文献情報
文献番号
201517004A
報告書区分
総括
研究課題名
成人の重症肺炎サーベイランス構築に関する研究
課題番号
H25-新興-指定-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
大石 和徳(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究分担者(所属機関)
- 大日 康史(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
- 大島 謙吾(東北大学病院)
- 笠原 敬(奈良県立医科大学 感染症センター)
- 木村 博一(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
- 金城 雄樹(国立感染症研究所 真菌部)
- 高橋 弘毅(札幌医科大学医学部内科学第三講座・呼吸器内科)
- 武田 博明(済生会山形済生病院)
- 田邊 嘉也(新潟大学医歯学総合病院)
- 常 彬(国立感染症研究所細菌第一部)
- 西 順一郎(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
- 藤田 次郎(琉球大学大学院 感染症・呼吸器・消化器内科学)
- 丸山 貴也(独立行政法人国立病院機構三重病院・呼吸器内科)
- 山崎 一美(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター・臨床研究センター)
- 横山 彰仁(高知大学医学部・内科学・呼吸器内科)
- 渡邊 浩(久留米大学医学部感染制御学講座)
- 砂川 富正(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
- 村上 光一(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
11,880,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
10道県において、成人における侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)患者の病型、基礎疾患等、及び原因菌の血清型分布を明らかにする。また、成人侵襲性インフルエンザ菌感染症(IHD)についても患者の病型、基礎疾患等、及び原因菌が莢膜株か無莢膜株(NTHi)かについて明らかにする。
研究方法
平成25年度から平成27年度にかけて10道県の保健所、研究分担者の協力のもと、感染症発生動向調査で登録された成人のIPD, IHD症例を研究登録し、医療機関からIPD, IHDの原因菌を収集した。上五島ではIPDに加え、肺炎球菌性肺炎を対象とし、医療機関において症例登録した。本研究は国立感染症研究所のヒトを対象とする医学研究倫理審査委員会で承認を得た。
結果と考察
414例の成人IPD患者の平均年齢は69歳で64%を65歳以上の高齢者が占めていた。男性が64%であった。病型の割合は菌血症を伴う肺炎58%> 髄膜炎が18%>菌血症が15%> その他8%であった。死亡の記載のあった症例は18%であった。インフルエンザウイルスの先行感染があった者は4%、5年以内のPPSV23接種歴がある患者は8%であった。基礎疾患のある者は75%、免疫不全は38%、無脾、脾臓低形成は6%であった。原因菌(n=414)におけるPCV13含有血清型の割合は46%、PPSV23含有血清型の割合は67%であった。原因菌(n=414)におけるPCV13含有血清型の割合は46%、PPSV23含有血清型の割合は67%であった。成人IPDの原因菌のPCV13含有血清型の減少は、小児PCV導入に伴う集団免疫効果に起因する血清型置換と考えられた。菌血症を伴う肺炎の原因菌におけるワクチン含有血清型の割合は髄膜炎及び菌血症の原因菌におけるワクチン含有血清型の割合よりも、それぞれ高かった(PCV13含有血清型: 59% vs 20%, p<0.025, 59% vs 37%, p<0.025 PPSV23含有血清型:76% vs 47%, p<0.025, 76% vs 58%, p<0.025)。
成人のIHD患者は、2013―2015 年度に計 43例が登録され、その原因菌株が解析された。患者年齢は平均値が73.2歳、中央値が 79 歳であった。菌血症を伴う肺炎を呈した患者は、送付菌株数の半数以上(53%)を占めた。続いて原発巣不明の菌血症を呈した患者が35%を占めた。また、多くの患者では慢性呼吸器疾患(COPD、気管支端息など)などの基礎疾患を有していた。今回送付された 43 株のうち 42 株はNTHiと判定した。残る 1 株は e 型であった。
上五島において、2013年9月から2015年12月31日までに447例の65歳以上の高齢者の肺炎患者が登録された。平均年齢81才、男性 53.2%。このうち肺炎球菌性肺炎は73例(16.3%)であった。このうち1例(1.4%)が血液培養陽性のIPDであった。肺炎球菌性肺炎の罹患率(人/千人・年)は、65~74才:1.1、75~84才:2.8、85才以上:14.3となり、特に85才以上から著明に増加した。血清型は3型が最も多く5例、6A型 2例、11A/E型 3例、22F型2例、35B型2例などであった。肺炎球菌ワクチンのカバー率は、PPSV23で68.8%、PCV13で50%であった。高齢者の肺炎球菌性肺炎の原因菌においても血清型置換が示唆された。
成人のIHD患者は、2013―2015 年度に計 43例が登録され、その原因菌株が解析された。患者年齢は平均値が73.2歳、中央値が 79 歳であった。菌血症を伴う肺炎を呈した患者は、送付菌株数の半数以上(53%)を占めた。続いて原発巣不明の菌血症を呈した患者が35%を占めた。また、多くの患者では慢性呼吸器疾患(COPD、気管支端息など)などの基礎疾患を有していた。今回送付された 43 株のうち 42 株はNTHiと判定した。残る 1 株は e 型であった。
上五島において、2013年9月から2015年12月31日までに447例の65歳以上の高齢者の肺炎患者が登録された。平均年齢81才、男性 53.2%。このうち肺炎球菌性肺炎は73例(16.3%)であった。このうち1例(1.4%)が血液培養陽性のIPDであった。肺炎球菌性肺炎の罹患率(人/千人・年)は、65~74才:1.1、75~84才:2.8、85才以上:14.3となり、特に85才以上から著明に増加した。血清型は3型が最も多く5例、6A型 2例、11A/E型 3例、22F型2例、35B型2例などであった。肺炎球菌ワクチンのカバー率は、PPSV23で68.8%、PCV13で50%であった。高齢者の肺炎球菌性肺炎の原因菌においても血清型置換が示唆された。
結論
10道県における成人のIPDサーベイランスにおいて、小児PCV13の定期接種導入後に成人のIPD原因菌の血清型置換が明確になった。また、菌血症、髄膜炎と比較して、菌血症を伴う肺炎ではPPSV23, PCV13ともにワクチン含有血清型の割合が高く、この所見も最近の日本からの報告と一致している。成人IHDサーベイランスでは、高齢者において菌血症を伴う肺炎例が半数以上を占め、また原因菌では、e型の1株を除けば全てNTHi株であることが判明した。
今後も継続的にIPD, IHDの原因菌の動向を監視する必要がある。
今後も継続的にIPD, IHDの原因菌の動向を監視する必要がある。
公開日・更新日
公開日
2016-06-28
更新日
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