医療安全管理部門への医師の関与と医療安全体制向上に関する研究

文献情報

文献番号
201520022A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全管理部門への医師の関与と医療安全体制向上に関する研究
課題番号
H27-医療-一般-008
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
長尾 能雅(名古屋大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 遠山信幸(自治医科大学附属さいたま医療センター総合医学講座)
  • 南須原康行(北海道大学医学部附属病院医療安全管理学)
  • 浦松雅史(東京医科大学医学部医療の質・安全管理学)
  • 兼児敏浩(三重大学医学部附属病院医療安全・感染管理部)
  • 西原広史(北海道大学大学院医学研究科探索病理)
  • 細川洋平(京都府立医科大学医学系研究科細胞分子機能病理学)
  • 福田治久(九州大学大学院医学研究院医療経営・管理学講座医療経営学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
3,325,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 日本の医療安全管理活動においては、未だ医師の医療安全への関与の乏しさが課題の一つとなっていると推察されるが、医師の具体的な関与の状況や、医療安全の向上との関係については明らかになっていない。
さらに、重大な医療事故(死亡事例)発生時の体制については、原因究明のための委員会等の設置についての調査結果はあるものの、具体的に医師、特に病理医の関与のあり方について検討された報告はない。
そこで本研究では、医療機関に求められる医療安全管理業務の全体像を明らかにした上で、医療機関の規模等に応じた医療安全管理活動への医師の関与のあり方や病理医との連携のあり方について検討し、医療安全管理体制向上のための具体的な取り組みを提言することを目的に、2か年計画で調査研究を行うこととした。本報告はその1年目の研究成果を取りまとめたものである。
研究方法
1年目の取り組みとして、国内で医療安全管理活動に専従している医師5名と病理医2名(研究分担者)により、現時点で医療機関に求められている医療安全業務の全体像を整理し、シェーマ(医療安全管理活動のループ図)を作成した。
さらに、そのシェーマを基に、医療安全体制について訪問・ヒアリングに値する医療機関を抽出するため、医療安全活動の達成度合いを測るための1次アンケートを作成し、実施した。1次アンケートは、無記名式、Webアンケート方式(Googleフォーム®)とし、比較的医療安全管理体制が整っていることが予想される全国の特定機能病院、およびDPCⅡ群病院(合計180医療機関)を対象とした。また、医師の関与についての調査であるため、医師以外の医療資格を有し専従医療安全管理者として活動している職員に回答を依頼した。実施期間は平成28年2月26日~3月31日とした。
結果と考察
 2か年計画の研究の1年目を終了した。
医療機関に求められる医療安全業務の全体像を「医療安全管理活動のループ」図として示した。
 さらに、その図を基に、1次アンケートを作成し、実施した。対象180医療機関のうち、111医療機関から回答があり、うち有効回答は109件(回答率60.5%)であった(2年目に結果解析予定)。
 医療機関毎に医療安全管理の取り組みにばらつきが生じており、医師に代表される他職種の関与もまちまちとなっていることが予想される。
 そこで、当研究では、第1段階として、現時点で医療機関に求められていると考えられる理想的な医療安全管理活動を、主に平時と有事に分け、1枚のシェーマとして表す作業を行った。
 平時の業務として、多くの医療機関がインシデントレポートなどから課題を抽出し、PDCAサイクルなどを活用した改善活動に取り組んでいると考えられるが、その精度や効果は定かではない。これらの現状について、詳細を把握する必要があると考えられた。
 また、有事の対応について、特に医師(病理医、放射線科医含む)の関与が不可欠であり、この点においても施設間格差が生じていると予想される。
 平時、有事の医療安全管理活動の全体像が明らかになることにより、医療機関毎の取り組みの過不足が把握できるようになる。そして、どのような人材、職種による介入が必要なのかを具体的に検討することが可能となる。
 このループ図を基に、平時、有事の活動がどのくらい達成できているかを把握するための1次アンケートを作成した。
 1次アンケートは主に医師の関与を調査するため、医師以外の職種の医療安全管理者を対象に行ったが、結果の回収率は60.5%と高値であり、この問題に対する現場の医療安全管理実務者の関心の高さが窺えた。
 
結論
 2か年計画の研究の、1年目を終了した。
 「医療安全管理活動のループ」図を作成したことにより、医療機関毎の医療安全活動の取り組みのばらつきが把握できることが期待できる。
 また、ループ図を基に、医療安全活動の達成度合いを測るための1次アンケートを作成し、実施した。アンケートの回収率は高く、この課題に対する関心の高さが窺われた。
 研究2年目はその結果を解析し、医療安全体制について訪問・ヒアリングに値する医療機関の抽出とヒアリングを行った上で、全国の医療機関に対する2次アンケートを実施する予定である。最終的に、医療機関の規模等に応じた医師の医療安全管理への関与のあり方や病理医との連携のあり方について検討し、医療安全管理体制向上のための具体的な取り組みについて提言する予定である。

公開日・更新日

公開日
2017-05-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
201520022Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,492,000円
(2)補助金確定額
1,535,530円
差引額 [(1)-(2)]
1,956,470円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 0円
旅費 1,277,140円
その他 91,390円
間接経費 167,000円
合計 1,535,530円

備考

備考
・名古屋大学関連施設で会議を行うことができたため、会場費を無料とすることができた。
・研究員の旅費について、他用務との兼ね合いで、往復旅費を必要としないケースがあった。
・アンケート調査をWEBアンケート方式としたため、予定よりも低額で実施することができた。

公開日・更新日

公開日
2017-05-25
更新日
-