我が国のウイルス性肝炎対策に資する医療経済評価に関する研究

文献情報

文献番号
201519005A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国のウイルス性肝炎対策に資する医療経済評価に関する研究
課題番号
H26-肝政-一般-003
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
平尾 智広(香川大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 正木 尚彦(独立行政法人国立国際医療研究センター)
  • 八橋 弘(国立病院機構長崎医療センター)
  • 長谷川 友紀(東邦大学 医学部)
  • 池田 俊也(国際医療福祉大学 薬学部)
  • 石田 博(山口大学 医学部 )
  • 杉森 裕樹(大東文化大学)
  • 須賀 万智(東京慈恵会医科大学)
  • 赤沢 学(明治薬科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
9,464,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、ウイルス性肝炎に係る医療経済評価の研究過程で、新たに生じてきた問題群、さらなる精緻化が必要な問題群について明らかにすることである。研究項目は、1既存モデルの精緻化(1-1 モデルのパラメータ更新、1-2 B型肝炎再活性化の最新知見を反映させた医療経済評価、1-3 生産性損失におけるPresenteeismの推定、1-4 コストの精緻化)、2新たな課題(2-1 C型肝炎の新規導入薬剤の医療経済評価、2-2 ウイルス性肝炎治療における効用値の時系列変化、2-3 C型慢性肝炎、肝硬変患者における高リスク群に対する積極的スクリーニング、2-4 医療経済評価が必要と考えられる介入に関する情報収集と吟味、2-5 ウイルス肝炎に起因する肝硬変に関する医療経済評価(今年度途中に追加))である。
研究方法
1)既存モデルの精緻化
1-1 他研究班の研究成果、文献等により新知見を収集しモデルへの組み込みについて吟味を行った。
1-2 国立病院機構の診療情報データベースを用いて、免疫抑制療法を開始するリウマチ性疾患患者を選択、B型肝炎の再活性化疑い例の確認、B型肝炎スクリーニング、予防投与、モニタリングの実施率を評価した。
1-3 昨年度の調査を用いて、生産性損失の推定を行った。
1-4 保険者から収集されたレセプトデータを用い、実診療を反映した医療費の算出を試みた。
2)新たな課題
2-1 線維化ステージを考慮した自然歴モデルの再構築、これを用いて治療モデルの構築を行った。
2-2 C型肝炎患者を対象に、EQ-5D、CLDQ、SF8等により治療介入前後における効用値の調査を開始した。
2-3 C型慢性肝炎、肝硬変患者における高リスク群に対する積極的スクリーニングの医療経済評価に関する文献調査等を実施した。
2-4 我が国のB型、C型肝炎治療の現状と課題について整理を行った。
2-5 ウイルス性肝炎に起因する肝硬変の疫学情報の収集、またそれによるCost of Illness推計を行った。
結果と考察
吟味の結果、モデルのパラメータ更新は行っていない。B型肝炎活性化について、143施設を2011年4月~2015年3月(4年間)に利用した患者のうち、条件に合致した6,234症例を解析対象とした。核酸アナログ製剤であるエンテカビル投与例は43例あり、そのうち免疫抑制剤の開始後に投与されたB型肝炎再活性化の疑い例は11例であった。検査の実施率は79.7%であった。
生産性損失について、患者会、ウェブ調査、先行研究の%生産性損失を推定したところ、B型慢性肝炎(活動性)では、ウェブ調査(20.7%)>前回推定(13.8%)>患者会(10.5%)、B型慢性肝炎(非活動性)では、ウェブ調査(6.5%)>患者会(5.8%)>前回推定(4.8%)であった。また、C型慢性肝炎(活動性)では、前回推定(17.4%)、患者会(13.7%)、C型慢性肝炎(非活動性)では、それぞれ7.7%、7.3%であった。
C型肝炎の標準的治療について、2つの抗ウイルス療法の国内第3相試験の結果を用いた費用対効果分析に適用すると従来モデルでは増分費用対効果比550万円/QALYに対して、線維化考慮モデルでは370〜430万/QALYであった。
ウイルス性肝炎に関する各種治療中における効用値の時系列変化について、回収できた55例について、治療前の効用値等について中間的に集計した。C型慢性肝炎、肝硬変患者における高リスク群に対する積極的スクリーニングについて、分析に必要な数値を明らかにした。ウイルス肝炎に起因する肝硬変のCOI推計額は、4,437億円(1996年)、3,715億円(2002年)、2,721億円(2008年)、2,081億円(2014年)と減少傾向であった。また、将来推計では、固定型推計では横ばいに推移、対数型推計、線形型推計、混合型推計ではいずれも減少傾向となることが示唆された。
結論
それぞれの研究項目において計画に従って研究を遂行した。多くのパラメータが推計されているが、次年度はこれらを確定させる予定である。

公開日・更新日

公開日
2017-01-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
その他

公開日・更新日

公開日
2018-03-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201519005Z