社会的養護等の子どもに対する社会サービスの発展に関する国際比較研究-循環型発展プロセスの課題と文脈の分析-

文献情報

文献番号
201601008A
報告書区分
総括
研究課題名
社会的養護等の子どもに対する社会サービスの発展に関する国際比較研究-循環型発展プロセスの課題と文脈の分析-
課題番号
H27-政策-一般-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
木村 容子(日本社会事業大学 社会福祉学部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤岡 孝志(日本社会事業大学 社会福祉学部 )
  • 有村 大士(日本社会事業大学 社会福祉学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,269,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、世界各国の子ども保護サービス(日本でいう児童相談所機能)および社会的養護制度の発展に関する国際比較を通じ、各国が社会的要請や課題にどのように対応してきたのか、その教訓と課題解決のストラテジー等を収集・分析する。これから予測されうる社会的要請・ニーズや課題に加え、有効な選択肢を検討した。
研究方法
 本研究では、1)社会的発見期、2)前駆期、3)達成期、4)振り返り期という循環的発展過程をたどる分析枠組みを用いた。各研究対象国の文献調査および現地訪問調査により、1.現行子ども保護システム、2.代表的なマルトリートメント支援機関の現行サービスシステム、3.子どもの権利・当事者参画の現在の取り組み、4.マルトリートメントに関する既存のデータベースについて、分析枠組みを用いその発展過程を分析し、教訓と課題解決のストラテジーを検討した。本研究は、本体班と分担班で構成されている。本体班は、本研究のデザインと総合的な評価を行う。分担班は、調査対象国各国の文献資料調査と現地訪問調査を担当し、分析枠組みに準じた各国の現行子ども保護システムの発展過程における文脈の把握と分析を行った。
結果と考察
 2年目の平成28年度において、各研究対象国10ヵ国・州(イギリス、フランス、スウェーデン、デンマーク、アメリカ合衆国ワシントン州およびイリノイ州、カナダ ブリティッシュ・コロンビア州、韓国、タイ、フィリピン)の文献レビューを通じ、分析枠組みに基づきその発展過程を整理した。「考察」では、その国のシステムと発展過程における特徴と教訓、そして、わが国への示唆をまとめた。現地訪問調査を実施したのは、イギリス、フランス、スウェーデン、デンマーク、アメリカ合衆国イリノイ州とカナダ ブリティッシュ・コロンビア州の6ヵ国・州である。各訪問先のヒアリング記録を作成し、その発展過程の特徴や教訓について検討した。
 文献調査と現地訪問調査を通じ、各国の発展過程から多くの教訓と示唆が得られた。そのシステムは大きく異なるものの、子ども保護施策は、子どもの死亡事件等国の責任を問うような大事が起こり世論がわくであったり、あるいは政権交代によるリーダーシップの取り方に変化があることなどにより、その振り子が揺れる。しかしながら、コミュニティベースドの予防的支援、在宅支援に傾倒している国は多い。エビデンスに基づく指標や評価による方法をとる国、またdeductiveな意思決定による方法をとる国があるが、根底には子どものウェルビーイングや人権意識、原家族を大事にする価値があることが、子ども保護に関わる専門性を支えていると推察される。地方自治体が実施主体となり、中央政府機関がスーパーバイズ、モニタリング機能を果たす仕組みを持っている国々では、わが国が見習うべきシステムもある一方で、現場の末端までをカバーするには、中央政府機関のその機能を果たすには脆弱な体制や自治体間格差等の問題を抱える国もある。子どもの権利擁護における取り組みは概して活発であり、子どもやその家族が参画する仕組みをもった国は多い。この点ではとくにわが国は大きく遅れをとっている。厚生労働省は2016年9月にサービス提供の枠組み等新たな方向性を示しているが、わが国ではこれまでには重要視されていなかった点が各国の分析から抽出された。各国の試行錯誤による積み重ねに着目した本研究において、先進国、発展途上国かかわらず、各国からの教訓が得られたことも大きな成果である。
 最終3年目の平成29年度には、各国の文献調査および現地訪問調査の結果をあわせて、上記1. ~4.に関する子ども保護システムを中心とした子どもの社会サービスの構築について、社会的課題の発見からその対応、評価までを一連の流れとしてその文脈を総合的に分析し、教訓を見いだす。そのうえで、これからの日本が直面する課題やアジェンダを、日本の文脈と教訓と照らし合わせつつ析出し、社会的なとらえ方の枠組みとその要素を検討する。
結論
 本研究では、各国がそこに至るコンテキスト、特に成功や失敗を踏まえたいわば教訓を、単に文献からだけでなく政策や現場での実践等に関わっている人々から収集している。これらを集積することで、子どもの社会サービス構築の材料に光を当てて立体的な情報が集積できる。集積した情報は、わが国が政策を考える際の検討事項の材料とし、政策実施後の反省点も踏まえた施策の展開が可能となる。また、教訓を踏まえた、いわばデータベースを構築し、わが国の子ども家庭福祉、および子どもの保護領域の施策構築を支援することに役立てられうる。

公開日・更新日

公開日
2018-03-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-03-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201601008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,759,000円
(2)補助金確定額
3,759,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 267,904円
人件費・謝金 2,064,277円
旅費 859,185円
その他 78,282円
間接経費 490,000円
合計 3,759,648円

備考

備考
最終支出した際に、端数が出たため。

公開日・更新日

公開日
2018-03-16
更新日
-