が高い分野である感染症の分野にフォーカスした、「疾病の根絶・制圧と日本の貢献セミナー」を企画・開催した結果を踏まえると、日本が今後世界の中で貢献して行くべき方向性として、日本が得意とする運用の知恵を共有すること、誰もが納得できる問題を言い続けること、異なる分野の政策を結びつける共通の政策概念を明らかにすること、国のトップリーダーがヘルスの課題に関心を持っていることを積極的に情報発信していくこと、といった点が示されていた。また、人材育成では、国際機関の人材のみならず、審議会の座長や専門委員へ選出される国際世論、国際基準の作成ができるレベルの人材育成を行う必要性が明らかとなった。本研究で示されたこれらの課題に関して、今後は様々な機会で課題を提示して多くの人と認識を共有し、実践的に取り組んでいく必要がある。
公開日・更新日
公開日
2017-06-06
更新日
-