男性同性間のHIV感染予防対策とその介入効果の評価に関する研究

文献情報

文献番号
201518005A
報告書区分
総括
研究課題名
男性同性間のHIV感染予防対策とその介入効果の評価に関する研究
課題番号
H26-エイズ-一般-005
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
市川 誠一(人間環境大学 大学院看護学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 健山 正男(国立大学法人琉球大学 大学院医学研究科)
  • 金子 典代(公立大学法人名古屋市立大学 看護学部)
  • 本間 隆之(公立大学法人山梨県立大学 看護学部)
  • 塩野 徳史(公立大学法人名古屋市立大学 看護学部)
  • 佐野 貴子(嶋 貴子)(神奈川県衛生研究所 微生物部)
  • 今井 光信(田園調布学園大学)
  • 木村 哲(東京医療保健大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
15,052,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域活動団体(CBO)の商業施設を介した啓発活動や自治体等との連携を把握する。MSMの予防行動、検査行動、CBO活動認知等のモニタリング、地域間移動に伴う性行動を把握する。新たな予防介入の開発を目的に、HIV陽性者の感染判明前のHIV検査受検契機等に関する調査、商業施設を利用し始めるMSMへの予防啓発モデルの開発、増加傾向にあるMSM層への取り組みに関する研究を行う。HIV検査の活用を推進するために、HIV検査・相談マップの運用と普及、保健所等のHIV検査の実態把握、HIV郵送検査の課題解決の研究を行う。
研究方法
1.CBOの予防啓発活動と商業施設および自治体との連携に関する研究(市川誠一):東北、東京、東海、近畿、中四国、九州、沖縄地域のCBOを対象に商業施設を介した啓発活動、自治体との連携状況を調査した。
2.男性同性間性的接触によるHIV陽性者の予防啓発との接点および早期検査・受診に関する研究(健山正男):HIV陽性者(41名)から感染判明前の検査行動や啓発資材との接点等を把握した。
3.MSM及びゲイ・バイセクシュアル男性を対象とした地域間比較(金子典代、本間隆之):6地域のクラブイベントに参加したMSM(回答数1101)から予防、検査、地域間移動に伴う性行動等をインターネット調査で把握した。東京のCBO・aktaの活動に対するゲイコミュニティの反応を分析した。
4.商業施設を利用しはじめる若年層MSMを対象とした予防啓発介入の開発と効果評価(塩野徳史):予防啓発モデル「ヤる!プロジェクト」を展開し効果を経年調査で評価した。
5.近年のエイズ発生動向に基づくMSM層(地方、若年層、滞日外国人)に関する研究(市川誠一):地方のMSMへの取り組み事例(岡山県)、および若年層MSM、外国国籍MSMの動向を把握した。
6.HIV検査・相談マップを用いたHIV検査相談施設の情報提供と利用状況の解析(佐野貴子):HIV検査相談施設掲載のHIV検査・相談マップの活用状況を分析した。
7.保健所等におけるHIV検査相談の全国調査(今井光信):保健所等484施設、特設HIV検査相談20施設のHIV検査・相談等の実態を質問紙調査で把握した。
8.HIV郵送検査の在り方とその有効活用に関する研究(木村哲):HIV郵送検査事業者へのアンケート調査、3施設の精度管理調査、HIV郵送検査の在り方検討会を実施した。
研究倫理:倫理審査が必要な調査等は研究者所属機関の倫理委員会の承認を受けた。
結果と考察
1.CBOはゲイバー(連携率50-100%)を中心に様々な商業施設を介して啓発資材を配布した。自治体・保健所と連携しHIV検査情報の普及、HIV検査担当者研修会への協力を実施した。
2.HIV陽性者の中にはHIV検査が適切に提供されるべき時期に検査機会を逸失していたことが判明した。医療機関等への啓発が必要である。
3.HIV検査受検やコンドーム常用の割合は若年層が低く、過去6か月の外国国籍MSMとの性行為経験割合は19%であった。居住地以外の地域への移動に伴う性行動の状況から国内移動を考慮した啓発が必要であった。東京ではコミュニティ文化に沿った啓発活動、自分に向けていると感じるメッセージが受検行動や予防行動に関連していた。
4.大阪地域の「ヤる!プロジェクト」は若年層MSMで認知が高く啓発の効果が期待された。中四国、東海、沖縄地域で次年度に展開する準備が進められた。
5.コミュニティセンターの無い岡山県でCBOと自治体・保健所、クリニックが協働し、MSM向けのクリニック検査キャンペーンを導入した。若年層MSMに関する先行研究を総括し年度の調査方法を検討した。外国国籍MSMを対象とする多言語アンケートシステムを検討した。
6.HIV検査・相談マップはサイト訪問数約186万件/年で広く国民に活用されていた。新規訪問59%、情報端末はスマートフォンが8割を占めた。
7.全国保健所と特設検査相談施設のHIV検査では陽性件数が383件、94%が陽性結果を受け取り、86%が医療機関を受診した。保健所等では早期検査・医療連携が高率に実施されていた。
8.HIV郵送検査件数は85,629件(前年比10.3%増)。HIV郵送検査在り方検討会では、検査精度管理と個人情報の保護、陽性者の医療機関等への結びつけに課題の多いことが議論された。
結論
各地域のCBOは商業施設や自治体と連携した啓発活動に取り組んでいる。若年層MSM(商業施設を利用し始めるMSM)、外国国籍MSM、地域間移動に伴う性行動への対応など地域間で連携した取り組みが望まれる。MSMの早期検査と受療促進には保健所等のHIV検査の活用に加え、医療機関でのHIV検査実施の促進、HIV郵送検査の課題解決が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
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収支報告書

文献番号
201518005Z