文献情報
文献番号
201518018A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲイコミュニティにおけるコホートの構築とHIVおよび梅毒罹患率の推計に関する研究
課題番号
H27-エイズ-若手-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
塩野 徳史(公立大学法人 名古屋市立大学 看護学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,005,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は大阪のMSM(Men who have sex with men)を対象に、血液検査と連動させた前向きコホートの構築と人年法を活用してHIV感染症および梅毒の罹患率を推計し、予防啓発の評価尺度を確立することである。先行研究では日本のHIV感染動向はMSMに限局的に拡大しており、特にゲイ向け商業施設利用者は性行動が活発で、感染リスクの高い集団である。またMSMにおいて梅毒は感染が増加していることも報告されている。MSMにおけるHIV感染や梅毒感染の状況を把握することは、今後の感染対策の方針の決定や予防啓発の評価尺度として極めて有効である。MSM対象の血液検査と連動した前向きコホート形成は国内で初めてであり、将来的に今後新たに展開される予防介入試行の基盤となりうる。
研究方法
調査デザインは血液検査結果と連動させた前向き追跡研究とした。研究参加者の個人特定には指紋認証の技術を応用したシステムによってIDを発行し、氏名や住所などの個人情報の取得は必要ない。研究参加者は量的質問紙調査法を活用したベースライン調査とフォローアップ調査および血液検査を継続的に参加する仕組みとした。本研究は名古屋市立大学看護学部倫理委員会の承認を得ており、検査体制の整備はゲイ・バイセクシュアル男性当事者を中心としたNGO組織・MASH大阪や大阪市や大阪府などの行政と協働し、本研究参加による差別や偏見を受けないように配慮する。
結果と考察
今年度は、コホート体制を構築し、コミュニティセンターで実施可能な検査会を大阪市と共同し4回実施した。対象集団の属性把握のためのベースライン調査は、本検査会の効果評価を目的に追加し、検査会の前後に連続横断的な無記名自記式質問紙調査を実施した。検査会は計127人が利用し、先行研究と比べHIV陽性判明割合は5.5%と極めて高く、計画に即した対象層をリクルートしたと考える。しかし第1期コホート登録者は92人であり目標の300人は達成できなかった。
コミュニティセンター利用者調査の回答者(n=160)における一元配置分散分析の結果、性感染症スティグマは、今後の受検意図や感染後のカミングアウトに対する態度と関連していた。性感染症スティグマは感染後のカミングアウトについて話す必要がある群で高く、3-6ヶ月間毎の定期受検を意図する群でも高かった。この背景にある規範構造を検討していく必要があるが、今後予防介入を進める上では性感染症スティグマを増加させないような工夫が必要となる。本研究で得られた検査と性感染症に関する尺度は、コミュニティセンターでの検査会自体の評価や、検査プログラム開発を進める上で有用であり、今後さらに分析を進めていく。
コミュニティセンター利用者調査の回答者(n=160)における一元配置分散分析の結果、性感染症スティグマは、今後の受検意図や感染後のカミングアウトに対する態度と関連していた。性感染症スティグマは感染後のカミングアウトについて話す必要がある群で高く、3-6ヶ月間毎の定期受検を意図する群でも高かった。この背景にある規範構造を検討していく必要があるが、今後予防介入を進める上では性感染症スティグマを増加させないような工夫が必要となる。本研究で得られた検査と性感染症に関する尺度は、コミュニティセンターでの検査会自体の評価や、検査プログラム開発を進める上で有用であり、今後さらに分析を進めていく。
結論
初年度はコホート体制を構築し、検査会を4回実施した。先行研究と比べ、HIV陽性判明割合は極めて高かった。次年度のフォローアップ体制も確立しており、予防介入の評価尺度を確立し、検証できる体制を構築したと考える。
公開日・更新日
公開日
2016-06-20
更新日
-