老後所得保障における公的年金と私的年金の連携に関する比較法研究

文献情報

文献番号
201601014A
報告書区分
総括
研究課題名
老後所得保障における公的年金と私的年金の連携に関する比較法研究
課題番号
H28-政策-一般-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
森戸 英幸(慶應義塾大学 法務研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 渡邊 絹子(筑波大学 ビジネスサイエンス系)
  • 中益 陽子(亜細亜大学 法学部)
  • 柴田 洋二郎(中京大学 法学部)
  • 坂井 岳夫(同志社大学 法学部)
  • 島村 暁代(信州大学 経法学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
2,425,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、諸外国の老後所得保障システムにおける公的年金と私的年金の連携の状況につき、わが国との比較法研究の観点から定量的・定性的な分析を行い、それらを基礎として今後の私的年金制度に関する法政策のあり方に関する提言をまとめる。
研究方法
 資料収集と文献研究のほか、9回の全体研究会を実施し、海外現地調査も行った。
結果と考察
1 制度実施・加入・拠出における「公私連携」
 いずれの国でも、税制優遇が基本だが、しかしそれでは不十分との認識の下、国からの補助金、強制加入、社会保険料負担の軽減、賃金・退職金からの「転換」など様々な誘導措置が講じられている。

2 給付における「公私連携」
2.1 給付水準における「公私連携」
2.1.1 所得代替率など
 ドイツには全般的保障水準という公的年金と私的年金を合わせた年金水準が社会法典上の根拠を有し、連邦政府はこれを元に施策を講じる。またインテグレーションの仕組みも存在し、企業年金法にもその根拠があるが、ほとんど利用されていない。アメリカでも給付建て制度においてインテグレーションの給付設計が許容されている。他の研究対象国では、給付水準や所得代替率に関して公私年金併せての目標などの設定はなされていない。

2.1.2 スライド制など
 ドイツでは企業年金法上使用者は原則年金水準の調整をする義務がある。フランスでは確定給付型制度では年金額の見直しを行うのが一般的である。

2.1.3 掛金建て制度における規制・誘導
 フランス及びイギリス(NEST)では、年齢に応じてポートフォリオが自動的に変動するような商品をデフォルトファンドにすることが義務づけられている。チリのAFPにおいても同様の発想による仕組みが存する。他方ドイツでは掛金建て制度には元本保証約定を付けなければならない。公的性格の強いチリのAFPにも最低運用益保障が付されている。
 アメリカでは、差別禁止ルールの適用除外をインセンティブに自動加入・自動拠出制度の導入を促すという手法が講じられている。その他多くの国が手数料についての規制を行っている。

2.2 給付形態における「公私連携」
 ほとんどの研究対象国では終身年金が給付形態に関する法律上の原則となっている。ただし同時に、多くの国において、とくに掛金建ての制度について一時金支給が広く認められている。実際にも掛金建ての制度についてはいずれの国でも一時金支給の割合がかなり高い。

2.3 給付保証における「公私連携」
 フランス、ドイツ、アメリカ、イギリスでは、給付建ての企業年金制度につき何らかの形で支払保証制度が実施されている。
結論
1 「公私」からの脱却
 公的・私的という線引きに囚われず、国民にとってベストな老後所得保障システムを構築するために、どのような制度をどのように組み合わせるのがよいのか、という観点に常に立つ必要がある。

2 税制優遇以外の可能性の模索
 私的年金促進策は日本では基本的に税制優遇措置によってなされている。しかし諸外国では様々なアプローチが採用されており、今後の日本の法政策を考える上でも大いに参考になる。

3 「自己責任」の限界を認めよ
 運用のリスクを加入者が負う「自己責任」の制度であっても、実際にすべての者が合理的行動を取ることができるわけではない。したがって、一定の望ましい方向に緩やかな誘導を行うべきである。「自己責任」の制度の限界を認めるところが出発点となる、いわゆるソフトパターナリズムの考え方である。

4 終身年金の可能性拡充
 私的年金も終身年金であるべきだ、という考え方を原則とする国もあるが、それを貫徹できている国は少ない。給付建て制度は終身年金、掛金建て制度は一時金というのが給付形態に関する諸外国の傾向と言える。公的年金の中長期的な「適正化」が確実であることを踏まえるなら、諸外国での経験も参考に、税制優遇あるいはその他の措置により、終身年金での給付受給の可能性を拡充する方向での施策を今後検討すべきである。

公開日・更新日

公開日
2017-08-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
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分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-08-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201601014C

収支報告書

文献番号
201601014Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,789,000円
(2)補助金確定額
2,789,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 268,824円
人件費・謝金 66,822円
旅費 2,049,117円
その他 40,237円
間接経費 364,000円
合計 2,789,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-03-27
更新日
-