文献情報
文献番号
201522046A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノム情報を基盤とした国内外で流行する病原大腸菌のデータベース化と検査態勢の整備に関する研究
課題番号
H27-食品-若手-018
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
井口 純(国立大学法人 宮崎大学 農学部)
研究分担者(所属機関)
- 勢戸 和子(大阪府立公衆衛生研究所 感染症部 細菌課)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
3,270,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
海外からの食品の輸入や旅行者の往来が頻繁な昨今において、国際的な流行状況にも注意を払いながら、我が国における病原大腸菌の侵入や汚染実態を監視し、食の安全を確保する必要がある。本研究では、世界で流行する毒素原性大腸菌(ETEC)に注目し、世界流行株と国内分離株の細菌学的または遺伝学的な解析を行い、国際的な流行状況下における国内の動向を把握することを目的とした
研究方法
大阪府立公衆衛生研究所などで分離された国内分離ETEC 263株を用いて、O群、エンテロトキシン型、接着因子のタイプ、薬剤感受性などを解析し、その特徴を明らかにした。さらに世界各国で分離されたETEC 362株のゲノム情報を用いて、国内分離株と同等の結果が得られれる解析を行い、その特徴を明らかにした。
結果と考察
国内分離株の特徴としては、少なくとも17種類のO血清群が確認され、主要なものについてはO6(19%)、O25(17%)、O169(11%)、O159(11%)、O126(10%)であった。一方で、海外分離株の特徴は、O25(7%)、O27(5%)、O114(5%)、O115(4%)、O159(4%)、O78(4%)、O167(4%)であった。
国内分離株を直前に海外渡航歴がある患者と無い患者で分けた場合、O6、O25、O169、O159などはどちらのグループにおいても共通するO群であった。さらに、ゲノム解析を行った海外分離株においても上位に共通するO群が確認された。以上の結果から、海外で流行しているETECと同一系統クローン株が国内にも侵入し、集団または散発事例の原因となっている可能性が示唆された。
国内分離株を直前に海外渡航歴がある患者と無い患者で分けた場合、O6、O25、O169、O159などはどちらのグループにおいても共通するO群であった。さらに、ゲノム解析を行った海外分離株においても上位に共通するO群が確認された。以上の結果から、海外で流行しているETECと同一系統クローン株が国内にも侵入し、集団または散発事例の原因となっている可能性が示唆された。
結論
国内外で分離されたETECの血清型、病原性関連遺伝子の保有パターン、薬剤感受性パターンなどの特徴が明らかとなった。現在、国内分離株の進化系統解析を進めており、それぞれのデータに時空間的な疫学情報を加えて総合的に解析することにより、ETECの変遷や出現について新たな知見が得られるものと期待される。これらの情報を有効に利用し、実用性の高いETECの分離法や検査法を提案していきたいと考える。
公開日・更新日
公開日
2016-07-21
更新日
-