アジア諸国における血漿分画製剤の製造体制の構築に関する研究

文献情報

文献番号
201523023A
報告書区分
総括
研究課題名
アジア諸国における血漿分画製剤の製造体制の構築に関する研究
課題番号
H26-地球規模A-指定-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
河原 和夫(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 梶原 武久(神戸大学 経営学研究科)
  • 松田 利夫(北里大学 薬学部)
  • 佐川 公矯(福岡県赤十字血液センター)
  • 伊藤 浩和(一般社団法人 日本血液製剤機構 戦略本部)
  • 小林 英哲(一般財団法人 化学及血清療法研究所 分画事業部門事業推進部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
8,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アジア諸国の血漿分画製剤の製造技術水準、生産性や国内市場の視点から製造体制、そして原料血漿の確保の現状などを調べた。また、わが国の医療現場で各社の分画製剤が如何にして選ばれているかを調査した。これらを通じて、わが国が有する安全で安心な血液事業を取り巻く技術・制度のアジア諸国への普及方策を検討し、結果を国際貢献に資することが研究目的である。
研究方法
一般市民と献血者を対象に血漿分画製剤事業に対するアンケート調査を実施した。
国内・国外の分画事業者の事業構造と価格構造の解析は、内外の企業のホームページ、調査会社購入資料、血液製剤調査機構資料をもとに、事業構造解析および価格構造の解析を行なった。国内事業者の海外展開の可能性とビジネスモデルを考察するために、学術論文や業界データの2次資料を使用し、アジア諸国における血漿分画製剤の供給体制と国際インフラ事業の先進事例である地方自治体による水道事業の海外展開に関する調査を行った。また、アジア諸国の血漿分画製剤の製造あるいは必要量を確保するための基礎的諸条件を研究するに当たり、ラオスにおける輸血用血液のスクリ-ニング検査結果を調査・分析し、加えてバンコクにあるタイ赤十字社所長等に対するインタビュー調査を行なった。また、2015年9月に上海で開催された“BioPlasma World Asia”に出席し、アジア各国の血漿分画製造事業の現状や将来展望に関する情報を入手した。
(倫理面への配慮)
研究の実施にあたっては、東京医科歯科大学医学部研究利益相反委員会および倫理審査委員会の承認を得ている。
結果と考察
国民の血液事業の認識の低さが本調査により明らかとなった。今後、一層の血液事業に関する国民の認識を高め、理解を得るような普及・啓発活動を強化していく必要がある。
同じく献血者の意識については、調査対象が複数回献血者群であるにもかかわらず、輸血用血液製剤および血漿分画製剤に関する知識は乏しいことが判明した。血液事業および血漿分画製剤事業に関する必要十分な情報や知識の普及・啓発が必要である。次に、海外分画事業者の事業構造や原価、連産構造などに注目して解析を行い、国内分画事業者との比較をすることにより、両者の事業性や競争力などについて考察した。
血漿分画製剤の事業構造に関して国外と国内の分画事業者に共通する部分として、一般的な製薬事業者と比較して原材料費の占める割合が高く、その中でも特に原料血漿価格の占める割合が高いことが挙げられる。原料血漿価格は、今回情報を入手できたEU数か国では、いずれも周辺諸国と価格調整を実施しており、およそ80€/L程度に調整していることが分かった。この価格は購買力平価で換算すると、日本より低い価格となっていた。国内・国外に共通してコストに占める原料血漿費用の割合が大きいので、原料血漿価格の差が直接原価に影響してくることになる。また、原価における原料血漿費用以外の部分の割合が低く、特に労務費の割合が海外事業者では低く抑えられているのではないかと推察された。
 国際インフラ事業の先進事例である水道事業の海外展開に関する調査を行い、国内の血漿分画製剤事業者の海外展開の可能性及びそのためのビジネスモデルについて検討を行った。その結果、国内事業者にとって海外事業は貴重な成長の機会として技術水準の維持・向上を目的とした設備投資や研究開発の原資の捻出や優秀な若手人材の確保による技術継承を可能とするものであり、血漿分画事業の強化に繋がることがわかった。
 アジア諸国の血漿分画製剤の製造体制に関しては、数年前にタイをはじめマレーシア、インドネシア、ベトナムなどの東南アジア諸国において、血漿分画製剤の自給に向けて、自国に血漿分画工場を建設するプロジェクトの発表が相次いだが、結局現段階で工場建設を具体的に進めることができたのはタイのみで、他の国々では進んでいない状況であることが今回の調査で知ることができた。
結論
国民や献血者の血液製剤及び血液事業に関する考えが把握できた。これらについての認知度は概して低いが、アジア諸国に対する国際貢献のために血漿分画製剤の輸出や技術協力については、肯定的な意見が多かった。また、国内における製造コストの問題、特に原料血漿の確保に要する費用がかかることなど、血漿分画事業の構造が明らかとなった。これらの課題を克服して、海外事業者とも伍して行ける事業モデルを構築して、アジア諸国に対する貢献を進めていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201523023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,800,000円
(2)補助金確定額
8,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 431,826円
人件費・謝金 3,612,917円
旅費 1,758,525円
その他 2,996,771円
間接経費 0円
合計 8,800,039円

備考

備考
利息発生のため

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-