食品摂取量の調査方法及び化学物質の暴露量推定方法の研究

文献情報

文献番号
201522038A
報告書区分
総括
研究課題名
食品摂取量の調査方法及び化学物質の暴露量推定方法の研究
課題番号
H27-食品-指定-013
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
西 信雄(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 国際産学連携センター)
研究分担者(所属機関)
  • 三好美紀(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 国際産学連携センター)
  • 佐々木敏(東京大学大学院 医学系研究科 公共健康医学専攻)
  • 登田美桜(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 食品中の残留農薬、食品添加物、食品汚染物質等の暴露量評価を行うためには、年間(四季)を通じた食品摂取状況、多食者の状況、加工食品等の摂取量データが必要となる。現在これらの暴露量推定に用いられている食品摂取量データは、国民健康・栄養調査に準じ、平成17年~19年に厚生労働省医薬食品局食品安全部(当時)により実施されたものである。
 食品中の残留農薬について、従来のADI(一日摂取許容量、慢性毒性の指標)に対する長期暴露量の推定に加えて、ARfD(急性参照用量、急性毒性の指標)に対する短期暴露量の推定も検討が必要である。この評価に際しては、各食品について、統計学的に十分な信頼度がある多食者のデータが必要であるが、幼小児や妊婦等のハイリスクグループについてはデータ数が不足している食品がある。さらに、農薬、汚染物質及び食品添加物の各規格基準については、基準が設定される食品・食品グループが異なっており、それらを踏まえ、加工・調理された食事のデータを各食品の摂取量に換算する必要がある。
 このような状況、および少子高齢化が進んでいることを踏まえ、国内外の状況について情報収集し、それらを参考として、食品摂取量調査の方法、及び食品中の残留農薬、汚染物質及び食品添加物の暴露量推定方法の検討を行うことを目的とした。
研究方法
1)海外における摂取量調査の調査
 文献調査およびインターネットによるホームページ閲覧により情報を収集し整理した。アジア諸国(中国、韓国、ベトナム、マレーシア等)を中心に、北米(アメリカ、カナダ)、中南米(メキシコ、ブラジル)、大洋州(オーストラリア、ニュージーランド)、欧州連合の各国の食事調査、栄養調査の方法について調査を行った。
2)日本を代表する偏りのない調査方法の検討
 国民健康・栄養調査の地域ブロック等を参考に、日本のデータとして偏りが生じないよう調査地域や調査対象について検討を行った。
3)日本の世帯状況を踏まえた調査手法や誤りが少ない記入法・集計法の検討
 幼小児や妊婦を含め適正なデータが収集できる調査対象を検討した。また、効率的・能率的な調査を行えるよう、誤りが少ない記入方式や集計方法について検討を行った。
4)暴露評価のための食事摂取量から各食品摂取量への換算・集計方法の検討
 食品中の残留農薬及び汚染物質に関する暴露評価への利用を目的に、食事内容から各食品の摂取量への換算・集計方法を検討した。
結果と考察
1)海外における摂取量調査の調査
 対象者のサンプリングについては、国勢調査等のデータをもとに層化多段無作為抽出を行っているものが多くみられた。中国やブラジルのように、社会経済的指標を層化で考慮している国もあった。食事調査法については、多くの国で24時間思い出し法単独あるいは24時間思い出し法と食物摂取頻度調査法(FFQ)を併用した方法を採用しており、アメリカやカナダでは、コンピュータを用いた標準化された方法で調査を行っていた。
2)日本を代表する偏りのない調査方法の検討
 地域区分については、国民健康・栄養調査で用いられている12地域ブロックをまとめて、北海道・東北、関東信越、東海北陸、近畿、中国四国、九州の6ブロックに分けることが提案された。地域特性とともに住民の特性を反映させるため、各地域ブロックから都市部、農村部、漁村部を対象地区に含める方針とした。年齢は6歳以下、7-64歳、65歳以上(高齢者)に大きく分け、各性・年齢群で最低120人を対象とすること、また妊娠可能年齢の女性も集計対象とすることとした。
3)日本の世帯状況を踏まえた調査手法や誤りが少ない記入法・集計法の検討
 近年、外食や中食など食事の形態が多様化していることから、世帯のうちの一名を対象として、食事記録法と24時間思い出し法を併用して調査を行うことが提案された。調査日数については四季の各季節において連続しない2日間、計8日間の調査とすることとした。
4)暴露評価のための食事摂取量から各食品摂取量への換算・集計方法の検討
 暴露評価では摂取時の重量ではなく、調理前の食品の重量および調理法の情報が必要である。食事記録法と24時間思い出し法を併用することで対象者の負担を軽減しつつ、対象者と調査員、調査事務局が迅速に連絡を取り合えるシステムを構築することとした。
結論
 食品中の残留農薬、食品添加物、食品汚染物質等の暴露量評価を行うための食品摂取量調査の方法について、海外の食事調査も参考に検討したところ、全国6つの地域ブロックにおいて都市部、農村部、漁村部を対象地区に含めて、各季節の連続しない2日間、計8日間について、世帯のうちの一名を対象として、食事記録法と24時間思い出し法を併用することで対象者の負担を軽減しつつ調査を実施することが重要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2016-07-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201522038C

成果

専門的・学術的観点からの成果
食品中の残留農薬、食品添加物、食品汚染物質等の暴露量評価を行うための食品摂取量調査の方法を検討することを目的として研究を実施した。海外の食事調査、栄養調査の方法をもとに対象者の抽出方法を検討するとともに、食事調査法については食事記録法と24時間思い出し法を併用することで対象者の負担を軽減しつつ、対象者と調査員、調査事務局が迅速に連絡を取り合えるシステムを構築することを提案した。
臨床的観点からの成果
食品摂取量調査により評価された食品中の残留農薬、食品添加物、食品汚染物質等の暴露量データは、急性暴露あるいは慢性暴露の有所見者の診療において有用なものである。本研究は、適切な曝露量評価を行うための食品摂取量調査の方法を検討した点で、臨床的観点からも有意義である。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
現在暴露量推定に用いられている食品摂取量データは、国民健康・栄養調査に準じ、平成17年~19年に厚生労働省医薬食品局食品安全部(当時)により実施されたものである。国際機関や欧米等では、定期的に食品摂取量データが更新されており、我が国においても前回調査より約10年が経過しており、食品摂取の傾向が大きく変化している可能性があることから新たに調査を実施する必要がある。本研究の成果は、次期調査の方法を検討したものであり、その実施に指針を与えるものである。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2016-06-10
更新日
2020-10-02

収支報告書

文献番号
201522038Z