文献情報
文献番号
201516014A
報告書区分
総括
研究課題名
補装具費支給制度における種目の構造と基準額設定のあり方に関する調査研究
課題番号
H27-身体・知的-一般-006
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
白銀 暁(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所福祉機器開発部)
研究分担者(所属機関)
- 我澤 賢之(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所障害福祉部)
- 山崎 伸也(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所義肢装具技術研究部)
- 仲泊 聡(国立障害者リハビリテーションセンター 病院第二診療部)
- 井上 剛伸(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所福祉機器開発部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
補装具費支給制度は、我が国における福祉用具の公的給付において根幹を成す制度である。同制度は、補装具を必要とする障害者にとって、命綱と言えるほど重要なものである。しかしながら、これまでに制度運用上の課題がいくつか指摘されている。厚生労働省の平成24年度障害者総合福祉推進事業によるテクノエイド協会の調査では、複数の課題が指摘されており、また、平成26年度の補装具評価検討会ではこれら課題についての議論がなされた。より効果的・効率的な制度運用に向けて、現在、これらに対応できるような制度の見直しが求められている。本研究では、限られた財源の中での効率的かつ効果的な制度の運用を目指し、補装具の利用者や、その支給に携わる者、また供給に関わる事業者らにとって、よりわかりやすい義肢や車椅子等の適切な種目構造等の整理・明確化を行うとともに、それに対応した基準額の設定や調査方法等のあり方を提案することを目的とした。
研究方法
本研究では、(1)種目構造の整理、(2)価格に関する根拠データ調査・設定手法の確立、の2つの課題を設定した。(1)では、本研究課題に関連する過去の調査報告の内容を精査し、その他関連情報の収集を行って種目構造上の課題を抽出し、研究分担者および協力者・関係者による研究会議を行って課題を整理した。これを踏まえて、補装具の支給決定を司る市町村の担当者を対象に現行の種目構造の課題についてアンケート調査を行い、問題点を確認した。対象は全国の1,741自治体とし、郵送法による調査とした。また、海外の給付制度の状況について、インターネットでの情報を基に、ヨーロッパを中心に、福祉用具の公的給付制度に関する情報を収集した。(2)では、当該年度は製作事業者を対象とした補装具種目毎の採算・費用構成等状況の把握のための調査準備を行うとともに、義肢の採算が厳しいことの背景を明らかにする一環として、義肢価格の推移を確認した。検討に当たっては、テクノエイド協会による「平成15年度版 補装具の種目、受託報酬の額等に関する基準 義肢・装具等取扱要領」所収の義肢の構成例(適用例)に、様々な義肢の価格の試算を各年度価格および、現行制度の調査の元となった、製作費用実態調査結果(昭和53年度実施)により示された価格を適用し、それぞれの価格表に対応する義肢全体の価格を算出し、検討を行った。
結果と考察
種目構造に関しては、研究会議による課題整理によって姿勢関連補装具、感覚関連補装具、義肢装具それぞれに関して取り組むべきいくつかの課題が明らかとなった。市区町村アンケートの回収数は805件(回収率46%)であり、担当者の約半数は自治体担当者のみで理解できず、更生相談所に頼っていることがわかった。姿勢関連補装具については、車椅子と座位保持装置の違いが特にわかりにくいようであった。また、盲人安全つえのベル、フラッシュライト等、製品が存在しない種目を削除することによる整理の可能性が確認された。さらに、デジタル補聴器やワイヤレス補聴援助システムの普及や骨導補聴器問題など、現状に見合った制度の調整が必要であることが伺われた。また、特例扱いとなっている補装具について、価格設定の要望が確認された。海外調査の結果からは、国または地方自治体でリストを作成して制度を運用することが主流であることなどが示された。
価格に関しては、今年度は製作事業者・販売業者等を対象とした補装具種目毎の採算・費用構成等状況の把握のための調査を行う予定であったが、今年度に実施された価格改定の影響を含めた調査が必要であると判断し、調査実施を来年度に変更し、その準備を進めた。なお、福祉制度外での市場価格による取引が行われているものの実勢価格把握に関して、ユーザーにかかる障害者団体等が存在する種目については調査のコストとメリットを比較しつつ購入者価格の調査により裏付けを強化することを検討した。代表的な構成による幾種類かの義肢について制度発足以降の価格の推移と物価指数の推移の比較を行った結果、昭和56年以降これまで義肢の実質価格が大幅に低下した事例は確認できないこと、また平成21年度以降については昭和53年度調査結果に相当する義肢価格設定がなされていることが確認された。
価格に関しては、今年度は製作事業者・販売業者等を対象とした補装具種目毎の採算・費用構成等状況の把握のための調査を行う予定であったが、今年度に実施された価格改定の影響を含めた調査が必要であると判断し、調査実施を来年度に変更し、その準備を進めた。なお、福祉制度外での市場価格による取引が行われているものの実勢価格把握に関して、ユーザーにかかる障害者団体等が存在する種目については調査のコストとメリットを比較しつつ購入者価格の調査により裏付けを強化することを検討した。代表的な構成による幾種類かの義肢について制度発足以降の価格の推移と物価指数の推移の比較を行った結果、昭和56年以降これまで義肢の実質価格が大幅に低下した事例は確認できないこと、また平成21年度以降については昭和53年度調査結果に相当する義肢価格設定がなされていることが確認された。
結論
我が国における福祉用具の公的給付において根幹を成す補装具費支給制度に関して、その効率的・効果的運用を目指し、種目の構造と基準額設定のあり方に関する調査研究を実施した。本年度は主に情報収集と整理を行い、研究会議によって議論を深めるとともに、いくつかの調査を実施して課題解決に向けた情報を得ることができた。平成28年度は、障害当事者や関係専門職、流通に関わる製作事業者等の同制度に深く関係する者達の意見の聴取を行うなどして、慎重に検討を行っていく。
公開日・更新日
公開日
2016-08-08
更新日
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