業務フロー図に基づく医療の質向上と安全確保を目指した多職種協働チームの構築と研修教材・プログラム開発に関する研究

文献情報

文献番号
201520008A
報告書区分
総括
研究課題名
業務フロー図に基づく医療の質向上と安全確保を目指した多職種協働チームの構築と研修教材・プログラム開発に関する研究
課題番号
H26-医療-一般-013
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
飯田 修平(公益社団法人 全日本病院協会 同上)
研究分担者(所属機関)
  • 西澤 寛俊(公益社団法人 全日本病院協会)
  • 永井 庸次((株)日立製作所 ひたちなか総合病院)
  • 長谷川友紀(東邦大学 医学部)
  • 嶋森 好子(公益社団法人 東京都看護協会)
  • 小谷野圭子(公益財団法人東京都医療保健協会 練馬総合病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
2,725,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1)医療の質向上と安全確保を目的に、業務フロー図作成講習会等により、多職種が協働して業務フロー図を作成する過程で、多職種協働チーム医療を実現できる仕組みを提案する。
業務フローの可視化・標準化・共有により、各職種の役割分担・責任権限と職種間の情報交換も可視化され、医師・看護師等の教育・研修ツールにも利用できる。また、各業務の医療安全上のピットフォールの明確化、インシデント・アクシデント事例解析に活用し、効果的な改善策の提案が可能になり、医療の質向上と安全確保に寄与できる。
(2)医療安全管理体制に関する調査を行い、取組状況を把握する。
(3)ベルギーの中央政府、地方政府、オランダでは改善活動に積極的に取り組んでいる病院を訪問し、制度的な取り組み状況、病院での活動の実際を明らかにする。
(4)医療安全推進のために、いずれの医療機関においてもすべき医療安全行動について検討する。
研究方法
(1)本研究では、参加病院を募集し、薬剤各種業務フローを医師、薬剤師、看護師等で作成するなど、教材・講師・インストラクタ等を養成し、多職種協働チームの構築を支援した。
業務フロー図作成、RCA・FMEAに関する講習会を開催した。今年度は参加病院の院内業務フロー図の周知状況と改善事例収集により業務フロー図事例集・改善事例集作成、院内展開における課題等を検討した。
(2)医療安全管理活動における多職種の協働の状況を明らかにする目的で、今年度3回開催した業務フロー図講習会でアンケート調査を実施した。
さらに、27年8月に、全国の医療機関に対し調査を実施した。本報告書では、平成26、27年の結果を比較した。
(3)ベルギー、オランダにおける医療安全体制について、現地訪問によりインタビュー調査を実施した。
(4)第9回日本医療の質・安全学会学術集会において、プレゼンテーションを行い、いずれの医療機関でもなすべき医療安全行動を定めることについて可能かどうかを検討した。
結果と考察
(1)先行研究から蓄積した研修教材・プログラム開発のノウハウを活かし、より多くの病院から多職種で参加しやすい、1日間の業務フロー図作成、改善の方法を学べる研修プログラムを開発した。
テーマを変えた研修会を3回開催し、参加病院数は延べで71病院、参加者数は258名であった。
本講習会で作成した業務フロー図作成支援ツール、業務フロー図事例・改善事例内容をもとに、「業務工程(フロー)図の基礎知識と活用事例」を発行した。
本研究の成果である業務フロー図作成支援ツール、業務フロー図事例、改善事例の公開により、業務フロー図が各医療機関で活用できるようになれば、医療の質向上と安全確保に寄与できると考える。
(2)今年度3回開催した業務フロー図講習会の参加者に対しアンケート調査を実施し、延べ245名から回答を得た。
今後は、医療安全管理活動や、重大な医療事故の原因究明における、看護師以外の職種の関与の度合いや、その役割、参加した効果等を検証する必要があると考えられた。
全国の医療機関を、一般病床の病床規模で層化抽出し、平成26年は2036病院、27年は3270病院を抽出した。調査票の回収率は、各々31.7%、22.4%であった。
(3)ベルギー、オランダを対象に、医療安全、質の管理体制について検討した。
ベルギー、オランダでは、病院機能評価・認証を受けている場合には、行政の監査の際に組織体制などは評価対象とせずに、活動実績を中心に評価が実施されていた。認証を受けていない場合には、行政がすべての項目について監査することになる。このような業務の分担は、日本では都道府県の実施する医療監視と第三者評価・認定との関係を考える際に参考になるであろう。
(4)日本医療の質・安全学会ネットワーク会議に登録している医療安全管理の集会等において検討した。いずれの医療機関でもなすべき医療安全行動として、1患者確認行動、2要注意薬品の適切な管理、3手術及び侵襲性の高い処置における「タイムアウト」、4転倒・転落防止対策、5経鼻胃管先端位置確認の5項目に取り組むべきとの結論を得た。また、個々の医療機関で、それぞれの方法で安全活動が行われており、必ずしも安全確保されていない現状があることが指摘された。
結論
今後、業務フロー図作成を現場の医療機関で更に浸透させる為の課題は、現場に帰った後、院内で業務フロー図作成を中心的に進める院内指導者の養成である。また、業務フロー図作成に関わる時間の確保も大きな課題であるが、事務系職員が多く参加したように、多職種チームの一員として医療安全や業務改善において事務系職員がPC操作の点でも業務フロー図作成支援を期待され、活躍することで、臨床現場の負担を軽減しながら、各病院で組織的に業務フロー図作成を推進して頂きたい。

公開日・更新日

公開日
2017-05-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-25
更新日
-

文献情報

文献番号
201520008B
報告書区分
総合
研究課題名
業務フロー図に基づく医療の質向上と安全確保を目指した多職種協働チームの構築と研修教材・プログラム開発に関する研究
課題番号
H26-医療-一般-013
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
飯田 修平(公益社団法人 全日本病院協会 同上)
研究分担者(所属機関)
  • 西澤 寛俊(公益社団法人 全日本病院協会)
  • 永井 庸次((株)日立製作所 ひたちなか総合病院)
  • 長谷川友紀(東邦大学 医学部)
  • 嶋森 好子(公益社団法人 東京都看護協会)
  • 小谷野圭子(公益財団法人東京都医療保健協会 練馬総合病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1)医療の質向上と安全確保を目的に、業務フロー図作成講習会等により、多職種が協働して業務フロー図を作成する過程で、多職種協働チーム医療を実現できる仕組みを提案する。
業務フローの可視化・標準化・共有により、各職種の役割分担・責任権限と職種間の情報交換も可視化され、医師・看護師等の教育・研修ツールにも利用できる。また、各業務の医療安全上のピットフォールの明確化、インシデント・アクシデント事例解析に活用し、効果的な改善策の提案が可能になり、医療の質向上と安全確保に寄与できる。
(2)医療安全管理体制に関する調査を行い、取組状況を把握する。
(3)初年度はイタリアを対象に多職種関与による医療安全体制について検討し、2年度はベルギー、オランダで、制度的な取り組み状況、病院での活動の実際を明らかにした。
(4)医療安全推進のために、いずれの医療機関もすべき医療安全行動について検討する。
研究方法
(1)参加病院を募集し、薬剤各種業務フローを医師、薬剤師、看護師等で作成するなど、教材・講師・インストラクタ等を養成し、多職種協働チームの構築を支援した。
初年度・2年度共に業務フロー図作成、RCA・FMEAに関する講習会を開催した。
(2)医療安全管理活動における多職種の協働の状況を明らかにする目的で、初年度は全国調査、2年度は3回開催した業務フロー図講習会でアンケート調査を実施した。
(3)イタリア、ベルギー、オランダにおける医療安全体制について、現地訪問しインタビュー調査した。
(4)日本医療の質・安全学会ネットワーク会議に登録している医療安全管理の集会において、プレゼンテーションした後、初年度は医療機関でなすべき医療安全行動について、参加者とディスカッションし、“いずれの医療機関でもなすべき医療安全行動とは”どんな行動であるかをまとめた。2年度はいずれの医療機関でもなすべき医療安全行動を定めることが可能か検討した。
結果と考察
(1)研修は、計5回開催した。内容は、
1「特性要因図・業務フロー図作成研修会」(H26.8.2/3)
2「医療ITと安全・個人情報保護・機密保護研修会」(H26.10.25/26)
3「第1回業務フロー図作成講習会」(H27.7.16)
4「業務フロー図講習会」(H27.11.29)
5「第2回業務フロー図作成講習会」(H28.2.12)
である。
(2)初年度は全国の病院3953病院に対してアンケートを実施し1146病院より回答を得た(回答率29.0%)。
今後は、医療安全管理活動や、重大な医療事故の原因究明における、看護師以外の職種の関与の度合いや、その役割、参加した効果等を検証する必要がある。
2年度は3回開催した業務フロー図講習会の参加者に対しアンケートを実施し、延べ245名から回答を得た。
(3)初年度はイタリアを対象に、医療安全、質の管理体制について検討した。
医療安全管理者教育は、1大学で修士レベルのコースが設けられているが、医療安全管理者の多くは、実務者を対象にした研修などで養成されている。院内調査の方式を定めた規定はなく、地方行政府が専門家の紹介などを支援している。
2年度はベルギー、オランダを対象に、医療安全、質の管理体制について検討した。
病院の評価・認証は、行政が直接行う場合と、他の認証機関を利用する場合がある。ベルギー、オランダでは、病院機能評価・認証を受けている場合には、行政の監査の際に組織体制などは評価対象とせずに、活動実績を中心に評価が実施されていた。認証を受けていない場合には、行政がすべての項目について監査を行うことになる。このような業務の分担は、日本では都道府県の実施する医療監視と第三者評価・認定との関係を考える際に参考になる。
(4)日本医療の質・安全学会ネットワーク会議に登録している医療安全管理の集会等において検討した。いずれの医療機関でもなすべき医療安全行動として、1患者確認行動、2要注意薬品の適切な管理、3手術及び侵襲性の高い処置における「タイムアウト」、4転倒・転落防止対策、5経鼻胃管先端位置確認の5項目に取り組むべきとの結論を得た。また、個々の医療機関で、それぞれの方法で安全活動が行われており、必ずしも安全確保されていない現状があることが指摘された。
結論
業務フロー図作成を現場の医療機関で更に浸透させる為の課題は、現場に帰った後、院内で業務フロー図作成を中心的に進める院内指導者の養成である。また、業務フロー図作成時間の確保も大きな課題であるが、事務系職員が多く参加したように、多職種チームの一員として医療安全や業務改善において事務系職員がPC操作の点でも業務フロー図作成支援を期待され、活躍することで、臨床現場の負担を軽減しながら、各病院で組織的に業務フロー図作成を推進して頂きたい。

公開日・更新日

公開日
2017-05-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201520008C

収支報告書

文献番号
201520008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,725,000円
(2)補助金確定額
2,725,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 508,175円
人件費・謝金 195,864円
旅費 1,620,532円
その他 400,723円
間接経費 0円
合計 2,725,294円

備考

備考
利息294円

公開日・更新日

公開日
2017-03-14
更新日
-