広域大規模災害時における地域保健支援・受援体制構築に関する研究

文献情報

文献番号
201525016A
報告書区分
総括
研究課題名
広域大規模災害時における地域保健支援・受援体制構築に関する研究
課題番号
H27-健危-一般-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
古屋 好美(山梨県中北保健福祉事務所(中北保健所))
研究分担者(所属機関)
  • 中瀬 克己(岡山大学医療教育統合開発センターGIMセンター部門)
  • 坂元 昇(川崎市健康福祉局)
  • 田上 豊資(高知県中央東福祉保健所)
  • 尾島 俊之(浜松医科大学健康社会医学講座)
  • 前田 秀雄(東京都福祉保健局)
  • 石井 正(東北大学病院総合地域医療教育支援部)
  • 金谷 泰宏(国立保健医療科学院危機管理研究部)
  • 近藤 久禎(国立病院機構災害医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
6,921,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東日本大震災から5年、大災害への備え、特に防ぎ得た死と二次的健康被害への保健医療行政の対策・対応は今なお喫緊の課題である。災害時健康危機管理支援チーム(DHEAT: Disaster Health Emergency Assistance Team)構想の芽生えから全国衛生部長会による着手、全国保健所長会による日本版標準保健所インシデント・コマンド・システム(ICS)検討を通じた保健所の役割・機能の普及等の機運の高まりを背景として、広域大規模災害時における地域保健支援・受援体制構築の基盤作成を目的とする。
研究方法
ICSを活用した分担研究間統合を行った。
1.「都道府県DHEAT運営要綱」作成と全国の都道府県に対するDHEATの広域派遣調整や事務局のあり方等について郵送質問紙調査を実施した。東日本大震災のデータを基にして南海トラフ巨大地震における必要なDHEAT数の試算を行った。
2.災害発生後の具体的情報把握方法案等の策定と推計等の試行を行って公衆衛生アクション・連携を試案した。
3.東京都による長期継続派遣指揮や東北被災経験を踏まえ、DHEAT初動時情報活動方策を具体化した。
4.健康リスク評価及び人材派遣調整機能の向上を目指す教育訓練体制及び地域別演習の試案を作成し、国立保健医療科学院災害時公衆衛生従事者緊急派遣等システムに反映させた。
5.全国衛生部長会と全国保健所長会と連携して研究を行った。
6.災害時危機管理事例をDHEATの視点で検証した。
(倫理面への配慮)個人の不利益をきたす倫理面での課題はない。
結果と考察
DHEATを統一システムとして運用できる素地を作った。DHEATとは、指揮調整体制(Command and Control)を確立し、安全(Safety)に配慮しつつ情報共有(Communication)・評価(Assessment)活動を行うことで、多様な官民資源の連携・協力のハブ機能(Hub for cooperation and coordination)を果たし、急性期から復旧期まで切れ目ない医療提供体制(Health care system)構築、避難所等における保健予防活動と生活環境衛生(Health and Hygiene)確保、防ぎ得た死と二次健康被害の最小化という保健医療行政が担うべき健康危機管理を補佐・支援(Help)するチーム体制であると定義した(CSCAHHHH)。
1.行政内管理体制:「都道府県DHEAT運営要綱」を作成し、都道府県への質問紙調査実施の結果、概ね要綱案への理解が得られたが、都道府県と政令市・保健所設置市との関係整理が課題である。必要DHEAT数として各都道府県が3か月間で5-9班を派遣すれば対応可能と試算した。
2.具体的業務: 超急性期から慢性期まで保健医療行政の果たす役割は、一元的な情報収集から分析評価、多様な官民資源の統合指揮調整マネジメント業務であり、DHEAT支援業務と支援・受援関係を整理した。
3.情報・共有・評価体制: DHEAT初動体制確立・活動内容・安全・救護ニーズ・ライフラインに関するチェックリスト、地域状況確認表、避難所アセスメントシート及び情報収集の基本方針を作成した。
4.人材育成体制: 日本DMAT隊員養成研修等、災害医療コーディネータ及び医療救護班の要員研修を基本として、DHEAT活動要領を踏まえ教育カリキュラム案の作成と試行を実施した。その構成は、災害時の保健医療活動や組織運営体制に関する講義、情報共有システムの使用方法や本部運営に関する実習、DHEATの派遣から撤収までの机上演習、地域本部運営活動の実習であった。
5.全国衛生部長会(活動要領素案)と全国保健所長会(ブロック研修、ガイドライン作成)の検討と連動した。
6.関東東北豪雨災害において茨城県内の保健所間で実施した支援・受援について検討した。
東日本大震災への派遣実績を踏まえると公衆衛生医師を含むDHEATの結成は可能であると考える。来年度以降は、1) 被害想定調査によるDHEATの必要数の試算、構成人数、職種、研修訓練等の案、2) 自治体におけるDHEATの基本的業務内容やDMAT等他の支援チームとの分担、受援体制、3) 人的資源や支援資材の効果的配分による災害後の保健活動実施のために収集すべき情報の内容とその活用方策、4)人材の養成に必要な内容の明確化によってDHEAT事務局機能が明らかとなり、運用の準備に入ることが考えられる。
結論
広域大規模災害時における地域保健支援・受援体制について行政内管理体制、具体的業務内容、情報・共有・評価体制、人材育成の各視点から作成し、DHEATを統合システムとして運用するための基盤を作成した。来年度はさらに制度的課題と実務的課題に取り組み、全体を通して検証する。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201525016Z