定性的手法を用いた労働災害防止対策に対する労働者の認識の分析

文献情報

文献番号
201521012A
報告書区分
総括
研究課題名
定性的手法を用いた労働災害防止対策に対する労働者の認識の分析
課題番号
H27-労働-一般-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
熊崎 美枝子(国立大学法人 横浜国立大学 環境情報研究院 人工環境と情報部門)
研究分担者(所属機関)
  • 岡田 賢(産業技術総合研究所 安全科学研究部門)
  • 清水 芳忠(神奈川県産業技術センター)
  • 庄司 卓郎(産業医科大学 産業保健学部)
  • 牧野 良次(産業技術総合研究所 安全科学研究部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
6,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
継続的な災害防止対策は労働者の積極的な参加が必須である。そのために、労働者の対策に対する認識、取り組む動機、取組みによる反応、影響を与える要因等を踏まえて効果的に進める必要がある。労働災害事故件数が下げ止まりの傾向が依然続いており、対処療法的な取り組みだけではなく、本質的で前向きな労働者による取り組みの醸成が求められている中、好ましい労働災害防止運動を支える労働者の認識やそれに影響を及ぼす要因とその構造を明らかにすることは災害防止対策への取り組みを無理なく積極的に促すような環境整備に資することができ、労働者の積極的な参加が期待できる。
 そのためには、好事例の背景にある労働者の認識、彼らの価値観や取り組む動機、取組みに対する反応などを、形式化して個別の事業所・産業に留めることなく共有できるようにすることが有用であると考えられる。労働者の災害防止対策についての認識・反応という観点で彼らの内的経験を整理し、要因間の因果関係、補完関係、対立関係等から構造化し、理解を得ることで、労働災害対策の取り組みを無理なく積極的に促すような環境整備に資することが出来ると期待できる。
研究方法
本研究では、主にヒアリングを用いて労働者の意識を収集し、結果をコーディングし、安全意識の構成要素や影響要因の抽出,グループ化(類型化),要素間の関係分析を行う定性的研究手法を用いて分析する。
 初年度である平成27年度は、ヒアリングによる情報収集のための基礎的な調査として、既存の国内外の好事例集を検討するとともに、研究組織の知見を含めて労働者の内的経験を概念化する上で詳細な解析が必要な箇所を明確化する。次年度には、事業所にてヒアリングを実施し、データを収集する。データをコーディング(文章を構成する箇所の概念化),類型化,分析を行い、労働者の認識を構成する要素の関係を明らかにする。最終年度には調査結果に基づき構造化する。関係学協会と連携により構造化結果の検証を行い、労働者の意識の「見える化」および応用に耐える概念となるよう強化する。
結果と考察
国内の事例については書籍、もしくはインターネットで一般に公開された資料(事例集等)を元にした調査を試みた。ウェブ上に活動を公開している事業所は、公共性の高い事業所(市役所等)、製造業、運輸業が多く、公開された情報の大半は簡潔に整理されたものであり、「従来の問題点」と「取り組みの内容」のみを簡潔に記したものであった。これらの資料から労働者の声を直接入手することは困難であると判断し、労働者の声をより直接入手する手段として、当初研究計画への追加項目として短文の投稿を共有できるウェブサービスを調査した。調査は「現場」「安全」等の検索語句を利用し「安全衛生活動に対する感想・評価・意見」を抽出し、「監督官・厚生労働省への期待」「安全対策への好感」などの項目に分類した。
 国外の事例では2001年から2014年までに学術雑誌に発表された論文から、学術論文データベースWeb of Scienceを利用してキーワードを含む論文検索を行った。『安全』『労働』『態度・認識・考え』に該当する検索語句を利用した。この時点で得られた論文は315件であった。得られた論文の要旨を精読し、労働者の安全認識に関連しない内容の論文を調査対象から除いた結果、残った177件の論文を調査対象とした。その結果、労働者の認識に影響を与える因子として特に「取り巻く人(取締役,上司,同僚)」「システム」「仕事環境」「対象となる個人(作業者本人)」が抽出できた。その他対象となる個人に直接作用する要因として(個人の現在の)家庭環境や景気などが上げられた。これらを元に、各項目について調査するためのインタビュー素案を作成した。
それを用いて化学系企業の労働者1名,研究所勤務の非正規雇用者3名にパイロットインタビューを実施し、結果を詳細に検討した上で次年度に実施するインタビューの具体的な質問項目,面談方法について設定を行った。
結論
本年度では、本格的なヒアリングの前の作業として、国内については労働者の生の声の収集として短文の投稿を共有するウェブ上の情報サービスを利用した。国外の事例では、国際論文誌を調査し、労働者の認識に影響を与える因子を得ることが出来た。それらを利用して、ヒアリングに利用する調査項目を確定し、インタビュー素案を作成した。
 研究の最終的な目標である「ヒアリングを通じた労働者の認識の理解」のための適切なバックデータを得ることが出来た。

公開日・更新日

公開日
2016-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201521012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,900,000円
(2)補助金確定額
8,900,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,158,563円
人件費・謝金 2,209,400円
旅費 876,772円
その他 655,265円
間接経費 2,000,000円
合計 8,900,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-06-01
更新日
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