医師国家試験の在り方に関する研究

文献情報

文献番号
201520054A
報告書区分
総括
研究課題名
医師国家試験の在り方に関する研究
課題番号
H27-医療-指定-022
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
高木 康(昭和大学医学部 医学教育学教室)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
2,550,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 医師として国民から信頼される医療を実施するには、医療人としてのプロフェッショナリズムを涵養し、十分な知識と技能を修得しており、医療人としての態度を涵養することが前提である。これら知識、技能および態度の修得の評価は、知識は必修項目、総論、各論から出題される多肢選択肢問題(MCQ)500題により行われている。
 また、参加型臨床実習のstudent doctorとなるための共用試験での知識を問う問題はCBT(computer-based testing)により行われている。このCBTでは通常の多肢選択肢問題(MCQ)だけではなく、後戻りできない機能を設定すること等により、医師として重要な臨床推論能力を評価する問題を作成することも可能である。
これらを踏まえ、
①諸外国での医師国家試験の筆記試験の実態を調査し、特にCBT形式での出題形式、作成過程などを明確にすること。
②CBT形式での利点と設備を含む問題点を明らかとして、医師国家試験に導入する際のシステムについて提言すること。
上記の2点を本研究の目的とした。
研究方法
 主な研究項目を下記1.~5.に分けて研究・精査を行った。
1.諸外国の医師国家試験のありかたの比較研究
諸外国の試験制度で用いられている知識を評価する筆記試験、これに準ずる試験形式(特にコンピュータを使用した試験システムとその内容)について詳細な調査を行い、我が国の医師国家試験の改善にあたっての参考にする。
2.コンピュータを用いた試験の国家試験への応用の検討
コンピュータを用いた試験(CBT)の現行の試験形式以外の領域への応用(特に、医師として必要な知識ばかりでなく技能や態度の評価への適応)について検討を行う。。
3.医療系大学間共用試験実施機構(CATO)のCBTの内容の精査
現在、我が国のすべての医学部で臨床実習前にCATOの共用試験が行われており、技能態度についてはOSCEで行われ、知識についてCBTにより評価されている。CATOで使用されているCBTシステムの詳細について検討し、医師国家試験に導入できるシステムを検討する。
4.医師国家試験へのCBT導入に関する研究
CATOのCBTの良い点を再考察し、医師国家試験へ導入する場合の問題点について検討するとともに、9,000人超が受験する医師国家試験への導入に向けた課題について抽出・検討を行う。
5.医師国家試験のパイロットとしての試験問題の研究
CBT形式での医師国家試験の試作問題を作成し、試行してCBT形式の問題の問題点を明らかにして、改善のポイントを明確にする。
結果と考察
 本研究では、外国(台湾、アメリカ、インドネシア)の医師国家試験について視察し、CBTを含めた現状と問題点を検討した。今回、視察した国では医師国家試験としてCBTを導入している、マルチメディアについては、画像は使用されているが、動画や音声などは使用されていない。アメリカでは、音声については一部使用されているが、動画については現在検討中とのことである。
 我が国では医療系大学間共用試験実施評価機構が主催する共用試験でCBTが実施されている。このCBTをこれら3か国のCBTと比較すると、概要はほぼ同等な内容である。共用試験CBTでも動画や音声などのマルチメディアの使用が検討されている。深い知識を評価するにはマルチメディアを使用したCBTもその有効な手段の1つと考えられる。
結論
 我が国の医師国家試験は冊子による筆記試験が行われている。この様式では、深い知識を評価するのは必ずしも容易ではなく、補完する手段を考える必要がある。マルチメディアを使用したCBTはその1つの手段であり、今後はこれを利用したCBTの開発が必要である。また、視察した3か国では医師国家試験としてCBTとOSCEが併用されており、両方を合格することが必須となっている。我が国でも医科大学・医学部によるPCC=OSCE(post-clinical clerkship OSCE)の実施が計画されており、マルチメディアを使用したCBTとOSCEにより国民の健康増進に貢献する医師の育成が行われることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2018-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201520054C

収支報告書

文献番号
201520054Z