文献情報
文献番号
201602013A
報告書区分
総括
研究課題名
複数の厚生労働統計をリンケージしたデータによる医療提供体制の現状把握と実証分析
課題番号
H27-統計-若手-008
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
高久 玲音(一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部)
研究分担者(所属機関)
- 別所 俊一郎(慶応義塾大学 経済学部)
- 安藤 道人(国立社会保障・人口問題研究所 研究員)
- 山岡 淳(一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部 )
- 佐方 信夫(一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
1,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
厚生労働省は医療施設調査で把握された医療機関を通して、患者調査や受療行動調査など多くの優れた統計調査を行っている。しかしながら、そうした統計調査を患者単位及び施設単位で紐づけしたデータ(以下、リンケージ・データ)を用いた調査研究はほとんど行われてこなかった。本研究班では、このリンケージ・データを用いて、政策的に重要な課題について、今までにない詳細な知見を得ることを目的としている。
研究方法
2年計画の2年目である本年度では、初年度に構築したリンケージ・データに新しく、病院の地理情報から病院周辺の人口動態を特定して分析に用いた。そのデータを用いて、地域間のおける病院の質の格差や、病院で雇用される看護師数や看護師の勤務状況に影響を与える政策の効果が仔細に検討された。
結果と考察
まず、本研究班の分析の結果、入院医療費は200床の閾値で限界的に30%程度増加し、看護師・患者比率は20%低下した一方で、200床の境界で死亡率や満足度には全く変化が見られなかった。これは200床規模の病院における高密度医療が十分に患者アウトカムを改善させていない可能性を示唆している。さらに、病院の所在地情報を地域メッシュ統計と接続することにより、本研究では病院の半径5KM以内にどの程度の人口が存在するか識別した。その後、この「周辺人口」の規模と病院のパフォーマンスの関係を調査した。一般に、人口減少地域の病院では医師が集まりにくく医療の質も低下すると指摘されているが、包括的な指標に基づく都市/非都市の格差の分析は多くない。分析の結果、人口密集地域(上位10%)に立地する病院における急性心筋梗塞患者の30日以内死亡率は、人口の少ない下位10%の病院における死亡率のおよそ3分の1だった。この結果は、近年のわが国においても、依然として医療の地域差が存在することを示唆している。その他、別途複数のテーマについて解析が行われた。
結論
本研究班の成果から、わが国の厚生労働統計を相互にリンケージすることで、極めて質の高い病院や診療所に関するデータが構築可能であることが示唆された。既存の統計について改善点もいくつかある一方で、事実に基づく政策運営を進めるにあたっては、こうした統計の利活用を進める必要性は大変高いと考えられた。
公開日・更新日
公開日
2017-08-03
更新日
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