文献情報
文献番号
199800507A
報告書区分
総括
研究課題名
感染症の根絶の世界戦略樹立に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
蟻田 功(財団法人国際保健医療交流センター)
研究分担者(所属機関)
- 高島義裕(国立国際医療センター)
- 堺 春美(東海大学医学部)
- 高橋元秀(国立感染症研究所)
- 多田 功(九州大学医学部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書（概要版）
研究目的
変化しつつある世界情勢、そして日本の国際的位置を考慮に入れて、21世紀
の世界感染症根絶戦略の遂行に日本がどのように貢献できるかについて緊急に調査研究を
行い、その短期の計画策定について提案する。
の世界感染症根絶戦略の遂行に日本がどのように貢献できるかについて緊急に調査研究を
行い、その短期の計画策定について提案する。
研究方法
麻疹、風疹、ジフテリア、リンパ性フィラリアの4つの疾病根絶または準根
絶(人類社会から疾病をなくすことができるが、自然界には原因微生物が残る)に資する
世界戦略樹立のため、以下のような調査研究を行った。(1)根絶の生物学的、及び、社
会学的条件の検討、(2)各疾患の日本及び国外の対策の現況、及び、疫学に関する情報
収集、(3)麻疹、風疹、ジフテリアのワクチンの伝播阻止能力に関する調査研究、フィ
ラリアの薬剤による伝播阻止能力に関する調査研究。以上、3つの研究をもととして、日
本の根絶計画への貢献に関する緊急提案を行う。
絶(人類社会から疾病をなくすことができるが、自然界には原因微生物が残る)に資する
世界戦略樹立のため、以下のような調査研究を行った。(1)根絶の生物学的、及び、社
会学的条件の検討、(2)各疾患の日本及び国外の対策の現況、及び、疫学に関する情報
収集、(3)麻疹、風疹、ジフテリアのワクチンの伝播阻止能力に関する調査研究、フィ
ラリアの薬剤による伝播阻止能力に関する調査研究。以上、3つの研究をもととして、日
本の根絶計画への貢献に関する緊急提案を行う。
結果と考察
(1)麻疹は天然痘、ポリオに次いで根絶が妥当かつ可能な疾患であるが、
その成功のためには、麻疹特有の激しい感染力、大陸間の頻繁な輸入発生例などを考慮に
入れる必要があり、技術的には、サーベイランス強化、持続が不可欠である。そのため、
世界麻疹根絶を成功させるためには、各大陸、各地域でのプログラムが同時に、または数
年間の差程度で行われていないと、根絶対策は時間的にも経済的にも能率的に行うことが
できない。そのため、日本の協力姿勢としては、世界の麻疹根絶対策がまだ準備中である
ため、東南アジアのポリオ根絶成功後、サーベイランス強化、ワクチン生産に対するアジ
ア諸国への協力という結論に達した。(2)風疹は、現在のワクチン接種により、日本で
は患者、及び、CRSは激減し、米国では殆ど根絶に近い。風疹根絶は理論的に可能であ
るが、根絶計画は、独自のプログラムというより、麻疹根絶計画と共に、風疹・麻疹混合
ワクチンを用いて行うことが最も望ましい。(3)リンパ性フィラリアの準根絶プログラ
ムは時機を得ており、積極的に推進すべき計画であり、日本は自国の経験をもとに、東ア
ジアの発生国、南アジア島嶼国との協力事業を発展することが望ましい。フィラリアの特
徴として、麻疹に見られるような大陸間、また広域地域間の輸入患者の例がまれであり、
日本はODA予算による国別協力が可能である。根絶は、主として、薬剤投与(DEC)に
よるが、コストも安い。(4)ジフテリアの根絶可能性については、いまだわからないこ
とが多いが、適切なジフテリア・トキソイドの接種事業によって、ジフテリアの発生を殆
どゼロとすることができる。DPT接種は、EPI事業として最も普及した接種計画である
ため、80%以上の接種率を達成することは困難ではない。また、麻疹ほどの大陸間の伝
播がまれである。まずは、自国のジフテリアサーベイランスの強化と共に、ジフテリアの
根絶可能性について、早急な疫学調査研究を提案する。
天然痘の根絶の成功、ポリオ根絶の東アジアと南北アメリカにおける成功は、サーベイラ
ンスの重要性を示した。本研究の対象である4つの疾病に関しても、サーベイランスが
その基本である。そのため、日本の貢献を考えるとき、4疾病について、東アジアの諸国
のサーベイランスを強化することが、最も適した安全な協力であろう。根絶事業は、研究、
テクノロジーといった技術的要素とリーダーシップ、費用効果、投資促進というようなマ
ネージメントの要素もあり、これらが一体となって初めて成功に向かうプログラムとなる。
この意味から、我が国の貢献の一方法として、研究班員を中核とした疾病根絶研究会をつ
くり、情報分析や意見交換、各国の情報発信を行うことを提案する。
その成功のためには、麻疹特有の激しい感染力、大陸間の頻繁な輸入発生例などを考慮に
入れる必要があり、技術的には、サーベイランス強化、持続が不可欠である。そのため、
世界麻疹根絶を成功させるためには、各大陸、各地域でのプログラムが同時に、または数
年間の差程度で行われていないと、根絶対策は時間的にも経済的にも能率的に行うことが
できない。そのため、日本の協力姿勢としては、世界の麻疹根絶対策がまだ準備中である
ため、東南アジアのポリオ根絶成功後、サーベイランス強化、ワクチン生産に対するアジ
ア諸国への協力という結論に達した。(2)風疹は、現在のワクチン接種により、日本で
は患者、及び、CRSは激減し、米国では殆ど根絶に近い。風疹根絶は理論的に可能であ
るが、根絶計画は、独自のプログラムというより、麻疹根絶計画と共に、風疹・麻疹混合
ワクチンを用いて行うことが最も望ましい。(3)リンパ性フィラリアの準根絶プログラ
ムは時機を得ており、積極的に推進すべき計画であり、日本は自国の経験をもとに、東ア
ジアの発生国、南アジア島嶼国との協力事業を発展することが望ましい。フィラリアの特
徴として、麻疹に見られるような大陸間、また広域地域間の輸入患者の例がまれであり、
日本はODA予算による国別協力が可能である。根絶は、主として、薬剤投与(DEC)に
よるが、コストも安い。(4)ジフテリアの根絶可能性については、いまだわからないこ
とが多いが、適切なジフテリア・トキソイドの接種事業によって、ジフテリアの発生を殆
どゼロとすることができる。DPT接種は、EPI事業として最も普及した接種計画である
ため、80%以上の接種率を達成することは困難ではない。また、麻疹ほどの大陸間の伝
播がまれである。まずは、自国のジフテリアサーベイランスの強化と共に、ジフテリアの
根絶可能性について、早急な疫学調査研究を提案する。
天然痘の根絶の成功、ポリオ根絶の東アジアと南北アメリカにおける成功は、サーベイラ
ンスの重要性を示した。本研究の対象である4つの疾病に関しても、サーベイランスが
その基本である。そのため、日本の貢献を考えるとき、4疾病について、東アジアの諸国
のサーベイランスを強化することが、最も適した安全な協力であろう。根絶事業は、研究、
テクノロジーといった技術的要素とリーダーシップ、費用効果、投資促進というようなマ
ネージメントの要素もあり、これらが一体となって初めて成功に向かうプログラムとなる。
この意味から、我が国の貢献の一方法として、研究班員を中核とした疾病根絶研究会をつ
くり、情報分析や意見交換、各国の情報発信を行うことを提案する。
結論
21世紀には、感染症根絶が公衆衛生の分野で1つの大きな領域となる。短期にも、
日本が貢献するとすれば、何ができるかを、麻疹、風疹、リンパ性フィラリア、及び、
ジフテリアを取り上げ、研究した。麻疹、風疹はポリオ根絶終了を待ち、リンパ性フィ
ラリアは明日からでも発進、ジフテリアは研究ということであろう。成功は、日本を含
めて世界の科学、行政、政治分野が根絶とは何か、その意味を理解することから始まる。
日本が貢献するとすれば、何ができるかを、麻疹、風疹、リンパ性フィラリア、及び、
ジフテリアを取り上げ、研究した。麻疹、風疹はポリオ根絶終了を待ち、リンパ性フィ
ラリアは明日からでも発進、ジフテリアは研究ということであろう。成功は、日本を含
めて世界の科学、行政、政治分野が根絶とは何か、その意味を理解することから始まる。
公開日・更新日
公開日
-
更新日
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