BPSDにより精神科病院に入院する認知症患者を対象とした全国規模での入院実態調査

文献情報

文献番号
201516027A
報告書区分
総括
研究課題名
BPSDにより精神科病院に入院する認知症患者を対象とした全国規模での入院実態調査
課題番号
H26-精神-一般-004
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
岡村 仁(広島大学 大学院医歯薬保健学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 石井 伸弥(東京大学 医学部附属病院老年病科)
  • 石井 知行(医療法人社団 知仁会)
  • 渕野 勝弘(医療法人 渕野会 緑ヶ丘保養園)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 認知症専門病棟(急性期病棟、一般病棟を含む)を持つ精神科病院に、新規に認知症行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia:以下「BPSD」)管理のために入院した認知症患者を対象に、入院時の患者、家族の特性のみならず入院中の身体疾患を含めた治療の実態とBPSDの経過、退院支援の実態とその結果、退院後の経過を評価する前向きコホート研究を行うことで、これまでに調査されていない因子も含めて、治療や退院・在宅復帰を妨げる危険因子を同定することを目的とする。
研究方法
 全国の認知症専門病棟(急性期病棟、一般病棟を含む)を持つ精神科病院に入院した認知症患者(目標症例1000例以上)を対象に、入院時に患者特性や介護者の負担感、うつ状態を評価するとともに、入院2、4、6ヶ月後に認知機能(Mini Mental State Examination)、せん妄(Confusion Assessment Method)、うつ状態(Cornell Scale for Depression in Dementia)、BPSDの経過(Neuropsychiatric Inventory)、入院中の身体疾患を含めた治療やケアの実態などを質問紙及び面接により追跡調査する。加えて、入院から退院に至り在宅等に移行した患者に対しては、退院後の経過を調べるため、さらに2ヶ月間隔で6ヶ月間の質問紙による追跡調査を行う。
 平成27年度は、症例登録及び前向きコホート研究を実施すると共に、得られたデータの回収、整理を行い、データベースの作成を行った。さらに、前向き調査中在宅等に退院した認知症患者を対象に追跡調査を行っている。
結果と考察
 調査参加施設のリクルートにあたっては、まず研究協力団体である日本精神科病院協会を通して全会員病院である1206病院に研究協力依頼文書を送付した。その後、全国8地区において担当者を集めた説明会を開催したり、病院協会関連の研修会等で研究内容の説明を行うなどして参加の依頼を行ったところ、最終的に229病院(認知症病棟を持つ対象病院の52.8%)から研究参加の同意が得られた。
 調査開始後は、研究の進捗状況を定期的に確認するとともに、対象者の登録が進んでいない施設に対しては個別にアプローチを行うなど、対象者の登録を推進するための対策を研究班会議にて繰り返し検討した(平成27年5月~平成28年2月の間に計5回実施)。その結果、平成27年度末の時点で、入院患者を対象とした前向きコホート研究については参加を表明した229病院中138病院が症例登録を行い、456名が調査を完了し、185名が調査を継続中(合計641名が調査対象)となっている。また、在宅に退院した患者を対象とした前向きコホート研究については、175名が追跡対象者となっている。
 結果として、目標研究参加施設(100施設)は確保できたものの、目標症例数(1000例)を確保するのは困難であり、当初の計画より調査対象者数が少なくなった。その要因を各施設からの聞き取りなどをもとに検討したところ、①家族からの同意が得られない(入院時慌ただしく余裕がない、介護者評価票への抵抗)、②対象者の選択基準の解釈が施設により若干異なっており、適格症例が登録されていない場合があった、③調査に手間がかかり手が回らないといった施設側の事情、などがあげられた。
 平成28年度は、平成27年度から継続している追跡調査を完了し、得られたデータの整理・解析を行い、早期退院につながる因子ならびに退院後有害事象の危険因子を多変量解析により同定する。
結論
 BPSD管理のために精神科病院に入院した認知症患者を対象に、入院時の患者、家族の特性のみならず入院中の身体疾患を含めた治療の実態とBPSDの経過、退院支援の実態とその結果、退院後の経過を評価する前向きコホート研究を行うことで、治療や退院・在宅復帰を妨げる危険因子を同定することを目的に研究を開始した。症例登録者数は641例となり、目標の1,000例には達しなかったものの、次年度は得られたデータの解析を行い、早期退院につながる因子ならびに退院後有害事象の危険因子を多変量解析により同定していきたい。

公開日・更新日

公開日
2017-05-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
201516027Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
18,200,000円
(2)補助金確定額
18,200,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 860,654円
人件費・謝金 2,115,895円
旅費 527,040円
その他 10,496,411円
間接経費 4,200,000円
合計 18,200,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-05-23
更新日
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