災害時における医療チームと関係機関との連携に関する研究

文献情報

文献番号
201525003A
報告書区分
総括
研究課題名
災害時における医療チームと関係機関との連携に関する研究
課題番号
H25-健危-一般-011
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
小井土 雄一(独立行政法人国立病院機構災害医療センター 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 憲彦(防衛医科大学校)
  • 大友 康裕(東京医科歯科大学大学院)
  • 井上 潤一(山梨県立中央病院)
  • 定光 大海(国立病院機構大阪医療センター)
  • 松本 尚(日本医科大学)
  • 本間 正人(鳥取大学医学部)
  • 森野 一真(山形県立救命救急センター)
  • 中山 伸一(兵庫県災害医療センター)
  • 近藤 久禎(国立病院機構災害医療センター)
  • 阿南 英明(藤沢市民病院)
  • 石原 哲(白鬚橋病院)
  • 高橋 毅(国立病院機構熊本医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
4,585,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は、災害医療体制構築における課題に対して、対応のガイドライン、マニュアル等を提示することを目的とする。日本の災害医療体制は、阪神・淡路大震災の教訓に基づき進歩した。しかし、東日本大震災(以下3.11)においては、新たな課題が多く生まれた。3.11以降の災害医療の方向性は、「災害時における医療体制の充実強化について」(平成24年3月 厚生労働省医政局長通知)において、9項目の目標として提示されている。本研究班の目的は、これらの目標の具現化に貢献し、災害医療体制をより一層強化することである。
研究方法
3.11において、新たに生まれた下記の課題を検討した。
・3,11では、広域医療搬送が行われたが、地域医療搬送における指揮調整系統、SCUの柔軟な運用が課題となった。また、広域医療搬送については、南海トラフや首都直下の新たな想定が提示された。本研究では、新たな想定に基づいた広域医療搬送の具体的な計画を策定する際の基礎資料を整理するとともに、SCU、広域医療搬送、ドクヘリを含めた地域医療搬送の運用ガイドライン、マニュアルを提示する。・EMISは機能したが、課題も残った。これらの課題を踏まえ、災害医療コーディネーターにとっても有用なEMISのあり方を検討する。・災害医療のロジスティックに係わる様々な問題が提示された。そこで、本部機能のあり方、DMATロジスティックチームのあり方、中長期的な医療のロジスティックのあり方について検討する。・急性期から亜急性期への医療チームの引継ぎにおけるギャップが問題となった。急性期医療チーム(DMAT等)から、如何に一般救護班へ引き継ぐか具体的な手法を開発する。・消防と医療の連携、標準災害診療記録、トリアージタッグ、DMAT隊員管理、震災関連死、学術連携に関しても検討を行う。
本研究においては、上記の急性期から中長期にわたる災害医療の課題と解決案を提示し、それを政府総合防災訓練、DMAT研修等で試行して、その結果から解決策の評価を行い、政策提言を行う。
結果と考察
広域医療搬送に関しては、3.11で行われた航空医療搬送を検証し、SCUを設置場所と立地条件によりSCU運用パターンを4分類した。そして、政府総合防災訓練において、本研究班は、広域医療搬送訓練分科会のメンバーとして企画から参加し、それぞれのSCUパターンの役割を検証した。・地域医療搬送については、「被災地に参集したドクターヘリの統制方法―指揮系統―」を提示した。また、地域医療搬送に活用可能なリソースの活用手順を示した。・情報システムについては、EMIS機能の改訂を平成26年8月に実施し、政府総合防災訓練等を通してその検証を行なった。改訂は、災害医療コーディネーターが急性期から慢性期まで情報を一元化できるように、DMAT以外の医療チームの情報、また病院だけでなく避難所、救護所等の情報も発信・共有できるようにした。・ロジスティクスに関しては、高速道路SA等を活用したロジスティック拠点の設置・運営、関係業界団体と連携しての医療ガスや医薬品・医療資器材の確保、レンタカー・タクシー・福祉タクシー等の民間事業者と連携した移動手段・搬送手段の確保、衛星通信・無線を用いた通信網の確保等について政府総合防災訓練を通して検証した。また、DMATロジスティックチームの研修プログラムを作成し、26年度から定期開催した。・消防と医療の連携に関するガイドラインを作成し、DMATの即応性の確保に必要な事項をまとめた。・関係機関連携の研究については、他機関が連携して、継続的な支援を行うために、日本赤十字社(日赤)は、日赤災害医療コーディネーターを設置、国立病院機構は、初動医療班を設置、日本医師会は、JMATの隊員研修の標準化を試みた。・情報整理ツールについては、標準災害診療記録を完成し、日本集団災害医学会などのホームページを通じて広く意見を聴取するとともに訓練で使用し検証した。・3.11以降のDMAT運用に関する研修教育上の課題抽出を行い、研修内容を変更し、DMAT標準テキストの改訂に反映した。
結論
本研究班の目的は、「災害時における医療体制の充実強化について」の目標を具現化することであった。3.11の教訓は、成果物であるEMISの改訂、SCU・広域医療搬送・ドクヘリを含めた広域・地域医療搬送の運用ガイドライン、マニュアル、標準災害診療記録の作成に反映された。平成27年3月に発表された政府の「南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画」においても、SCUの運用方法など本研究班の提言が多く採用された。正に本研究の成果は、災害医療体制のより一層の強化に繋がっており、国民の安全、安心に貢献できたと考える。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

文献情報

文献番号
201525003B
報告書区分
総合
研究課題名
災害時における医療チームと関係機関との連携に関する研究
課題番号
H25-健危-一般-011
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
小井土 雄一(独立行政法人国立病院機構災害医療センター 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 憲彦(防衛医科大学校)
  • 大友 康裕(東京医科歯科大学大学院)
  • 井上 潤一(山梨県立中央病院)
  • 定光 大海(国立病院機構大阪医療センター)
  • 松本 尚(日本医科大学)
  • 本間 正人(鳥取大学医学部)
  • 森野 一真(山形県立救命救急センター)
  • 中山 伸一(兵庫県災害医療センター)
  • 近藤 久禎(国立病院機構災害医療センター)
  • 阿南 英明(藤沢市民病院)
  • 石原 哲(白鬚橋病院)
  • 高橋 毅(国立病院機構熊本医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は、災害医療体制構築における課題に対して、対応のガイドライン、マニュアル等を提示することを目的とする。日本の災害医療体制は、阪神・淡路大震災の教訓に基づき進歩した。しかし、東日本大震災(以下3.11)においては、新たな課題が多く生まれた。3.11以降の災害医療の方向性は、「災害時における医療体制の充実強化について」(平成24年3月 厚生労働省医政局長通知)において、9項目の目標として提示されている。本研究班の目的は、これらの目標の具現化に貢献し、災害医療体制をより一層強化することである。
研究方法
3.11において、新たに生まれた下記の課題を検討した。
・3,11では、広域医療搬送が行われたが、地域医療搬送における指揮調整系統、SCUの柔軟な運用が課題となった。また、広域医療搬送については、南海トラフや首都直下の新たな想定が提示された。本研究では、新たな想定に基づいた広域医療搬送の具体的な計画を策定する際の基礎資料を整理するとともに、SCU、広域医療搬送、ドクヘリを含めた地域医療搬送の運用ガイドライン、マニュアルを提示する。・EMISは機能したが、課題も残った。これらの課題を踏まえ、災害医療コーディネーターにとっても有用なEMISのあり方を検討する。・災害医療のロジスティックに係わる様々な問題が提示された。そこで、本部機能のあり方、DMATロジスティックチームのあり方、中長期的な医療のロジスティックのあり方について検討する。・急性期から亜急性期への医療チームの引継ぎにおけるギャップが問題となった。急性期医療チーム(DMAT等)から、如何に一般救護班へ引き継ぐか具体的な手法を開発する。・消防と医療の連携、標準災害診療記録、トリアージタッグ、DMAT隊員管理、震災関連死、学術連携に関しても検討を行う。
本研究においては、上記の急性期から中長期にわたる災害医療の課題と解決案を提示し、それを政府総合防災訓練、DMAT研修等で試行して、その結果から解決策の評価を行い、政策提言を行う。
結果と考察
広域医療搬送に関しては、3.11で行われた航空医療搬送を検証し、SCUを設置場所と立地条件によりSCU運用パターンを4分類した。そして、政府総合防災訓練において、本研究班は、広域医療搬送訓練分科会のメンバーとして企画から参加し、それぞれのSCUパターンの役割を検証した。・地域医療搬送については、「被災地に参集したドクターヘリの統制方法―指揮系統―」を提示した。また、地域医療搬送に活用可能なリソースの活用手順を示した。・情報システムについては、EMIS機能の改訂を平成26年8月に実施し、政府総合防災訓練等を通してその検証を行なった。改訂は、災害医療コーディネーターが急性期から慢性期まで情報を一元化できるように、DMAT以外の医療チームの情報、また病院だけでなく避難所、救護所等の情報も発信・共有できるようにした。・ロジスティクスに関しては、高速道路SA等を活用したロジスティック拠点の設置・運営、関係業界団体と連携しての医療ガスや医薬品・医療資器材の確保、レンタカー・タクシー・福祉タクシー等の民間事業者と連携した移動手段・搬送手段の確保、衛星通信・無線を用いた通信網の確保等について政府総合防災訓練を通して検証した。また、DMATロジスティックチームの研修プログラムを作成し、26年度から定期開催した。・消防と医療の連携に関するガイドラインを作成し、DMATの即応性の確保に必要な事項をまとめた。・関係機関連携の研究については、他機関が連携して、継続的な支援を行うために、日本赤十字社(日赤)は、日赤災害医療コーディネーターを設置、国立病院機構は、初動医療班を設置、日本医師会は、JMATの隊員研修の標準化を試みた。・情報整理ツールについては、標準災害診療記録を完成し、日本集団災害医学会などのホームページを通じて広く意見を聴取するとともに訓練で使用し検証した。・3.11以降のDMAT運用に関する研修教育上の課題抽出を行い、研修内容を変更し、DMAT標準テキストの改訂に反映した。
結論
本研究班の目的は、「災害時における医療体制の充実強化について」の目標を具現化することであった。3.11の教訓は、成果物であるEMISの改訂、SCU・広域医療搬送・ドクヘリを含めた広域・地域医療搬送の運用ガイドライン、マニュアル、標準災害診療記録の作成に反映された。平成27年3月に発表された政府の「南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画」においても、SCUの運用方法など本研究班の提言が多く採用された。正に本研究の成果は、災害医療体制のより一層の強化に繋がっており、国民の安全、安心に貢献できたと考える。

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201525003C

収支報告書

文献番号
201525003Z