小児呼吸器形成異常・低形成疾患に関する実態調査ならびに診療ガイドライン作成に関する研究

文献情報

文献番号
201510080A
報告書区分
総括
研究課題名
小児呼吸器形成異常・低形成疾患に関する実態調査ならびに診療ガイドライン作成に関する研究
課題番号
H27-難治等(難)-一般-013
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
臼井 規朗(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪府立母子保健総合医療センター 小児外科)
研究分担者(所属機関)
  • 田口 智章(九州大学大学院 医学研究院 小児外科学分野)
  • 早川 昌弘(名古屋大学医学部附属病院 総合周産期母子医療センター 新生児科)
  • 奥山 宏臣(大阪大学大学院 医学系研究科 小児成育外科)
  • 吉田 英生(千葉大学大学院 医学研究院 小児外科)
  • 増本 幸二(筑波大学 医学医療系 小児外科)
  • 金森 豊(国立成育医療研究センター 臓器運動器病態外科部 小児外科)
  • 漆原 直人(静岡県立こども病院 小児外科)
  • 稲村 昇(大阪府立母子保健総合医療センター 小児循環器科)
  • 高橋 重裕(国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 新生児科)
  • 川瀧 元良(東北大学周産母子センター 産婦人科)
  • 岡崎 任晴(順天堂大学 医学部附属浦安病院 小児外科)
  • 豊島 勝昭(神奈川県立こども医療センター 新生児科)
  • 古川 泰三(京都府立医科大学大学院 小児外科)
  • 黒田 達夫(慶應義塾大学 外科学 小児外科)
  • 渕本 康史(国立成育医療研究センター 臓器運動器病態外科部 小児外科)
  • 松岡 健太郎(国立成育医療研究センター 病理診断部)
  • 野澤 久美子(神奈川県立こども医療センター 放射線科)
  • 前田 貢作(兵庫県立こども病院 小児外科)
  • 西島 栄治(愛仁会高槻病院 小児外科)
  • 守本 倫子(国立成育医療研究センター 感覚器形態外科学)
  • 肥沼 悟郎(慶應義塾大学 小児科)
  • 二藤 隆春(東京大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科)
  • 藤野 明浩(慶應義塾大学 小児外科)
  • 小関 道夫(岐阜大学医学部附属病院 小児科)
  • 岩中 督(東京大学大学院 医学系研究科 小児外科学)
  • 上野 滋(東海大学医学部外科学系 小児外科学)
  • 森川 康英(国際医療福祉大学 小児外科)
  • 野坂 俊介(国立成育医療研究センター 放射線診療部 放射線診断科)
  • 木下 義晶(九州大学大学院 医学研究院 小児外科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
6,939,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 小児呼吸器形成異常・低形成疾患には、先天性横隔膜ヘルニア、先天性嚢胞性肺疾患、気道狭窄、頚部・胸部リンパ管腫・リンパ管腫症などが含まれる。いずれの疾患も小児の難治性希少疾患であり、最重症例は新生児期・乳児期に死亡するのみならず、たとえ救命できても呼吸機能が著しく低下しているため、種々の後遺症を伴うことも稀ではない。本研究の目的は、かかる難治性希少疾患である小児呼吸器形成異常・低形成疾患に関して、既に終了した実態調査に基づいて科学的根拠を集積・分析し、診断基準(診断の手引き)や重症度分類を作成したうえで、全ての疾患について、主たる学会・研究会との連携の下に診療ガイドラインを作成しすることである。
研究方法
 調査研究において、先天性横隔膜ヘルニア、先天性嚢胞性肺疾患、頚部・胸部リンパ管腫・リンパ管腫症の3疾患については、先行研究として多施設共同研究あるいは全国調査研究として実施した際のデータベースを用いた。気道狭窄については、先行研究で実施した症例調査に基づき、825例のデータベースを構築して、咽頭狭窄、喉頭狭窄、気管狭窄、気管・気管支軟化症の4疾患に細分化して解析した。診療ガイドラインの作成: 先天性横隔膜ヘルニアでは、10個のクリニカル・クエスチョンに対する推奨文案について、パブリックコメントを求めるとともに、関連学会および外部評価委員によるAGREEⅡ評価を受けた。先天性嚢胞性肺疾患、気道狭窄および頚部・胸部リンパ管腫・リンパ管腫症では、SCOPEを作成したうえでガイドライン作成に必要なクリニカル・クエスチョンを最終決定し、システマティック・レビューのための系統的文献検索を行った。
結果と考察
 先天性横隔膜ヘルニアの診療ガイドライン作成は、パブリックコメントによる公表を通じて回答と対応を行った。日本小児外科学会および日本周産期・新生児医学会からの承認が得られた。外部評価委員からのAGREEⅡ評価では、領域1:21点、領域2:15点、領域3:39点、領域4:15点、領域5:11点、領域6:7点、総合評価:5点)であった。先天性嚢胞性肺疾患の二次調査解析では、新生児症例の10〜15%は重篤な呼吸障害のリスクを負うことが明らかとなった。出生時に無症状であった症例のうち、33.6%は生後1年以内に呼吸器症状を発症し、その後の呼吸器感染症状の累積発症率は、生後2歳まで急速に上昇して3歳時では74.3%に達することが明らかとなった。病理組織学的な再検討では、従来CCAM Ⅱ型とされた症例の多くが気管支閉鎖症の特徴を備えていることが明らかとなった。診療ガイドライン作成については、CQを下の9問とし、系統的文献検索を行った。CQ1-1.嚢胞性肺疾患にはどのようなものが含まれるか。CQ2-1.出生前診断にMRI検査は有用か。CQ2-2.病変容積指標はリスク判定に有用か。CQ2-3.生後診断にCTは有用か。CQ2-4.血管造影は推奨されるか。CQ3-1.乳児期の治療は有用か。CQ3-2.区域切除は有用か。CQ3-3.複数肺葉の罹患症例に対して肺全摘は推奨されるか。CQ4-1.合併症にはどのようなものがあるか。CQ4-2.定期的な胸部X線写真撮影は有用か。気道狭窄に関する全国調査では、533例の治療例について詳細な解析を行った。咽頭狭窄、気管気管支狭窄、気管気管支軟化症の多くは先天性で合併奇形を有する例が多かったが、喉頭狭窄に関しては、低出生体重児に対する気管挿管の合併症による後天的な要因が大きかった。また治療として全体の約60%の症例に気管切開が施行されていた。頚部・胸部リンパ管腫・リンパ管腫症の診療ガイドライン作成では、次の5つのクCQが選定された。CQ-1.縦隔内で気道狭窄を生じているリンパ管奇形(リンパ管腫)に対して効果的な治療法は何か。CQ-2.頚部の気道周囲に分布するリンパ管奇形(リンパ管腫)に対して、乳児期から硬化療法を行うべきか。CQ-3.舌のリンパ管奇形(リンパ管腫)に対して外科的切除は有効か。CQ-4:新生児期の乳び胸水に対して積極的な外科的介入は有効か。CQ-5:難治性の乳び胸水や心嚢液貯留、呼吸障害を呈するリンパ管腫症やゴーハム病に対して有効な治療法は何か。
結論
 難治性希少疾患である先天性横隔膜ヘルニアでは、診療ガイドラインにおけるCQに対するエビデンスレベルはいずれも弱かった。しかし、CQの内容によっては、強い推奨を行うことも可能であった。これらの経験は、同様の難治性希少疾患である他の3疾患の診療ガイドライン作成の際に参考になると考えられた。今後、これらの難治性希少疾患に対しても、さらなる症例の蓄積と科学的根拠を高めるための臨床研究の遂行によって、エビデンスレベルを高めることが大切であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-07-19
更新日
-

収支報告書

文献番号
201510080Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,019,000円
(2)補助金確定額
9,019,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,171,845円
人件費・謝金 220,700円
旅費 2,354,832円
その他 2,209,179円
間接経費 2,080,000円
合計 9,036,556円

備考

備考
自己資金として17,547円を追加し、年度内に預金利息が 9円あったため。

公開日・更新日

公開日
2018-06-13
更新日
-