介護保険施設における利用者の口腔・栄養管理の充実に関する調査研究

文献情報

文献番号
201514006A
報告書区分
総括
研究課題名
介護保険施設における利用者の口腔・栄養管理の充実に関する調査研究
課題番号
H27-長寿-一般-005
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
渡邊 裕(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 口腔疾患研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 隆雄(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター)
  • 荒井 秀典(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター)
  • 田中 弥生(駒沢女子大学人間健康学部健康栄養学科)
  • 安藤 雄一(国立保健医療科学院)
  • 戸原 玄(国立大学法人東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科老化制御学系口腔老化制御学講座高齢者歯科学分野)
  • 枝広 あや子(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター)
  • 平野 浩彦(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター)
  • 渡部 芳彦(東北福祉大学総合マネジメント学部産業福祉マネジメント学科)
  • 伊藤 加代子(国立大学法人新潟大学医歯学総合病院口腔リハビリテーション科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,494,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
介護保険において口腔と栄養管理の充実に係る改訂が行われ,診療報酬においても,歯科と栄養の連携が評価されることになった.しかしそれらに関してエビデンスに基づく連携,支援のあり方が提示されておらず,口腔管理と栄養管理のガイドラインの提示が急務となったことを受けて,要介護高齢者に対する口腔管理と栄養管理のガイドラインの作成を行った.
また,介護保険施設退所者が在宅療養を長く継続するには,退所後に生じる問題を早期に把握し解決する必要がある.そこで老人保健施設退所後の口腔と栄養に関する経過の実態を明らかにすること,口腔と栄養の状態が在宅療養の継続に与える影響について検討することを目的に実態調査を行った.
研究方法
要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドラインの作成については,予備的文献検索をおこなった結果,システィマティッククレビューは1件で,ランダム化比較対照試験の報告はなかった.そのため非ランダム化比較試験,前向き臨床研究,分析疫学研究の文献に関しても臨床的に有用と判断されたものは採用することとした.CQに関しても日常の臨床および介護の場での疑問などから意見を抽出し,適切と思われる対応方法を利用可能な文献を使って解説を作成することとした.
予備検索で渉猟した文献から作業委員会で臨床重要課題を作成し, 37名の委員からCQ案を収集したCQのうち予備検索で渉猟した論文で,解説を作成することできたCQを採用し解説を作成した.CQに採用しなかったが,臨床的に必要な知識に関してはQ&Aを作成した.
また,エビデンスの不足を補うため,二次予防対象者における運動・口腔・栄養の複合プログラムの効果,通所サービス利用者における口腔機能向上および栄養改善の複合サービスの長期介入効果,介護保険施設入所者に対する口腔管理の効果,それぞれに関する無作為化比較対照試験の結果を分析した.
在宅高齢者に対する多職種連携による経口維持支援の効果検証については全国老人保健施設協会が実施した全国の老人保健施設の退所者504名の退所時,退所後1ヵ月,退所後3ヵ月の調査データを連結不可能匿名化された状態で提供を受けた.これらコホートデータを用いて,退所後の口腔と栄養の状態の経過について分析した.
結果と考察
要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドラインとエビデンスの作成については,口腔管理および栄養管理の効果に関して,ガイドラインに収載可能な文献がほとんどないということが明らかになった.これら不足している臨床研究データの蓄積とエビデンスの公開を促すために,本年度作成したガイドライン(暫定版)の公開が必要であると考えられた.また,本研究班が行った口腔管理および栄養管理の効果に関する3つの無作為化比較対照試験の結果分析により,二次予防対象者,通所サービス利用者,介護保険施設入所者それぞれに対する口腔管理および栄養管理の有意な効果が明らかになった.ガイドライン(暫定版)を充実させるために,これらエビデンスの公開を急ぎ,速やかにガイドラインの改訂を行う必要があると考えられた.
在宅高齢者に対する多職種連携による経口維持支援の効果検証については老人介護保健施設退所者504名の経過についてのデータを分析したところ,在宅療養中断の原因は退所後1~3ヵ月の間に生じている可能性が高く,現行の退所後訪問指導加算による支援は退所後30日以内であることから,十分対応できない可能性が示唆された.
また,在宅療養中断の要因を検討したところ副食の形態が有意に影響していることが明らかになった.嚥下調整食のペースト食を提供可能な通所事業所,配食サービスは極めて少ない(Kikutani,2015)という報告もあり,副食の形態の維持,回復および専門職による口腔・栄養管理が在宅療養の継続に重要であることが示唆された.
結論
要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドラインとエビデンスの作成については,要介護高齢者に対する口腔管理と栄養管理のガイドライン作成を行った.しかし,ガイドラインに収載可能な文献がほとんどないという問題が明らかになった.今後は本ガイドライン(暫定版)を公開し,これらエビデンスの不足を周知し,エビデンスの公開を促す必要がある.
在宅高齢者に対する多職種連携による経口維持支援の効果検証については,在宅療養中断の原因は退所後1~3ヵ月の間に生じている可能性が高く,その要因が食事にあることが明らかになった.今後,食形態の維持,回復および専門職による口腔・栄養管理の支援が在宅療養の継続に重要であることを,さらに明らかにしていく必要がある.

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-12-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201514006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,841,000円
(2)補助金確定額
5,841,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 183,296円
人件費・謝金 2,197,764円
旅費 1,862,435円
その他 250,505円
間接経費 1,347,000円
合計 5,841,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
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