文献情報
文献番号
201518008A
報告書区分
総括
研究課題名
薬物乱用・依存者、性感染症患者のHIV感染状況及び内外のHIV流行等の動向に関する研究
課題番号
H27-エイズ-一般-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
木原 正博(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻国際保健学講座社会疫学分野)
研究分担者(所属機関)
- 荒川創一(神戸大学医学部客員教授)
- 和田 清(埼玉県立精神医療センター依存症治療研究部)
- 木原雅子(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻国際保健学講座社会疫学分野 )
- 西村由実子(橋本由実子)(関西看護医療大学看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
7,233,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
国内外のHIV関連情報の集約と統合的分析及び高リスク集団のHIV感染率やリスク行動のモニタリングを通じて、わが国の流行の文脈的理解と効果的・効率的なエイズ施策の形成に資する。
研究方法
(1)海外及び国内のHIV/STDの流行とリスク情報の収集分析に関する研究
下記の情報を2014年まで最新化し、動向を分析した:a)関連地域(中国、台湾、香港、韓国)と主要先進国(米、英、仏、独、加、豪)のHIV/AIDS/性感染症(STD)サーベイランスデータ、b)東アジア地域(中国、台湾、香港、韓国)のHIV/AIDS/ STDサーベイランスデータ、c)わが国のSTD発生動向調査、母子保健統計、薬事工業生産動態統計のサーベイランスデータ。
(2)STD患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究
全国(北海道、東京、岐阜、大阪)の10STD関連医療施設の受診者550人(男152、女163、風俗女性235)に対し、無料HIV/検査とHIV検査ニーズ、HIV関連知識、HIV感染リスク認知に関する質問票調査を行った。
(3)薬物乱用・依存者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究
関東地域の5つの民間薬物依存回復施設入所者79人の新規対象者に対し、HIV/STD/肝炎感染に関する検査を行うとともに、注射関連行動、性行動を調査した。1994 年以来の継続調査である。
下記の情報を2014年まで最新化し、動向を分析した:a)関連地域(中国、台湾、香港、韓国)と主要先進国(米、英、仏、独、加、豪)のHIV/AIDS/性感染症(STD)サーベイランスデータ、b)東アジア地域(中国、台湾、香港、韓国)のHIV/AIDS/ STDサーベイランスデータ、c)わが国のSTD発生動向調査、母子保健統計、薬事工業生産動態統計のサーベイランスデータ。
(2)STD患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究
全国(北海道、東京、岐阜、大阪)の10STD関連医療施設の受診者550人(男152、女163、風俗女性235)に対し、無料HIV/検査とHIV検査ニーズ、HIV関連知識、HIV感染リスク認知に関する質問票調査を行った。
(3)薬物乱用・依存者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究
関東地域の5つの民間薬物依存回復施設入所者79人の新規対象者に対し、HIV/STD/肝炎感染に関する検査を行うとともに、注射関連行動、性行動を調査した。1994 年以来の継続調査である。
結果と考察
以下の知見を得た;a)近隣地域(中国、台湾、香港、韓国)において性感染、特に同性間感染を主とするHIV流行が依然、持続・拡大している。b)主要先進国では、日本を除き、AIDS報告数は減少が続いているものの、性感染、特に同性間感染によるHIV流行、及びSTD全般の増加もしくは高いレベルでの発生が続いている。c)我が国では、近年減少していた我国の主要STD(梅毒以外)が下げ止まり、ほぼ横ばいの状態が続いている。15-18歳の人工妊娠中絶率も減少速度が低下したが依然減少が続いている。d)我が国では、梅毒は、梅毒以外のSTDとほぼ正反対の年次動向を示し、2002年頃に底を打った後に増加に転じ、2014年には男女ともに、特に大きく増加した。以前実施した文献の系統的レビュー、他の性感染症と対極的な動向から、男性における梅毒流行は主として同性間感染、女性はその二次感染を反映すると考えられる。e)近隣地域間の出入国、特に入国が急増しており、また、海外長期滞在邦人の数も依然高いレベルにある。f)薬物依存・乱用者中に、HIV感染者は認められなかったが、C型肝炎感染率は、約50%であった。覚せい剤使用者中の過去1年間の針・シリンジ共有経験は約15%に認められた。g)STD患者の間で無料HIV検査に対する高いニーズが存在することが確認され、また、男性STD患者におけるHIV感染者は本年度は認められなかった。
結論
本研究班が確立した、わが国のHIV流行の状況・特徴・国際的文脈や社会的脆弱性の状況を明らかにするための情報収集の枠組みを用いて、情報を最新化し、それに基づくわが国のHIV流行の現状や展望について、総合的な分析を行った。本研究によれば、先進国のHIV流行は、HAART療法の導入とインターネットによるネットワークの発達により、同性間感染を中心とする、制御の難しい新たな流行期に入ったと考えられ、我国の同性間HIV流行も同じ文脈にあると考えられた。近隣諸国では、薬物静注による流行がほぼ終息して、性感染、特に同性間感染を主体とする流行期に入った。出入国が増加しているため、我が国へのHIV流入の可能性について注意が必要である、一方我国では、梅毒以外のSTDと10代の人工妊娠中絶率が低下・横這い状態にある一方、同性間感染とその二次感染と考えられる梅毒のアウトブレークが男女で生じており、HIV流行の動向については、今後もモニタリングが必要である。
公開日・更新日
公開日
2016-06-20
更新日
-