危険ドラッグおよび関連代謝産物の有害性予測法の確立と乱用実態把握に関する研究

文献情報

文献番号
201523005A
報告書区分
総括
研究課題名
危険ドラッグおよび関連代謝産物の有害性予測法の確立と乱用実態把握に関する研究
課題番号
H27-医薬A-一般-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
舩田 正彦(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 栗原正明(国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部)
  • 浅沼幹人(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科神経情報学分野)
  • 北市清幸(岐阜薬科大学薬物動態学教室)
  • 嶋根卓也(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多種類の危険ドラッグの流通が問題となっている。迅速な規制対応をするためには、それぞれの危険ドラッグが示す中枢作用及び毒性特性に応じた科学的データを収集する必要がある。本研究では、長鎖アルキル基を有するカチノン系化合物の運動活性および細胞毒性の評価を行い、その化学構造と有害作用発現強度の関連性を検討した。また、危険ドラッグの流通及び規制状況を把握する目的で、危険ドラッグを含む薬物乱用実態及び規制周知状況に関する疫学調査を実施した。
研究方法
流通が問題となっている長鎖アルキル基を有するカチノン系化合物を対象として、類似の化学構造を有する物質に関する有害作用予測法の妥当性を検討した。カチノン系化合物による中枢興奮作用について解析した。また、カチノン系化合物の作用点としてドパミントランスポーター(DAT)に着目して、DATに関するドパミン取り込み阻害の強度に関する文献値を利用してコンピュータシミュレーション法による予測値の算出を実施した。中枢興奮作用とDATに関するドパミン取り込み阻害強度の相関性を利用して危険性予測を行った。検出系の研究として、in vitro発光検出系を利用してフェネチルアミン系、ピペラジン系、インドールアルカロイド系薬物のモノアミン酸化酵素(MAO)の阻害活性について検討した。また、合成カンナビノイドであるAB-CHMINACAとAMBのin vitroでの代謝物産生を解析した。疫学調査:音楽系の野外フェスティバルをフィールドとして、危険ドラッグ乱用実態に関する調査研究を実施した。調査協力の得られた2回の野外フェスティバルの参加者806名を対象に、携帯端末を活用したオンライン調査を実施した。
結果と考察
長鎖アルキル基を有するカチノン系化合物14種類による中枢興奮作用の発現と、構造活性相関(QSAR)解析によるドパミン取り込み阻害強度に関する相関性を検討したところ、正の相関が認められた。長鎖アルキル基を有するカチノン系化合物の作用強度を推測する場合、中枢興奮作用は行動薬理学的指標として有用である。同様に、コンピュータシミュレーション法によるドパミン取り込み阻害強度の予測値との相関性も良好であり、効果的な推測が可能であると考えられる。MAO活性阻害検出の検討:催幻覚成分であるharmalineおよびharmineは極めて高いMAO阻害活性を示した。また、フェネチルアミン系危険ドラッグ2CT-7、PMMA、4FMPは、メタンフェタミンと同等のあるいはそれ以上のMAO阻害活性を有することが確認された。代謝産物の検出:機器分析により、合成カンナビノイドAB-CHMINACAおよびAMBの代謝産物を検出した。代謝機構が明らかにされていないAMBは、ただちに複数の代謝物に代謝されるが、その脱メトキシ体代謝物 (M1) はそれ以上の代謝を受け難いことが明らかになった。M1はAMBやAMBに構造の類似した合成カンナビノイドの摂取を裏付ける生体内マーカーとなる可能性がある。疫学調査:806名より有効回答を得た。危険ドラッグの生涯経験率は16.7%、過去1年経験率は2.6%であった。危険ドラッグ乱用者の36.3%は、危険ドラッグを「2~5回」使用しており、「10回以上(22.2%)」使用していた者もみられた。指定薬物制度に対する周知状況は、危険ドラッグ乱用者の66.7%は指定薬物制度を周知していた。
結論
本研究では、長鎖アルキル基を有するカチノン系化合物の中枢興奮作用を指標にした危険性予測を実施した。現在のカチノン系化合物包括指定範囲外の薬物についても、DAT機能に関するQSAR解析により、中枢興奮作用等の危険性を予測できることが確認された。本検討で用いたMAO活性検出システムは、高感度で簡便なMAO阻害活性検出手法であり、危険ドラッグの有害作用の蓋然性をスクリーニングする有用な手法として期待できる。また、代謝産物の検出に関する研究では、AMBの解析からAMBの脱メトキシ体代謝物であるM1はAMBやAMBに構造の類似した合成カンナビノイドの摂取を裏付ける生体内マーカーとなる可能性がある。疫学調査:危険ドラッグの生涯経験率は16.7%、過去1年経験率は2.6%であり、流通規制が効果を示したと考えられる。一方、危険ドラッグ乱用者の中に頻回使用者が存在することが判明した。本研究の危険ドラッグを解析する評価システムは、危険ドラッグの中枢作用および有害作用発現の迅速な評価法として有用であり、得られる科学データは規制根拠として活用できると考えられる。危険ドラッグの乱用拡大は依然として深刻な状況であり、乱用防止のために規制の在り方を再考し一層の啓発が必要である。

公開日・更新日

公開日
2019-07-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201523005Z