ヘモビジランス(血液安全監視)体制のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201523011A
報告書区分
総括
研究課題名
ヘモビジランス(血液安全監視)体制のあり方に関する研究
課題番号
H25-医薬-指定-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
浜口 功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 栄史(愛知医科大学 輸血部)
  • 田中 朝志(東京医科大学八王子医療センター 臨床検査医学科(輸血部))
  • 米村 雄士(熊本大学医学部付属病院 輸血・細胞治療部)
  • 藤井 康彦(山口大学医学部付属病院 輸血部)
  • 紀野 修一(日本赤十字社 北海道ブロック血液センター)
  • 大坂 顯通(順天堂大学 医学部)
  • 岡崎 仁(東京大学 輸血部)
  • 百瀬 俊也(日本赤十字社 関東甲信越ブロック血液センター)
  • 豊田 九朗(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 平 力造(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 石井 博之(一般社団法人日本血液製剤機構 信頼性保証本部)
  • 北澤 淳一(福島医科大学)
  • 大谷 慎一(北里大学 学部)
  • 奥山 美樹(東京都立駒込病院 輸血・細胞治療科)
  • 大隈 和(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 松岡 佐保子(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
輸血の安全性を高いレベルに引き上げるために、国際社会における輸血に伴う副作用のヘモビジランス(サーベイランス)システムの必要性がヨーロッパにおいて認識され構築されてきた。本邦においては、ヘモビジランス研究グループが2007年より、2ヶ月に一度の副作用報告をWeb上で入力し、集計解析を行う活動を進めてきた。本研究課題において、輸血副作用報告システムを強化することにより、ヘモビジランスから得られる情報について、多様な観点から評価を行い、新たな安全技術導入やリスクに迅速かつ柔軟に対応する。また、有害事象発生の原因が、製剤そのものにあるのか、血液製剤を使用された患者側の要因にあるのか、その双方が関与しているのか、さらにインシデントやアクシデントを含めて製剤を扱う医療機関にあるのかなどを調査検討するためには、発生した有害事象を記録・報告し、その原因を究明し、発生防止対策をとることが必要である。これらの課題を解決するために、献血者の選択から受血者の転帰まで(Transfusion chain)を追跡できるシステム(トレーサビリティシステム)を構築する。
研究方法
現行のヘモビジランス活動において、改善すべき課題を挙げ、解決に向けた検討を行う。海外のヘモビジランス活動を調査するとともに、諸外国で実施されているヘモビジランスとの整合性、既存オンライン報告システムの拡充、学会および日本赤十字社との協力体制の強化など図る。これらの課題を解決するには、診療科別の副作用発生調査、病院規模に適した副作用報告体制の構築、現在の症状項目•診断項目表の修正と輸血関連性・重症度の基準作成、ヘモビジランス普及の啓発活動、医師・看護師・検査技師の教育プログラム作成、インシデントの捕捉等既存のシステムの改良・改善に加え、必要な活動のさらなる拡充を図る。トレーサビリティ構築においては、1)病院側から提出されたデータの血液バッグの製造番号に見合う日赤側のデータを抽出することによる紐付け作業の軽減、2)収集データの定義明確化(データ型、データ長など)、3)データ入力誤りを減らす工夫(例えば男性を表す表現として男、男性、Mなど施設間で差異があるが、それを一つのことばに統一すること)を記載した医療機関用データ入力マニュアルを作ること、4)データ収集をCSV形式からエクセルの表形式とすることなどの作業を行った後に、データ収集を行う。
結果と考察
海外における輸血監視システムの評価と日本の位置づけにおいては、アジア諸国の輸血監視体制の整備に、日本としても連携を取り協力していく体制を築いていくことが重要であることが明確となった。既存オンライン報告システムの拡充においてはアンダーレポートの問題が存在し、看護師、医師等の臨床現場に従事する医療者の教育が重要である事が認められた。病院規模に適した副作用報告体制の構築においては、診療所・小規模病院向けに輸血勉強会を開催した。現在の症状項目•診断項目表の修正と輸血関連性・重症度の基準作成については、ISBT Working Party on Haemovigilance の標準定義案を参考にして、輸血関連性と重症度の基準の素案を作成した。教育プログラム作成では看護師に特化したプログラムを作製した。診療科別の輸血副作用発生状況では、FFP及びPCの副作用発生頻度の高い診療科が存在することが明らかとなった。ヘモビジランス普及の啓発活動では看護師教育用のスライドをさらに拡充した。学会および日本赤十字社との協力体制の強化については、日本赤十字社ヘモビジランス会議において情報の共有と課題への検討を行った。トレーサビリティ構築においては、前年度のパイロット・スタディで明らかにされたデータ収集に関わる問題点を改善し、より多くの施設を対象に研究を行った。また、そのデータを用いて、献血者性別と輸血有害事象など関連性を解析した。
結論
既存のヘモビジランスシステムの改良・改善を図っていくことにより、輸血副作用対策において迅速かつ正確な状況判断ができるシステムの構築につながった。レーサビリティ構築においては、今回開発したシステムを改良し、前向きなリアルタイム・トレーサビリティシステムを構築することで、血液製剤の安全対策が効率的に行えるようになると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201523011B
報告書区分
総合
研究課題名
ヘモビジランス(血液安全監視)体制のあり方に関する研究
課題番号
H25-医薬-指定-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
浜口 功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 栄史(愛知医科大学 輸血部)
  • 田中 朝志(東京医科大学八王子医療センター 臨床検査医学科(輸血部))
  • 米村 雄士(熊本大学医学部付属病院 輸血・細胞治療部)
  • 藤井 康彦(山口大学医学部付属病院 輸血部)
  • 紀野 修一(日本赤十字社 北海道ブロック血液センター)
  • 大坂 顯通(順天堂大学 医学部)
  • 岡崎 仁(東京大学 輸血部)
  • 百瀬 俊也(日本赤十字社 関東甲信越ブロック血液センター)
  • 豊田 九朗(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 平 力造(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 石井 博之(一般社団法人日本血液製剤機構 信頼性保証本部)
  • 北澤 淳一(福島医科大学)
  • 大谷 慎一(北里大学医学部)
  • 奥山 美樹(東京都立駒込病院 輸血・細胞治療科)
  • 大隈 和(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 松岡 佐保子(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
輸血の安全性を高いレベルに引き上げるために、国際社会における輸血に伴う副作用のヘモビジランス(サーベイランス)システムの必要性がヨーロッパにおいて認識され構築されてきた。本邦においては、ヘモビジランス研究グループが2007年より、2ヶ月に一度の副作用報告をWeb上で入力し、集計解析を行う活動を進めてきた。本研究課題において、輸血副作用報告システムを強化することにより、ヘモビジランスから得られる情報について、多様な観点から評価を行い、新たな安全技術導入やリスクに迅速かつ柔軟に対応する。また、有害事象発生の原因が、製剤そのものにあるのか、血液製剤を使用された患者側の要因にあるのか、その双方が関与しているのか、さらにインシデントやアクシデントを含めて製剤を扱う医療機関にあるのかなどを調査検討するためには、発生した有害事象を記録・報告し、その原因を究明し、発生防止対策をとることが必要である。これらの課題を解決するために、献血者の選択から受血者の転帰まで(Transfusion chain)を追跡できるシステム(トレーサビリティシステム)を構築する。
研究方法
現行のヘモビジランス活動において、改善すべき課題を挙げ、解決に向けた検討を行う。海外のヘモビジランス活動を調査するとともに、諸外国で実施されているヘモビジランスとの整合性、既存オンライン報告システムの拡充、学会および日本赤十字社との協力体制の強化など図る。これらの課題を解決するには、診療科別の副作用発生調査、病院規模に適した副作用報告体制の構築、現在の症状項目•診断項目表の修正と輸血関連性・重症度の基準作成、ヘモビジランス普及の啓発活動、医師・看護師・検査技師の教育プログラム作成、インシデントの捕捉等既存のシステムの改良・改善に加え、必要な活動のさらなる拡充を図る。また、トレーサビリティ構築については、平成25年度からの3年間計画で、日本赤十字社のトレーサビリティと医療機関のトレーサビリティをシームレスにつなぐためのシステムを構築し、パイロット・スタディを行う。
結果と考察
海外における輸血監視システムの評価と日本の位置づけにおいては、欧州を中心に発達してきたヘモビジランスの概念は個々の国々で独自に発展してきたが、アジア諸国の輸血監視体制の整備に日本としても連携を取り協力していく体制を築いていくことが重要であることが明確となった。既存オンライン報告システムの拡充においては、臨床現場で副作用を把握する認識能力が重要であり、医師、看護師などの輸血医療に携わる医療者の教育が重要である事が認められた。現在の症状項目•診断項目表の修正と輸血関連性・重症度の基準作成については、ISBT Working Party on Haemovigilance の標準定義案を参考にして、輸血関連性と重症度の基準の素案を作成した。教育プログラム作成では、それぞれの医療職に特化した輸血副作用に関する教育が必須と考えられた。診療科別の輸血副作用発生状況では、FFP及びPCの副作用発生頻度の高い診療科が存在することが明らかとなった。ヘモビジランス普及の啓発活動では看護師教育用のスライドをさらに拡充した。学会および日本赤十字社との協力体制の強化については、日本赤十字社ヘモビジランス会議において情報の共有と課題への検討を行った。トレーサビリティ構築については、輸血用製剤の血液バッグの製剤番号をキーとして、日本赤十字社のもつ製剤情報と、医療機関のもつ輸血実施に関するデータを紐付けすることが可能であることが実証された。そして、紐付けされたデータを解析することにより、リアルタイムで効率的なヘモビジランス体制を構築できることが示唆された。
結論
既存のヘモビジランスシステムの改良・改善を図っていくことにより、輸血副作用対策において迅速かつ正確な状況判断ができるシステムの構築につながった。トレーサビリティ構築については、1)血液製剤のトレーサビリティには、遡及による後方視的監視とtransfusion chainに沿った前方視的監視が必要である。2)トレーサビリティの確立により、様々な分野で安全な輸血医療を進展させうる成果が期待できる。3)Transfusion chainに沿ったトレーサビリティに関する後方視的パイロット・スタディにより、日本赤十字社がもつ血液製剤の情報と医療機関がもつ患者有害事象データを連結し、解析できることが確認でき、今後前向きなリアルタイム・トレーサビリティシステムを構築することで、血液製剤の安全対策が効率的に行えるようになると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201523011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
Transfusion chainに沿ったトレーサビリティに関する後方視的パイロット・スタディにより、日本赤十字社がもつ血液製剤の情報と医療機関がもつ患者有害事象データを連結し、解析できることが確認できた。
臨床的観点からの成果
既存のヘモビジランスシステムの改良・改善を図っていくことにより、輸血副作用対策において迅速かつ正確な状況判断ができるシステムの構築につながった。また、今回開発したシステムを改良し、前向きなリアルタイム・トレーサビリティシステムを構築することで、血液製剤の安全対策が効率的に行えるようになると考えられる。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
22件
原著論文(英文等)
18件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
105件
学会発表(国際学会等)
14件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kato H Uruma M Okuyama Y et al
Incidence of transfusion-related adverse reactions per patient reflects the potential risk of transfusion therapy in Japan.
Am J Clin Pathol , 140 , 219-224  (2013)
原著論文2
Odaka C Kato H Otsubo H et al
Online reporting system for transfusion-related adverse events to enhance recipient haemovigilance in Japan: a pilot study.
Transfus Apher Sci , 48 , 95-102  (2013)
原著論文3
加藤栄史 高本滋
我が国におけるヘモビジランスの現状と輸血医療における有用性
日本輸血•細胞治療学会誌 , 59 , 443-449  (2013)
原著論文4
田中朝志、 牧野茂義、 紀野修一 他
2013年度日本における輸血管理及び実施体制と血液製剤使用実態調査報告
日本輸血•細胞治療学会誌 , 60 , 600-608  (2014)
原著論文5
Kato H, Nakayama T, Uruma M et al
A retrospective observational study to assess adverse transfusion reactions of patients with and without prior transfusion history.
Vox Sang , 108 , 243-250  (2015)
原著論文6
Kato H, Nakayama T, Uruma M et al
Repeated exposure rather than the total volume of transfusion components may influence the incidence of allergic transfusion reactions.
Transfusion , 55 , 2576-2581  (2015)
原著論文7
Ohsaka A, Kato H, Kino S et al
Recommendations for the electric pre-transfusion check at the bedside.
Blood Transfus  (2016)
10.2450/2016.0184-15
原著論文8
岩尾憲明、 加藤栄史、 小高千加子 他
輸血副作用サーベイランスにおけるunderreporting.
日本輸血細胞治療学会誌 , 61 , 561-566  (2015)
原著論文9
藤井康彦、田中朝志、小高千加子、他
診療科別輸血製剤副作用発生率の調査
日本輸血細胞治療学会誌 , 62 , 451-458  (2016)
原著論文10
Ikebe E, Matsuoka S, Tanaka A et al
Reduction in adverse transfusion reactions with increased use of washed platelet concentrates in Japan―A retrospective multicenter study
Transfusion and Apheresis Science , 58 (2) , 162-168  (2019)
10.1016/j.transci.2018.12.021.

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
2019-06-05

収支報告書

文献番号
201523011Z