早老症の実態把握と予後改善を目指す集学的研究

文献情報

文献番号
201510084A
報告書区分
総括
研究課題名
早老症の実態把握と予後改善を目指す集学的研究
課題番号
H27-難治等(難)-一般-017
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
横手 幸太郎(千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 井原 健二(大分大学医学部 小児科学講座)
  • 花岡 英紀(千葉大学医学部附属病院 臨床試験部)
  • 小崎 里華(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 生体防御系内科部 遺伝診療科)
  • 松尾 宗明(佐賀大学医学部 小児科)
  • 葛谷 雅文(名古屋大学大学院医学系研究科 発育・加齢医学講座)
  • 籏持 淳(獨協医科大学 皮膚科学教室)
  • 塚本 和久(福島県県立医科大学 会津医療センター 糖尿病・代謝・腎臓内科学講座)
  • 森 聖二郎(東京都健康長寿医療センター 臨床研究推進センター)
  • 窪田 吉孝(千葉大学医学部附属病院 形成・美容外科)
  • 中神 啓徳(大阪大学大学院医学系研究科 健康発達医学)
  • 田中 康仁(奈良県立医科大学 整形外科学教室)
  • 竹本 稔(千葉大学大学院医学研究院 細胞治療内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
6,577,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
早老症は全身に老化徴候が早発する疾患の総称である。ハッチンソンギルフォード症候群(以下、HGPSと略)、ウエルナー症候群(WSと略)など、早老の程度に差のある約10疾患を含むが、それぞれ希少であり、治療法はもとより我が国における患者実態も不明である。うちWSは思春期以降に発症し、がんや動脈硬化のため40歳半ばで死亡する常染色体劣性疾患で、国内推定患者数は約2,000名、世界の報告の6割が日本人と我が国に多い。原因遺伝子は1994年に同定されたが、早老機序は未解明、根治療法も未確立であり、多くの患者が難治性皮膚潰瘍に伴う下肢切断、悪性腫瘍や糖尿病のため、生命の危機や重篤な後遺症に苦悩している。HGPS も原因遺伝子は同定されているものの、1~2歳時に早老徴候が出現し、10歳代でほぼ全例が死亡する重篤な小児疾患であり、確立した診断基準や診療ガイドラインが存在しない。
そこで今回、我々は、①HGPSの診断基準作成、②Mindsガイドラインセンターの「診療ガイドラインの手引き」に基づくHGPSの診療ガイドライン作成、③Werner症候群(WS)の診療ガイドライン改訂、④WSの重症度分類作成、⑤HGPSとWSの両者を包含する「早老症レジストリー」の構築とフォローアップ体制の確立、⑥新規創傷修復ペプチドを用いた難治性皮膚潰瘍治療臨床試験の実施支援を行うことを研究目的とした。
研究方法
HGPSに関しては、平成24-25年の調査により、1173施設にアンケート調査を郵送し、768施設からの回答を得て、診断確定症例は男性3名、女性2名、不明1名、疑い症例は男性3名、女性5名、不明1名の計15名を同定した。続いて、15名のHGPS患者の臨床症状に関するアンケート調査を行い、5名のHGPS患者の臨床所見に関する結果を得ることができた。
WSに関しては、「早老症レジストリー」の構築し、現在症例のリクルートを開始した。またMindsガイドラインセンターの「診療ガイドラインの手引き」に基づいた診療ガイドラインの改訂に向けて、これまでのWSに関する文献レビューを行った。
結果と考察
HGPSに関しては、計10例に関する詳細な臨床所見を集計することができた。この10症例の臨床所見に加えて、欧米からの論文報告を参照し、我が国のHGPS診断基準(案)策定を行った。今後は関連学会との協議をしつつ診断基準の検証を行うとともに、②Mindsガイドラインセンターの「診療ガイドラインの手引き」に基づくHGPSの診療ガイドライン作成に向けて研究を推進してゆく予定である。

WSに関しては、WSに伴う「糖・脂質代謝異常」、「骨代謝」、「サルコペニア」、「難治性皮膚潰瘍」の現状や治療法に関する文献レビューやこれまでの治療経験のまとめを行った。今後は本年の研究結果を踏まえて、Mindsガイドラインセンターの「診療ガイドラインの手引き」に基づいて診療ガイドラインの改訂を行う。さらに、日本医療研究開発機構研究(難治性疾患実用化研究事業)においてWS症例登録システムを構築し、登録を開始した。今後は患者の予後調査に基づいて、診療の質を向上させ患者の予後改善と社会復帰の支援を目指してゆく。

結論
今後も引き続き研究を推進することにより、患者の予後改善に寄与できると期待される。なお、加齢やアンチエイジングが広く興味を集めている今日、「早老症」の病態・診断・治療の包括的研究を世界に先駆けて推進することは一般社会に与えるインパクトも大きいと思われる。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201510084Z