診断群分類を用いた外来機能、アウトライヤー評価を含む病院機能評価手法とセキュアなデータベース利活用手法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201601023A
報告書区分
総括
研究課題名
診断群分類を用いた外来機能、アウトライヤー評価を含む病院機能評価手法とセキュアなデータベース利活用手法の開発に関する研究
課題番号
H28-政策-指定-009
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
伏見 清秀(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医療政策情報学)
研究分担者(所属機関)
  • 石川ベンジャミン光一(国立がん研究センター・社会と健康研究センター臨床経済研究室・室長)
  • 今中 雄一(京都大学・大学院医学研究科医療経済学分野・教授)
  • 阿南 誠(川崎医療福祉大学・医療福祉マネジメント学部・准教授)
  • 康永 秀生(東京大学・大学院医学系研究科臨床疫学経済学・教授)
  • 藤森 研司(東北大学・大学院医学系研究科医療管理学分野・教授)
  • 池田 俊也(国際医療福祉大学・薬学部薬学科・教授)
  • 松田 晋哉(産業医科大学・医学部公衆衛生学・教授)
  • 堀口 裕正(国立病院機構本部・総合研究センター診療情報分析部・副部長)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
33,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
  
研究の目的を以下の2つとした。
① 医療資源必要量を適正に反映するアウトライヤーを考慮した診断群分類の精緻化
② DPCデータのセキュアな利活用手法の開発
研究方法
研究に使用する厚生労働省DPC調査データ(各施設が厚生労働省に提出するDPC関連データ、様式1、様式3、D/E/Fファイル)は、医療機関と個別に守秘義務契約を結んだ上で収集し、分析資料とする。外来についてもE/Fファイルを提出できる施設については、それらも収集し分析対象とする。必要に応じて、救急、周産期、病棟機能等に関するデータを収集して研究を進めた。
いて意見交換・議論を行うと共に、進捗状況を確認しながら、研究を進めた。
結果と考察
昨年度までの研究に引き続き、パブリック・クラウドサービスを利用して研究班ホームページを作成し、1329病院から2年間で延べ1590万人の暗号化したDPC調査データファイルを安全かつ効率的にデータベース化して研究を進めた。
急性期入院医療の診療報酬評価の基盤となるDPC診断群分類は、医療技術の進歩および医療制度の変化に合わせて整備を継続する必要があり、特に平成30年度の調整係数廃止に向けて、傷病名、手術・処置等に基づく重症度を考慮した評価手法(CCPM、Comorbidity Complication Procedureマトリックス)等を用いたDPC診断群分類のさらなる精緻化手法の検討を進めた。在院日数および包括範囲医療費の医療資源必要度を指標とした多変量解析等により、CCPMの妥当性の検証と改善、拡張等の可能性を検討するとともに、CCPMの適切な運用を進めるためにそのわかりやすい表現手法を検討した。
CCPMの妥当性を検証するために、平成28年度DPC調査データを収集し、データベースを構築し、CCPMの各条件の在院日数、1日あたり包括部分点数への影響度を分析する作業を開始した。脳卒中領域の脳梗塞のCCPMでは、入院時JCSに加えて、発症時期、発症前Rankin Scale、処置情報、副傷病情報等の条件で、在院日数(ALOS)、1日当たり包括範囲点数(dDPC)への影響の分析を進めた。肺炎では、年齢区分、A-DROP肺炎重症度スコアの影響を評価した。糖尿病では、年齢、インスリンの使用、微少血管合併症、大血管合併症などの併存症の影響を分析するとともに、1型糖尿病、2型糖尿病、その他の糖尿病を統合した際のCCPMの妥当性の検証を進めた。
実地臨床への親和性の高さやDPC分類の様々な医療評価への応用可能性につながる傷病名分類を上位に位置づける現行の我が国のDPC分類体系において、より医療資源必要度の説明力が高い精緻な評価を可能とするCCPマトリックスの妥当性の検証をさらに進め、CCPマトリックスの導入拡大について引き続き検討することとした。
診療報酬支払制度の適正な運用に必要なDPC情報の質の確保に関して、平成30年度からのICD10 2013年版への移行に対応するために、病名マスターの調査・整備、2003年版からの変換ロジックの検討、コーディングテキストの改訂作業を進めた。移行に当たっては、2013年版での新たなコーディング概念の導入など単純なコード変換では対応できない事例を示し、再コーディングや追加臨床情報の取得などを含む対応手法を厚労省担当者等とともに検討し、コーディング体系移行作業を支援した。また、これらと併せて、医療資源病名、副傷病等の適正な選択、記録方法を明らかとするためにDPC傷病名コーディングテキストの改定を進めた。
医療の質の評価手法の開発では、病院毎に111の医療の質指標の算出を試みるとともに、再入院率へ影響を与える要因、専門医学会期間の治療成績、市中肺炎のアウトカムに与える要因等の分析を進めた。また、DPCデータの臨床疫学研究への応用手法を開発し、化学療法、市中肺炎、解離性大動脈瘤、外傷等のアウトカムに影響を与える要因等を複数の統計的手法を用いて解析し、査読付き英文専門誌等に成果を複数発表した。
地域における病院機能の評価に関しては、地域医療構想等と関連させて、高度急性期病棟の診療実態やばらつきの分析、NDBオープンデータとDPCデータの比較に基づく全国代表値の推計手法の開発、経日的な医療資源投入量の動向とアウトライヤー発生や病床機能との関連に関する分析を進めた。また、DPCデータに基づく疾患別の診療プロセス時系列解析を発展させ、病床機能の評価への応用手法を示し、これらに基づく、病床機能ごとの医療需要将来推計の方法論の検討を進めた。
結論
本研究は、DPC診断群分類の今後の維持・整備手法を明らかとし、平成30年度以降の改定手法の基盤を提供するとともに、DPC包括評価の妥当性の確保につながる分析と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2017-09-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-09-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201601023C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究の成果を活用して、データ分析に基づく診断群分類の統合または精緻化、コード体系の整備のあり方が検討された。さらに、疾病ごとの診療密度の時間経過の分析を応用して病床機能を評価する手法について、引き続き検討を進めた。診療密度の観点から、疾病の高度急性期、急性期、回復期、慢性期等の病期を分類し、それぞれの医療機能区分毎の医療需要を推計するとともに、疾病構造の変化を反映させた将来の地域医療費を推計する手法について引き続いて検討を進めた。
臨床的観点からの成果
また、DPC病院の診療内容の透明化、医療の質の確保、DPC情報の精度向上等を目的とする病院情報の公表については、平成28年度の病院情報の公表の導入が中医協DPC評価分科会において決定され、DPCデータの利活用手法の開発は、病院によるDPCデータの解析と公表・評価の普及・啓発と今後の分析手法の発展につながることが期待された。さらに、適切な診療報酬制度の維持とDPCデータの精度向上のために平成28年度版のDPC傷病名コーディイングテキストの作成を行った。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
「中央社会保険医療協議会DPC評価分科会」、「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会」および、厚生労働省の「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」等での利用
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
51件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-09-06
更新日
-

収支報告書

文献番号
201601023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
33,000,000円
(2)補助金確定額
33,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,871,985円
人件費・謝金 2,670,988円
旅費 6,086,044円
その他 18,408,262円
間接経費 0円
合計 33,037,279円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-03-16
更新日
-