水道における連続監視の最適化および浄水プロセスでの処理性能評価に関する研究

文献情報

文献番号
201525009A
報告書区分
総括
研究課題名
水道における連続監視の最適化および浄水プロセスでの処理性能評価に関する研究
課題番号
H26-健危-一般-003
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
小坂 浩司(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 秋葉 道宏(国立保健医療科学院)
  • 浅見 真理(国立保健医療科学院 生活環境研究部 )
  • 大野 浩一(国立保健医療科学院 生活環境研究部 )
  • 水野 忠雄(京都大学大学院 工学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
2,961,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
安全な水道水を供給する観点から、水道システム、特に水道水源での危害を同定し、浄水プロセスで水質変動・異常を検知し、迅速に対応することが重要な課題の一つである。本研究では、水道水源での監視体制の最適化、連続自動水質計器等を活用した浄水プロセスでの処理性能評価手法、水質変動・異常への対応手法の構築を目指す。
研究方法
H26年度に抽出した優先度の高い危害を対象に、全国21水道事業体の21浄水場の水安全計画を用いて、表流水を原水とする急速ろ過方式の浄水場における監視システムのデータベース化、解析を行った。東京都が保有する水源水質事故情報と届出特定排出事業場情報についてマッピングを行った。淀川流域内のPRTR物質の排出移動量や経口LD50等を基にリスクマップを作成した。油類に特徴的に含まれるVOC成分を取水口の連続自動VOC計に通水させ、それら成分の検出可能性を調査した。全国300超の水道事業体を対象に連続自動水質計器の設置状況、活用状況のアンケート調査を行った。全国18事業体の自動水質計器のデータを入手し、原水データの解析を行い、多項目の変動の特性把握手法等について検討した。実処理場のオゾン接触槽の3箇所でオゾン濃度計を設置し、連続データの取得を行うとともに、オゾンの反応モデルについて検討した。
結果と考察
水安全計画を解析し、昨年度実施した危害原因事象や危害因子の結果を基に、優先度の高い危害原因事象とその最重要危害因子のセットを決定した。9つのセットが選択され、それぞれについて、監視方法とその管理基準を解析し、優先度の高い危害原因事象と危害因子の監視体制を明らかにした。また、水安全計画における重要な概念の一つである「多段バリアの原則」を意識した監視体制となっていることも明らかとなった。利根川流域を対象に水源水質事故情報と水質汚濁防止法に基づく届出特定排出事業場情報について、マッピングを行った結果、過去の事故発生や排出事業者が多く、定期的な水質調査の実施をすべきと考えられるエリアが抽出された。淀川流域において、排出量・移動量が多く経口LD50の低い物質が明らかとなった。油類をVOC計に通水させたところ、1,3,5および1,2,4-トリメチルベンゼン、オクタン、ノナンの4種を検出することで、原水への油類混入をVOC計で検知できる見込みが示された。通常処理の急速ろ過処理方式の浄水場の場合(対象浄水場数:148)、1箇所以上の浄水場で21種の連続水質計器が設置されていた。各地点のうち、設置率が90%を上回ったのは原水での濁度計とpH計、浄水での残留塩素計であった。また、自動制御に用いられている割合が高いのは濁度計、pH計、残留塩素計で、それぞれ主に原水、原水および凝集沈殿水、凝集沈殿水~浄水での自動制御の割合が高かった。原水の連続データのうち、浄水場での設置率が高かった濁度、電気伝導度について解析を行った。濁度は、ピーク数、(第3四分位―中央値)、pHは、1日変動の中央値、1日変動の四分位範囲、1日最小値の四分位範囲、電気伝導度は、中央値、相対四分位偏差、1日最小値の四分位範囲を指標とした。その結果について主成分分析を行い、最終的に6項目についてレーダーチャートを作成した。これにより、各事業体の原水濁度・pH・電気伝導度の変動特性を把握することができ、限定的ではあるが原水安定度を表現する一種の指標を作成することができた。実浄水場のオゾン接触槽内の溶存オゾン濃度計は1か月程度のならし期間を経て、安定したデータの取得が可能となり、複数回の急激な濃度変化に対しても同様の変化が確認された。オゾンの反応に関して、オゾン濃度とHOラジカルのプローブ物質の濃度を再現する反応モデルの検討を行ったところ、異なる初期溶存オゾン濃度に対して、同じパラメーターを与えることで、溶存オゾン濃度及びHOラジカル濃度が再現できていることが確認できた。
結論
水安全計画を解析した結果、優先度の高い危害原因事象の監視体制が明らかとなり、また、多くの事象において複数のバリアを意識した監視を行っていることも明らかとなった。利根川流域で定期的な水質調査の実施をすべきと考えられる地域が示された。淀川流域で排出移動量が多く経口LD50の低い物質を示した。油類に特徴的に含まれるVOC成分のうち、連続VOC計により、原水への油類混入を検知できる見込みがある物質を提示した。アンケート調査により、特に急速ろ過方式の通常処理の浄水場について、連続自動水質計器の設置状況、活用状況について明らかにした。連続監視データの解析を行い、原水安定度を表現する一種の指標を提案した。浄水場のオゾン接触槽内の溶存オゾン濃度の変動の詳細についてデータを取得するとともに、オゾンの反応に関する数値モデルの酸化剤濃度の再現性について確認した。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201525009Z