文献情報
文献番号
201525014A
報告書区分
総括
研究課題名
火葬場の設置管理運営基準の見直しに関する研究
課題番号
H26-健危-一般-008
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
横田 勇(特定非営利活動法人 日本環境斎苑協会 総務部)
研究分担者(所属機関)
- 米田 稔(京都大学大学院工学研究科)
- 高岡 昌輝(京都大学大学院地球環境学堂)
- 藤森 崇(京都大学大学院地球環境学堂)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,841,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、環境規制の動向、火葬場における有害物質等の排出状況を把握するとともに、災害対策上の要請、労働安全衛生への配慮などに関し、最近の状況を把握し、設置管理運営基準の見直しを行い、火葬場を設置運営する地方自治体等に対し、適切な設置管理運営のための指導指針を提供しようとするものである。火葬場の設置運営管理基準は、NPO法人日本環境斎苑協会が作成する「火葬場の建設・維持管理マニュアル」で策定されており、谷同様な指導指針はなく、この「マニュアル」が唯一の指導指針となっている。今回は、医学の進歩に伴う心臓ペースメーカ等体内植込み型デバイスおよび放射線小線源治療機器の火葬場での影響と対応について検討した。また、火葬場における作業環境及び有害物質の排出状況を測定するとともに、公害規制及び労働安全衛生規制の動向を踏まえた見直し、副葬品への対応、感染症により亡くなった遺体への対応、大規模災害時の火葬への対応などを検討し、見直し項目をまとめた。
研究方法
研究代表者を委員長とする研究委員会を設置し、学識経験者、火葬関係者、火葬場運営担当者で構成した。2年間を通じて延べ6施設の作業環境及び有害物質排出状況を測定分析した。また、専門機関に委託して法規制の動向を調査した。また、体内植込み型デバイスを利用して医療行為をしている専門の医師、デバイスを提供している業界関係者及び放射線管理の専門機関の日本アイソトープ協会からヒヤリングを行った。火葬場の状況を調査するため、2年間で6か所の火葬場を視察するとともにヒヤリングを行った。棺への副葬品の挿入を減らすために「全日本葬祭業協同組合連合会」への聞き取りと要請を行った。
結果と考察
心臓ペースメーカについては、火葬における「破裂」が必ずあること、このため、一部の火葬場では装着遺体の火葬を断っている施設もある。遺体からの除去ができればよいが遺族の感情と費用負担、どこで除去するかなど課題がある。一方放射線治療機器は半減期が2か月と短いものの、装着後1年以内に死亡した場合は、学会の対応マニュアルで除去が決められている。デバイスによる対応の違いが明確となった。ペースメーカも同様の対応が必要であろう。なお、将来的にはデバイスがより小型化され、破裂の程度が小さくなるとのことであるが当面は、火葬場での事前申告を徹底したい。火葬場における放射線測定では、デバイスからの影響はなかったものの耐火煉瓦からバックグラウンド程度の放射線が発せられていることが分かった。実際の作業には影響ないと考えられる。火葬場の有害物質排出状況と作業環境は依然としてあまり改善されていないが、新しい火葬場については作業の自動化等によってほとんど問題ないことが分かった。古い施設の建て替えを進める必要がある。今後とも医療機器業界や葬祭事業者との連絡を密にして情報交換を続けたい。
結論
体内植込み型デバイスは、今後も医学の発展に伴って他機種が製作される可能性があることから、製品の認可の際に影響について確認し、最終的な遺体の受け入れ時に影響があると認められた医療機器については、除去するかまたは火葬場への事前報告を指導する必要がある。その対応を製造者に検討させるべきである。当面は、遺族と火葬場の間に立つ葬祭事業者との情報交換を続け、副葬品の減少を含めて、より良い対応を検討し協力関係を構築する必要がある。製造事業者は、より影響の少ない製品の開発を進めてほしい。行政の関係者は、施設の老朽化解消を進めることが必要であり、できればそのための補助制度の創設を希望するものである。
公開日・更新日
公開日
2016-06-20
更新日
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