スモンに関する調査研究

文献情報

文献番号
201510110A
報告書区分
総括
研究課題名
スモンに関する調査研究
課題番号
H26-難治等(難)-指定-003
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
小長谷 正明(独立行政法人国立病院機構鈴鹿病院 神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 藤木 直人(独立行政法人国立病院機構北海道医療センター神経内科)
  • 千田 圭二(独立行政法人国立病院機構岩手病院神経内科)
  • 亀井 聡(日本大学医学部内科学系神経内科学分野)
  • 小池 春樹(名古屋大学医学部附属病院神経内科)
  • 小西 哲郎(一般財団法人京都地域医療学際研究所がくさい病院神経内科)
  • 坂井 研一(独立行政法人国立病院機構南岡山医療センター神経内科)
  • 藤井 直樹(独立行政法人国立病院機構大牟田病院神経内科)
  • 橋本 修二(藤田保健衛生大学医学部衛生学講座)
  • 青木 正志(東北大学大学院医学系研究科神経内科)
  • 朝比奈 正人(千葉大学大学院医学研究院総合医科学講座)
  • 阿部 康二(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経内科学)
  • 池田 修一(国立大学法人信州大学医学部内科学)
  • 犬塚 貴(国立大学法人岐阜大学大学院医学系研究科神経内科統御学講座神経内科)
  • 上坂 義和(国家公務員共済組合連合会虎の門病院神経内科)
  • 上野  聡(公立大学法人奈良県立医科大学神経内科)
  • 大井 清文(公益財団法人いわてリハビリテーションセンター診療部)
  • 大越 教夫(国立大学法人筑波技術大学)
  • 大竹敏之(東京都保健医療公社荏原病院神経内科)
  • 尾方 克久(独立行政法人国立病院機構東埼玉病院臨床研究部)
  • 越智 博文(愛媛大学大学院医学系研究科老年・神経・総合診療内科学)
  • 勝山 真人(京都府立医科大学医学研究科)
  • 川井 元晴(山口大学大学院医学系研究科神経内科)
  • 菊地 修一(石川県健康福祉部)
  • 吉良 潤一(九州大学大学院医学研究院神経内科)
  • 楠  進(近畿大学医学部神経内科)
  • 久留 聡(独立行政法人国立病院機構鈴鹿病院神経内科)
  • 小池 亮子(独立行政法人国立病院機構西新潟中央病院)
  • 近藤 良伸(愛知県健康福祉部保健医療局)
  • 齋藤 由扶子(独立行政法人国立病院機構東名古屋病院)
  • 佐伯 覚(学校法人産業医科大学リハビリテーション医学)
  • 嶋田 豊(国立大学法人富山大学大学院医学薬学研究部)
  • 下田 光太郎(独立行政法人国立病院機構鳥取医療センター神経内科)
  • 杉浦 嘉泰(公立大学法人福島県立医科大学医学部神経内科)
  • 杉本 精一郎(独立行政法人国立病院機構宮崎東病院神経内科)
  • 鈴木 義広(日本海総合病院神経内科)
  • 高嶋 博(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科神経内科・老年病学)
  • 高田 博仁(独立行政法人国立病院機構青森病院神経内科)
  • 高橋 美枝(医療法人高田会高知記念病院神経内科)
  • 高橋 光彦(日本医療大学保健医療学部)
  • 瀧山 嘉久 (国立大学法人山梨大学大学院総合研究部医学域)
  • 竹内 徳男(北海道保健福祉部健康安全局地域保健課)
  • 田中 千枝子(日本福祉大学社会福祉学部)
  • 津坂 和文(労働者健康福祉機構釧路労災病院神経内科)
  • 峠 哲男(国立大学法人香川大学医学部看護学科健康科学)
  • 戸田 達史(国立大学法人神戸大学医学研究科神経内科)
  • 豊島 至(独立行政法人国立病院機構あきた病院神経内科)
  • 鳥居 剛(独立行政法人国立病院機構呉医療センター神経内科)
  • 中野 智(大阪市立総合医療センター神経内科)
  • 狭間 敬憲(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立急性期・総合医療センター神経内科)
  • 長谷川 一子(独立行政法人国立病院機構相模原病院神経内科)
  • 花山 耕三(川崎医科大学リハビリテーション医学教室)
  • 濱野 忠則(福井大学医学部附属病院神経内科)
  • 廣田 伸之(大津市民病院神経内科)
  • 藤村 晴俊(独立行政法人国立病院機構刀根山病院臨床研究部)
  • 舟川 格(独立行政法人国立病院機構兵庫中央病院神経内科)
  • 舟橋 龍秀(独立行政法人国立病院機構東尾張病院精神医学)
  • 寳珠山 稔(名古屋大学脳とこころの研究センター)
  • 牧岡 幸樹(群馬大学医学部附属病院神経内科)
  • 松尾 秀徳(独立行政法人国立病院機構長崎川棚医療センター神経内科)
  • 松永 秀典(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立急性期・総合医療センター精神科)
  • 松原 悦朗(国立大学法人大分大学医学部神経内科学講座)
  • 水落 和也(公立大学法人横浜市立大学附属病院リハビリテーション科)
  • 溝口 功一(独立行政法人国立病院機構静岡富士病院診療部)
  • 三ツ井 貴夫(独立行政法人国立病院機構徳島病院臨床研究部)
  • 武藤 多津郎(藤田保健衛生大学医学部脳神経内科学)
  • 森田 光哉(学校法人自治医科大学医学部内科学講座神経内科部門)
  • 森若 文雄(医療法人北祐会北祐会神経内科病院医務部)
  • 諸冨 伸夫(大阪府健康医療部保健医療室健康づくり課)
  • 矢部 一郎(北海道大学大学院医学研究科神経内科)
  • 山下 賢(熊本大学大学院生命科学研究部神経内科学分野)
  • 山田 敬一(名古屋市健康福祉局)
  • 雪竹 基弘(独立行政法人地域医療機能推進機構佐賀中部病院神経内科)
  • 吉田 宗平(学校法人関西医療学園関西医療大学神経内科)
  • 里宇 明元(慶応義塾大学医学部リハビリテーション医学教室)
  • 鷲見 幸彦(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
85,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
キノホルムによる薬害であるスモンは視覚障害や下肢の感覚障害と運動障害を主症状とし、同剤の禁止により新規患者発生はなくなったが、既発患者は発症後40年以上経過した現在においてもこれらの症状は持続している。さらに高齢化と合併症により、患者の医学的、福祉的状況が悪化している。本研究では、全国のスモン患者の検診を行い、神経学的および全身的病態、療養や福祉サービス状況を調査し、その実態を明らかにし、恒久対策の一環として寄与することを目的とする。また、キノホルムの神経毒性について検討する。
研究方法
原則として各都道府県に一人以上配置された班員により、患者の検診を行い、各地区及び全国のデータを集積・解析して、医学的福祉的状況を把握し、対症療法の開発や療養状況の悪化予防を行う。また、郵送によるアンケート調査にて、非受診者を含め、実態調査を行う。
 スモン患者に対する検診は過去30年にわたって行われており、これをデータベース化し、時系列的解析を行うことにより、障害者の身体的、機能的、福祉的予後を明らかにする。さらに、近年の基礎医学的知見の発達を基に、キノホルムの神経毒性についても検討を行う。
 医療・福祉関係者に、スモンなどの難病、および薬害についての啓発を行うための市民公開講座を開催する。患者・家族も参加した形で行う。
 研究成果を、患者の療養に資するために冊子を作成配布し、スモン患者に還元する。

結果と考察
平成27年度全国スモン検診で660名を診察し、全員について解析した。男女比は186:474、平均年齢は79.9±8.6歳であり、75 歳以上の後期高齢者が74.4%であった。身体症状は指数弁以下の高度の視力障害8.8%、杖歩行以下の高度歩行障害61.2%、中等度以上の異常感覚73.6%であり、何らかの身体的随伴症状(いわゆる合併症)は、回答者の99.2%にあり、59.5%に精神徴候を認め、認知症は14.3%と増加したが、抑うつは17.6%と減少した。 同年齢の健常人と比較して筋力と筋量の低下や骨粗鬆症が指摘され、データベースを用いたフレイル(脆弱性)診断では優位に脆弱性のある人が多かった。療養上の問題は,医学上83.0%、家族や介護49.0%で高率であった。受診者の介護保険の利用率は56.4%で過去最高となり、また、社会資源利用率の向上が見られ、福祉支援内容の周知が進んできたものと思われた。スモン患者の実態把握と、療養への適切な助言のために、検診とともに、福祉系研究者による対面聞き取り調査を21名に行った。患者情報やニーズについて保健所や医療・福祉施設との情報共有化の方法を探って行く必要がある。
 1977~2013年度のデータに2014年度のデータを追加して更新した。データベース全体では、延べ人数30.341人と実人数3,808人となった。データベース化を行い、長期間にわたる多数例の縦断的解析により、視覚障害や下肢の運動・感覚障害者の予後を明らかにすることは、スモンのみならず各種の神経・運動器疾患の医療・福祉に寄与するところが大きいと思われる
 キノホルムの神経毒性については、細胞死関連蛋白の発現誘導、酸化ストレス、神経成長因子受容体のNGFによる自己リン酸化反応を抑制の観点から検討し、それぞれに神経毒性を確認した。それらの機序が、互いにどのような関係にあるのかが、今後の課題である。認知症薬や抗がん剤としての可能性を言われているキノホルムの神経毒性を明らかにし、同剤の安易な臨床応用に注意を喚起する必要がある。
 スモンの風化防止策として、患者、患者家族や行政関係者を対象とした『スモンの集い』を行った。スモン患者対象に『2014年スモンの集い講演集』を配布した。スモン流行時に診療と原因追及に当たった医師の証言集「スモン研究の回顧講演集」を発行した。これらの活動は、スモン患者療養のため、および薬害の再発防止意識を医療・福祉従事者などへ啓発に資すると考える。
結論
スモン患者の現状は、本来の視覚障害、運動障害、感覚障害に加えて、様々な身体的随伴症状が加わり、患者の医学的状況や生活の質の低下を来たしてきており、良好な健康状態の維持が必要である。今後も引き続き、検診活動の場を通して、検診結果に基づいた医療および福祉面の指導と啓発が必要である。

公開日・更新日

公開日
2016-09-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201510110Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
110,500,000円
(2)補助金確定額
110,508,218円
差引額 [(1)-(2)]
-8,218円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 42,435,678円
人件費・謝金 11,996,422円
旅費 10,549,441円
その他 20,026,677円
間接経費 25,500,000円
合計 110,508,218円

備考

備考
差額の8,218円については、預金利息3,284円と自己資金4,934円で充当している。

公開日・更新日

公開日
2016-09-20
更新日
-