文献情報
文献番号
201515003A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症の介護・医療地域体制の実態・課題の可視化と系統的把握方法の研究開発
課題番号
H26-認知症-一般-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
今中 雄一(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 武地 一(京都大学 医学研究科)
- 林田 賢史(産業医科大学病院)
- 大坪 徹也(京都大学 医学研究科)
- 廣瀬 昌博(島根大学 医学部)
- 徳永 淳也(九州看護福祉大学 看護福祉学部)
- 本橋 隆子(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
10,085,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
超高齢・少子社会が著しく進展する中、認知症のケアのあり方は社会的にも経済的にも益々重大になる。そこで、本研究では、認知症の介護・医療について、その実態を広域地域の大規模データベースを活用して可視化し、認知症施策立案に資する知見を生み出すとともに、地域ケア体制を系統的に把握する方法を研究開発することを目的とした。
研究方法
介護保険・医療保険レセプトデータ、ナショナルデータベース、調査票調査を用いて、認知症に注目して介護保険・医療保険利用高齢者に関する疫学的記述を行い、また、要介護度や介護費に認知症の及ぼす影響を明らかにするべく、以下を解析した。
(1)介護費の要因
(2)要介護度悪化の要因
(3)認知症の状態に注目した介護費増悪の予測因子
(4)ナショナルデータベースを用いた認知症薬剤投与の動向
(5)介護医療地域体制のパフォーマンスを示すリスク調整アウトカム計測法開発
(6)介護・医療地域体制における認知症の人の介護に係る負担額の内訳・分布
(1)介護費の要因
(2)要介護度悪化の要因
(3)認知症の状態に注目した介護費増悪の予測因子
(4)ナショナルデータベースを用いた認知症薬剤投与の動向
(5)介護医療地域体制のパフォーマンスを示すリスク調整アウトカム計測法開発
(6)介護・医療地域体制における認知症の人の介護に係る負担額の内訳・分布
結果と考察
(1)介護費の要因:介護費に影響を及ぼす、認知症をはじめとする因子の同定と、その交互作用の大きさを解析した。年齢、性別、利用サービスから見た重症度のほか、認知症の有無は、高額介護費の有意な要因であることを示した。
(2)要介護度悪化の要因:認知症に関して、要介護度悪化を予測するため回帰分類木モデルを検討した。ハイリスクと同定された因子は、介護政策検討の際に有用となりうる。
(3)認知症の状態に注目した介護費増悪の予測因子:認知症の状態を考慮した介護サービスの使用の状況を明らかにし、介護費の増大に関連する因子を探索した。医療入院、高い要介護度、アルツハイマー病、男性、認知症の新規発症は、要介護度悪化に関わるハイリスク因子であることが明らかになった。認知症の悪化予防を検討する際、ハイリスク因子に着目する必要がある。
(4)ナショナルデータベースを用いた認知症薬剤投与の動向:望ましいケアの普及施策への貢献を目指し、認知症の新薬普及の経年推移とその地域差について可視化し、普及要因を解析した。年度ごとに全体としての投与割合は増加しているものの、地域間のばらつきが大きいことが示された。その一因として、副作用がより強い等から、専門医関与の必要度が高い場合など、医療資源の影響が考えられた。
(5)介護医療地域体制のパフォーマンスを示すリスク調整アウトカムアウトカム計測法開発:介護度の悪化や、介護費の増加には、認知症の有無が強く関連しているが、多くのリスク因子が関係している。地域の介護システムのパフォーマンスを表すアウトカム指標として、リスク因子で調整した要介護度悪化率の計測方法の開発を進めた。
(6)介護・医療地域体制における認知症の人の介護に係る負担額の内訳・分布:認知症の人の介護に係る自己負担額(医療費、介護保険適用時の介護費、保険適用外の介護費)を、明らかにし、特に、大きな影響要因となる居住形態別に、内訳を以て自己負担額の内訳・分布を把握した。本結果より、今後の超高齢社会における持続可能な介護提供体制の構築において、認知症の地域ケア体制の評価・把握・設計・計画に資することが期待される。
これらの成果をもって、以下の如く認知症の地域包括ケアシステムの構築・向上に貢献することを目指している。
○介護・医療の個票からなる大規模データにより、認知症に係る、要介護度の悪化要因、介護・医療費増の要因が明確になり、認知症の予防等施策の内容検討やその影響の大きさの推定が可能となる。
○認知症の診断・治療やケア・サービスやその提供資源の実態について数量的に地域別に可視化され、地域格差の実態とその要因が明らかになり、施策の方向性や目標値設定に資することができる。
○個々の介護医療横断・サービス横断的なケア連携実態を可視化し、個々人のへのケアの内容やその連携のベストプラクティス地域の実態がわかるようになる。
○定量的指標等の組合せに基づくフレームワークにより、認知症に係る地域ケア体制を包括的に把握し認知症ケアの実態把握や施策立案・評価に資することができる。
(2)要介護度悪化の要因:認知症に関して、要介護度悪化を予測するため回帰分類木モデルを検討した。ハイリスクと同定された因子は、介護政策検討の際に有用となりうる。
(3)認知症の状態に注目した介護費増悪の予測因子:認知症の状態を考慮した介護サービスの使用の状況を明らかにし、介護費の増大に関連する因子を探索した。医療入院、高い要介護度、アルツハイマー病、男性、認知症の新規発症は、要介護度悪化に関わるハイリスク因子であることが明らかになった。認知症の悪化予防を検討する際、ハイリスク因子に着目する必要がある。
(4)ナショナルデータベースを用いた認知症薬剤投与の動向:望ましいケアの普及施策への貢献を目指し、認知症の新薬普及の経年推移とその地域差について可視化し、普及要因を解析した。年度ごとに全体としての投与割合は増加しているものの、地域間のばらつきが大きいことが示された。その一因として、副作用がより強い等から、専門医関与の必要度が高い場合など、医療資源の影響が考えられた。
(5)介護医療地域体制のパフォーマンスを示すリスク調整アウトカムアウトカム計測法開発:介護度の悪化や、介護費の増加には、認知症の有無が強く関連しているが、多くのリスク因子が関係している。地域の介護システムのパフォーマンスを表すアウトカム指標として、リスク因子で調整した要介護度悪化率の計測方法の開発を進めた。
(6)介護・医療地域体制における認知症の人の介護に係る負担額の内訳・分布:認知症の人の介護に係る自己負担額(医療費、介護保険適用時の介護費、保険適用外の介護費)を、明らかにし、特に、大きな影響要因となる居住形態別に、内訳を以て自己負担額の内訳・分布を把握した。本結果より、今後の超高齢社会における持続可能な介護提供体制の構築において、認知症の地域ケア体制の評価・把握・設計・計画に資することが期待される。
これらの成果をもって、以下の如く認知症の地域包括ケアシステムの構築・向上に貢献することを目指している。
○介護・医療の個票からなる大規模データにより、認知症に係る、要介護度の悪化要因、介護・医療費増の要因が明確になり、認知症の予防等施策の内容検討やその影響の大きさの推定が可能となる。
○認知症の診断・治療やケア・サービスやその提供資源の実態について数量的に地域別に可視化され、地域格差の実態とその要因が明らかになり、施策の方向性や目標値設定に資することができる。
○個々の介護医療横断・サービス横断的なケア連携実態を可視化し、個々人のへのケアの内容やその連携のベストプラクティス地域の実態がわかるようになる。
○定量的指標等の組合せに基づくフレームワークにより、認知症に係る地域ケア体制を包括的に把握し認知症ケアの実態把握や施策立案・評価に資することができる。
結論
介護保険及び医療保険レセプトデータ、ナショナルデータベース等を用いることで、認知症の疫学的データを示したと同時に、認知症患者の介護費増加予測モデルおよび介護・医療地域体制のパフォーマンスを示すリスク調整アウトカムの計測法の開発を行った。
また、介護度の悪化や、介護費の増加には、認知症の有無が強く関連しており、介護・医療制度の今後の持続可能性のためには、認知症関連の施策が重要となることが改めて示された。
特に、要介護度悪化率(リスク調整済み)の地域差を詳細に検討することで、まちづくりの視点も考慮した政策への応用の可能性が示唆された。
また、介護度の悪化や、介護費の増加には、認知症の有無が強く関連しており、介護・医療制度の今後の持続可能性のためには、認知症関連の施策が重要となることが改めて示された。
特に、要介護度悪化率(リスク調整済み)の地域差を詳細に検討することで、まちづくりの視点も考慮した政策への応用の可能性が示唆された。
公開日・更新日
公開日
2016-06-21
更新日
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