処方箋の電子化に伴う情報連携・情報利活用・プライバシー保護のあり方に関する調査研究

文献情報

文献番号
201520042A
報告書区分
総括
研究課題名
処方箋の電子化に伴う情報連携・情報利活用・プライバシー保護のあり方に関する調査研究
課題番号
H26-医療-指定-039
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
山本 隆一(東京大学 大学院医学系研究科医療経営政策学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 樋口 範雄(東京大学 大学院法学政治学研究科)
  • 土屋 文人(国際医療福祉大学)
  • 中島 直樹(九州大学病院)
  • 田中 勝弥(東京大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
6,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
処方箋の電子化によって、医科から薬科への処方情報以外の臨床情報の伝達や医科に伝達すべき調剤情報や患者等に提供されるお薬手帳など様々な周辺の情報が電子化され適切に運用されることで、服薬だけではなく在宅における疾病管理や療養状況、市販薬を含むSelf-Medicationも含めて合理的な医療・介護が推進され、また処方、調剤、服薬に関する情報が横断的に分析されることで、エビデンスに基づく医療・薬事・介護行政が推進されなければならない。また遠隔医療との関連も十分に検討される必要がある。本研究は処方箋の電子化が真に意義あるものとなるための、様々な要素を系統的に検討し、政策の推進に資することを目的としている。本研究では、広い意味での処方箋の電子化に関わるプライバシー保護のあり方を明らかにするとともに、サステイナビリティのある基盤として成長するための、IT基盤としてのあり方を明らかにし、必要な制度整備の要件を明確にして提言する。
研究方法
本研究は次の3つ部分に分けて実施し、最終的には処方箋の電子化だけではなく今後の医療情報施策に資する提言をまとめる。1.電子処方箋と調剤情報の処方医療機関への送付と調剤に必要な情報を調剤薬局に送付する医薬連携のあり方の調査研究。主に山本、土屋、中島が実施する。2.調剤情報を患者等に送付し、服薬の確認等に利用し、また、自ら管理する医療情報、PHRとしてのお薬手帳の電子版の普及と利用に関する問題点の調査と健全な発展に資すると予想される簡易で、震災時あるいはスマートホンなどの障害時に有用なバックアップシステムの構築での実施体制の提言および評価。主に山本、田中、土屋が実施する。3.処方・調剤・服薬情報の利活用を例に、電子処方箋関連システム構築の際のプライバシー影響評価の要点を含む医療・介護情報の利活用とプライバシー保護の問題点の調査と個人情報保護法制の改正にそった政策提言をまとめる。樋口が主体で研究班全体で実施する。
結果と考察
調剤結果の戻しと薬科への情報提供のあり方は実証事業の精査を行い、調剤結果の戻しは医科がオーダリングシステムを用いる場合は、オーダIDをキーに戻し情報を処理できることが明らかになり、オーダリングシステムを不使用の場合、戻し情報と処方情報の関係づけの問題が判明した。また薬科への情報提供に関しては実証事業では多彩で実験的であった。薬科におけるphysical examinationのあり方とも密接に関係するが、現在は、1.副作用あるいは服用に際して注意が必要な項目として参照される検査項目(腎機能、肝機能、血算等)を固定的に定め、全ての処方箋に同一の検査結果セットを出力、2.処方薬のIDを参照し、重要な検査項目を特定して処方箋に出力しているものがあり、何れも試行的である。お薬手帳サービスのバックアップサービスは預金保険と同様の意味を持ち、お薬手帳が民間ビジネスとして発展するためには必須と考えられた。ただバックアップサービスに多額の費用をかけないために、本件研究では事業者登録さえ行えばほぼ自動で処理可能な仕組みを考案し、その要件定義と詳細設計を昨年度は施行し、今年度は実装した際の問題点や運用に関する提言と評価を行った。
お薬手帳情報を二次利用する場合のプラバシー保護に関しては樋口、山本が研究を実施した。一定のITリテラシーのある一般市民に対し、自身のお薬手帳の情報の二次利用に関しての意見やプライバシー保護、電子お薬手帳の利用の有無や要望など、Webアンケートで一般市民の意識調査を行い、一般市民の意識や電子化情報の利用状況、普及にあたっての課題も把握・分析することができた。
改正個人情報保護法を踏まえ、EUデータ保護規則を含む海外の動向を継続して調査を行い、昨年1月にシンポジウムを開催し、米国CMS担当者との意見交換を行い書籍出版し国民への理解と普及に寄与したと考える。また昨秋のJCMI35で3つのシンポジウムを実施し、本研究での目的である、広い意味での処方箋の電子化に関わるプライバシー保護のあり方を明らかにするとともに、サステイナビリティのある基盤として成長するための、IT基盤としてのあり方を明らかにし、必要な制度整備の要件を明確にすることができたと考える。処方箋の電子化には制度移行期に様々な問題があり、医科、薬科、患者等にそれぞれ負担の増大が予想される。移行を円滑に行うためには利点を先行して享受できる手当が必須であり、本研究はまだ、途中ではあるが、利点として重要な医科への調剤結果の戻し、薬科への情報提供、電子お薬手帳の健全な発展、処方・調剤情報の利活用におけるプライバシー保護に関して一定の成果が得られたと考えられる。
結論
処方箋の電子化の移行期の問題解決のためのいくつかの課題に関して、有意な進展が得られた。

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
その他
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

文献情報

文献番号
201520042B
報告書区分
総合
研究課題名
処方箋の電子化に伴う情報連携・情報利活用・プライバシー保護のあり方に関する調査研究
課題番号
H26-医療-指定-039
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
山本 隆一(東京大学 大学院医学系研究科医療経営政策学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 樋口 範雄(東京大学 大学院法学政治学研究科)
  • 土屋 文人(国際医療福祉大学)
  • 中島 直樹(九州大学病院)
  • 田中 勝弥(東京大学医学部付属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
処方箋の電子化によって、医科から薬科への処方情報以外の臨床情報の伝達や医科に伝達すべき調剤情報や患者等に提供されるお薬手帳など様々な周辺の情報が電子化され適切に運用されることで、服薬だけではなく在宅における疾病管理や療養状況、市販薬を含むSelf-Medicationも含めて合理的な医療・介護が推進され、また処方、調剤、服薬に関する情報が横断的に分析されることで、エビデンスに基づく医療・薬事・介護行政が推進されなければならない。また遠隔医療との関連も十分に検討される必要がある。本研究は処方箋の電子化が真に意義あるものとなるための、様々な要素を系統的に検討し、政策の推進に資することを目的としている。本研究では、広い意味での処方箋の電子化に関わるプライバシー保護のあり方を明らかにするとともに、サステイナビリティのある基盤として成長するための、IT基盤としてのあり方を明らかにし、必要な制度整備の要件を明確にして提言する。
研究方法
本研究は次の3つ部分に分けて実施し、最終的には処方箋の電子化だけではなく今後の医療情報施策に資する提言をまとめる。1.電子処方箋と調剤情報の処方医療機関への送付と調剤に必要な情報を調剤薬局に送付する医薬連携のあり方の調査研究。主に山本、土屋、中島が実施する。2.調剤情報を患者等に送付し、服薬の確認等に利用し、また、自ら管理する医療情報、PHRとしてのお薬手帳の電子版の普及と利用に関する問題点の調査と健全な発展に資すると予想される簡易で、震災時あるいはスマートホンなどの障害時に有用なバックアップシステムの構築での実施体制の提言および評価。主に山本、田中、土屋が実施する。3.処方・調剤・服薬情報の利活用を例に、電子処方箋関連システム構築の際のプライバシー影響評価の要点を含む医療・介護情報の利活用とプライバシー保護の問題点の調査と個人情報保護法制の改正にそった政策提言をまとめる。樋口が主体で研究班全体で実施する。
結果と考察
移行期に実現可能な電子処方箋の要件ならび運用フローを提言することができた。また、調剤結果の戻しと薬科への情報提供のあり方は実証事業の精査を行い、調剤結果の戻しは医科がオーダリングシステムを用いる場合は、オーダIDをキーに戻し情報を処理できることができるが、オーダリングシステムを不使用の場合、戻し情報と処方情報の関係づけの問題が判明した。また薬科への情報提供に関しては薬科におけるphysical examinationのあり方とも密接に関係するが、現在は、1.副作用あるいは服用に際して注意が必要な項目として参照される検査項目(腎機能、肝機能、血算等)を固定的に定め、全ての処方箋に同一の検査結果セットを出力、2.処方薬のIDを参照し、重要な検査項目を特定して処方箋に出力しているものがあり、何れも試行的である。固定的に提供している場合は、一定の効果は認識されるも、調剤の負荷の増加が懸念され、電子処方箋の場合、大量の情報を添付することも可能で、調剤薬局の負荷増がより顕在化する可能性がある。お薬手帳サービスのバックアップサービスは預金保険と同様の意味を持ち、お薬手帳が民間ビジネスとして発展するためには必須と考えられた。お薬手帳情報を二次利用する場合のプラバシー保護に関しては樋口、山本が研究を実施した。一定のITリテラシーのある一般市民に対し、自身のお薬手帳の情報の二次利用に関しての意見やプライバシー保護、電子お薬手帳の利用の有無や要望など、Webアンケートで一般市民の意識調査を行い、一般市民の意識や電子化情報の利用状況、普及にあたっての課題も把握・分析することができた。
改正個人情報保護法を踏まえ、EUデータ保護規則を含む海外の動向を継続して調査を行い、2015年1月にシンポジウムを開催し、米国CMS担当者との意見交換を行い書籍出版し国民への理解と普及に寄与したと考える。また昨秋のJCMI35で3つのシンポジウムを実施し、本研究での目的である、広い意味での処方箋の電子化に関わるプライバシー保護のあり方を明らかにするとともに、サステイナビリティのある基盤として成長するための、IT基盤としてのあり方を明らかにし、必要な制度整備の要件を明確にすることができたと考える。処方箋の電子化には制度移行期に様々な問題があり、医科、薬科、患者等にそれぞれ負担の増大が予想される。移行を円滑に行うためには利点を先行して享受できる手当が必須であり、本研究はまだ、途中ではあるが、利点として重要な医科への調剤結果の戻し、薬科への情報提供、電子お薬手帳の健全な発展、処方・調剤情報の利活用におけるプライバシー保護に関して一定の成果が得られたと考えられる。
結論
処方箋の電子化の移行期の問題解決のためのいくつかの課題に関して、有意な進展が得られた。

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201520042C

成果

専門的・学術的観点からの成果
次世代医療基盤法が成立し、現在、各研究機関において利活用のあり方については様々な議論や検討が行われている。本研究での成果を元に整備運用のあり方の提案を行う予定である。
臨床的観点からの成果
次世代医療基盤法が成立し、現在、各研究機関において利活用のあり方については様々な議論や検討が行われている。本研究での成果を元に整備運用のあり方の提案を行う予定である。
ガイドライン等の開発
医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第4.3版の改定作業や医療等IDの運用検討会において、本研究成果が適切な議論を行う上で一助となった。
その他行政的観点からの成果
医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第4.3版の改定作業や医療等IDの運用検討会において、本研究成果が適切な議論を行う上で一助となった。
その他のインパクト
沖縄での第35回医療情報学連合大会や第17回春期学術大会などで成果を発表した。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2019-05-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201520042Z